表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化・コミカライズ】殿下が一目惚れした令嬢の正体はあなたの護衛騎士です!  作者: 玉川玉子
殿下が一目惚れした令嬢の正体はあなたの護衛騎士です!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/52

17. 怪しい占い師


「お兄さん、占いやって行かないかい?」


ヴェールを被った女がダリウスに声をかける。

ヴェールには宝石が沢山ついていて、エキゾチックな雰囲気を醸し出している。


道端にテーブルと椅子を置いて営業している占い師。

木の板に手書きで『占い』と書かれたちゃちな看板を直接地面に置いている。

派手な柄の布を被せたテーブルの上には水晶玉。


「アンタの真実の愛がどこにあるのか見てあげるよ」


「本当か!?」

ダリウスが興味を示す。


恋をしていると占いに興味が湧くのは世の常である。

「それは是非ともお願いしたい!」


ベールを被った女はダリウスをジロジロと眺め回し、身なりから金持ちと踏んだのだろう、

「占い料は一回800ルビンだ」と吹っ掛けて来た。


「今細かい持ち合わせがないから1000ルビンでーー」

とダリウスが大きなお金を出そうとするのをエルダが慌てて止める。


(殿下に任せてたらぼったくられてしまう!)


ダリウスを見て、高い料金を吹っかけてきた占い師。

と言うことは第二王子の顔を知らないのか……エルダは驚いた。

知っていればむしろサービスしてくれそうなものを。


下町でお金のやり取りをする時は、「値切る」ことが常識である。

店主も値切られることを想定して最初は高めに値段を設定するのだ。

第二王子であるダリウスはそういった庶民の常識に疎かった。


「別に占いにはそれほど興味ないけど……200ルビンなら考えてもいいかな〜」

エルダが女に強気な態度で言い返す。


「僕は大いに興味があるん……うぐっ」ダリウスの口をエルダの手が塞ぐ。

(殿下! 黙ってください!)


女はエルダを睨んだ「200ルビン!?冗談じゃない! 700に負けてやろう」

「じゃあ300ルビン!」エルダが少し金額を上乗せする。

「大サービスで600ルビン!」女もじわじわ値下げして来た。

「400ルビン! これ以上は出せないからね」とエルダ。

「500ルビン! こっちもこれ以上下げられない」

「もう一声! 450ルビンだったらいいよ」エルダは値切り続ける。


450ルビンでめでたく交渉が成立した。


「お釣りはあるんでしょうね?」エルダが確認をする。

占い師は舌打ちをし、店の奥に声をかける。

すると長い髪で顔を隠した男性が出てきて、お釣りを出した。


(ベールの女と、長髪の男……?)

なんとなく胡散臭い占い師である。


エルダは夜会でラナやカークが話していた占い師を思い出した。

この人がそうなのだろうか。

カークは500ルビンだと言っていたから同一人物なのかも知れない。


ダリウスはワクワクして占い師と向かい合わせに座った。


女は縁に宝石が沢山ついたヴェールを被っている。

エルダは目を凝らしてその様子を観察する。

よく見れば、宝石は縫い付けてあるのではなく、タイピンを布に留めてあるだけだった。ネックレスもカフスボタンを紐で繋いだものだ。


(変わったアクセサリー使いだな……)

