プロローグ : 三匹のクマ
「お前たちにお土産だ」
地方の視察から戻ったカロニア国の国王は幼い三人の子供たちにクマのぬいぐるみを差し出した。
視察先は林業が盛んな山間部。
そこの玩具工房を訪れた際に「ぜひ王子、王女殿下に」とプレゼントされたのだった。
国王には三人の子供がいる。
一番上は王太子バシリウス。
二番目は王女レジーナ。
そして三番目が末っ子の王子ダリウスであった。
ぬいぐるみのクマはお姫様風のドレスを着たものが一つ。
そして騎士の衣装をつけたものが二つ。
王女が一人と王子が二人いるため配慮してくれたのだろう。
三体のどれを誰がもらうか自分たちで決めなさい、と国王が言い終わるや否や王太子のバシリウスが「僕、これがいいです!」と素早くドレスのクマを選んだ。
「お兄様、男の子のくせにドレスのクマを選ぶなんておかしいわ」
レジーナが文句を言った。
「服なら取り替えてやるよ。でも本体は絶対これがいいんだ!」
バシリウスはいつも決断が早い。
三体のクマは全て同じ型紙から作られているので顔立ちも大差なかったが、バシリウスの目にはそうは映らなかったらしい。
「お兄様大きな声を出さないで。クマちゃんが怖がるわ。よしよし大丈夫よ」
レジーナ王女はクマの服装や顔立ちには特にこだわりはないが、とにかくお世話がしたくてうずうずしていた。
レジーナの憧れの職業は乳母である。小さい子供を抱っこしたりご飯を食べさせてあげたりするのが夢なのだ。
王女に生まれたため、彼女が乳母になることは叶わないのだけれど。
「泣かないで。いい子ね。よしよし」
レジーナは騎士の服を着たクマのぬいぐるみを抱っこしながら、母性愛を炸裂させていた。
末っ子のダリウス王子はクマのぬいぐるみを抱きしめうっとりしていた。
「可愛い。クマたん。僕の。クマたんしゅきしゅき〜」
騎士のクマのぬいぐるみを抱っこして頬擦りしながらふわふわの感触を堪能していた。
「クマたん僕のお嫁しゃんなんだ〜」
そう言いながらぬいぐるみにキスをする。
「そのクマ、騎士の格好してるから男の子よ。お嫁さんにはなれないわ」
レジーナが指摘する。
するとダリウスはベソをかきながらこう言った
ーーこのクマちゃんは騎士の格好でも可愛いから僕のお嫁さんなの!……と。




