東京2020少年
会場は、感動的な公演に涙ぐむ人も少なくない。
「ありがとうございました。東京2020オリンピックで、ケガを負いながらも金メダルを取られました無敗さんでした。
それでは、無敗さんに質問が有る方は挙手をお願いします。」
司会者が、そう告げて直ぐに少年が手を挙げた。
「おっ、少年。速いな。マイクが行くから待ってな。」
司会者は、少年のところにマイクを持って行かせた。
「はい。では君。質問は何かな。」
マイクを持って行ったアシスタントは、そう言いながら、少年にマイクを向けた。
「人殺し!」
少年が一言叫んだ。
周りの者たちは、意味が分からずに沈黙した。
「人殺し!お前がオリンピックをしたから、父ちゃんと兄ちゃんは死んだんだ。
母ちゃんが、どれだけ知ってるんか。人殺し!」
少年は、言葉を継いだ。
「ちょっ・・。」
アシスタントは少年からマイクを取り上げ、腕を引っ張った。
「何だ!お前も人殺しも仲間か!?」
少年が、そう叫んだので、アシスタントは少年の腕を離した。
その隙に少年は会場から走り去っていった。
会場のメディアは、無敗選手に向けて何度もフラッシュをたいた。