声の感じからして、若い女だとエルダは思った。


ただ、カロニアの国民でダリウスの顔を知らない者は珍しい。

知らないふりをしているのか……あるいはよそ者か。


占い師はダリウスの顔をジロジロ眺めた。

「お前さんは今悩みを抱えているね」


「おお! その通りだ!」

自分の秘密を見事当てられて(?)素直なダリウスは感動した。


「目ではなく、心で見よ。耳ではなく、心の声を聞け。さすれば真実の愛を手にすることができるだろう」


「つまり僕は想い人を手に入れられるのか!?」

神妙な顔をして耳を傾けるダリウス。

疑うことを知らない素直な性格なのだ。


真実の愛を手に入れられると言われたダリウスは帰りの馬車の中でも上機嫌だった。

「あんなインチキ臭い占い、よく信じる気になれますね」エルダは呆れる。

「危うくぼったくられるところでしたよ」


「いや、よく当たっていた。あの占い師は本物に違いない。占って貰えた僕はツイている」

すっかり信じきって、心酔しているダリウス。


「えー!……なんだか胡散臭いコンビだったと思いますが」


「うーん……」

ダリウスが何かを思い出すように言った。

「あの占い師、ベールにたくさんタイピンをつけてただろ?」


「はい。付いてましたね」


「あんな寂れた場所で商売してるのにさ、あのタイピンについてる石、全部本物の宝石だったんだよね」


エルダはキョトンとしてダリウスの顔を見た。「え?」


「タイピンもカフスも、全部僕や兄上が持ってるような高級品だったよ。間違いない」


「まさか本業は宝石泥棒ってことは……」

「でも盗難の報告は上がってないと思うけど……」

怪しすぎる二人組である。何者なのだろう。


エルダが頭の中であれこれ推理をしていると、ダリウスがにっこり笑って、小さい包みを差し出した。


「エルダ、今日は買い物に付き合ってくれてありがとう。はい、これは君にお礼」

「私にですか? 開けてみても?」


中には白い髪飾りが入っていた。


エルリアーナへのプレゼントを買ったときに、ついでに買っていたのだ。

白は無色。誰の色でもないから、他に好きな人がいるエルダでも問題ないだろうと思って選んだ。

白い騎士服にもマッチしている。


「女の子なのに荒縄じゃあんまりだからね」

そう言ってダリウスはクスッと笑った。


「ありがとうございます殿下! 生まれて初めての髪飾りです」


ダリウスからのプレゼントはとても嬉しかった。

エルリアーナにではなくエルダに買ってくれたのだから。



でも


『自分の色を纏う……間接的に自分が触れている感じがしてグッと来るんだよ』

以前のダリウスの言葉を思い出す。


ダリウスの色であるブルーグリーン。

エルダに贈られたのは白い髪飾りだ。


エルダには白でエルリアーナにはブルーグリーン。


(殿下が触れたいのはエルダではなく、エルリアーナなんだ……)


分かっている。そんなこと分かっている。

けれど…………。


エルダは自分の髪に触れた時のダリウスの指の感触を思い出し、胸がギュッと苦しくなったーー。


物思いに耽るエルダを見つめながら、ダリウスもまた何かを考えているようであった。


「あの……さ。エルダ、香水とかつけてる?」

「え? 香水ですか? いいえ」

「そう………………」



髪飾りを着けるためにエルダの髪の毛をかき上げた時ーー。


そして占い師の前で余計なことを言うダリウスの口をエルダの手が塞いだ時ーー。


ふと、いい匂いがしたのだ。

甘い、お菓子のような香り。


そう……エルリアーナを抱きしめた時に嗅いだあの甘い香りがーー。





◇◇◇◇◇◇◇



「あのお貴族様、金まわりが良さそうだったのになぁ。450ルビンしか稼げなかったわ」

ガラクタが散乱した物置のような部屋の中。

エルダたちが去った後、占い師が残念そうに言った。


「インチキ占いなんだから450ルビンでも上出来だ。君の占い師ぶりも板に付いてきたものだな。あの貴族が悩みを抱えているってどうしてわかったんだい?」


「占いに来る人なんて大抵悩みを抱えているものよ。あとは結果がどう転んでも、当たったように聞こえることを言っておいたの」


「ふふ。君は商いの才能があるな」


「それより問題は孤児院にやって来る王女の方よね……」

女がため息をつく。

「この前のアドバイス聞こえなかったのかなぁ……婚約破棄のニュースは入ってこないようだけど」


「王都にも追っ手がやって来ている」

男が眉間に深い皺を寄せる。


「タイムリミットまでに間に合うかしら……」


「真実の愛を知ってしまったから、私はもう後戻りは出来ない……。大丈夫だ。きっとなんとかなる」


薄暗い粗末な部屋の中で、『胡散臭い占い師コンビ』はそっと身を寄せ合った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