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母
エンを先頭に廊下を急ぎ歩く。
エンは油汗をかいていた、虎の尾を踏んだ気分だ。
しかし領主として母親の招集は間違って無かったと言える。
だが、隣で虎の怒りをぶつけられれば汗も出るものだ
部屋の前につき扉を開ける。
アストリアは中にいる女性に駆け寄る。
アストリアの母親エピネがベットに横になっている。
「ああ、名前も分からない、我が子」
そう言ってエピネは手を伸ばしてアストリアの顔を触る。
目がよく見えて無いようだ。
「母さん」。
自分の顔を触るエピネの手の上に自分の手を重ねる。
「こんなに冷たくなってやっぱり何かあって帰って来れなかったのね、旅の賢者さんに聞いたよ、レッサーバンパイアになったんだってね、今まで信じられなかったよ」
言葉ともにエピネの手に力が入る、しかしその力は弱々しく頼りない。
反比例してアストリアの手には力が入る。
「母さん遅くなってごめん」。
それ以上の言葉が出てこない。
エン達もその姿に言葉なく見守っていた。




