79 ~三送会 中編~
本編に戻ります。
先週投稿することを完全に忘れておりました。大変申し訳ございませんでした。
「えぇー、集計した結果、バスケ部とサッカー部が同率一位でした! そして、実行委員の方で協議し、どちらもやってもらおうということになりました!」
これだけ人がいて、同率なんてことあるのかよ。しかもどっちもって……。
「俺たち、何も聞いてないよな?」
「相談されてないね」
「どーする? とりあえず、どっちもやらなきゃいけないみたいだし」
「アユとノゾに相談しに行こう」
「先に下降りよう。待ってる」
全員でぞろぞろとグラウンドに降り、一番前に座っていた歩と望を見つけ、二人を呼ぶ。俺たちが説明している間に、皐が実行委員にどちらからやるのか尋ねに行った。
「どした?」
「バスケの方は、俺たちだけでも足りるけど、サッカーは一人足りないから、どっちか出てくれない?」
「アユが出なよ。やりたそうにしてたし」
「ノゾは出なくていいのか?」
「俺が出ないってことはできるから、ノゾが出たいなら譲るよ」
「いや、いい。カケは出ないといけないだろ。俺はのんびり観戦してるよ。ミノでも応援してようかな」
「俺たちは応援してくれないのかよ」
「応援しなくたって、勝手にやるからいいだろ」
「そうだけど」
「んじゃ、それなりに頑張れ」
望が先程まで座っていた席に戻っていき、入れ替わりで皐が戻って来る。
「バスケからやるって」
「普通の試合?」
「10分ハーフの普通の試合」
「じゃ、俺、向こうにいるから」
「りょーかい」
歩が望の元に戻っていく。
「誰が出る?」
「えっと……」
皐が考え出した。歩が向こうに帰ったら、俺たちのリーダーは皐になる。歩のようにとまでは言わないが、兄弟たちをそれなりにまとめてもらわなければならない。勝手にまとまるような人たちではないから。
「ミノは、出たほうが良いよね。バスケ」
「サツとサトはバスケ部の方で出なくて良いのか?」
「向こう行くよ。けど、こっち……」
皐がまとめなければまとまらないとでも思っているのだろうか。
否定はしないし、できないけど。
しかし、俺にだってできなくはない。稔もいるしなんとかなるだろう。
「なんとかするから、サツとサトは合流して作戦でも練っておけよ」
「……こっち任せてもいいのか?」
「俺たちの作戦を聞き出すために残ろうっていう策なら残ってくれてもいいけど、こっちにいるより、向こうのメンバーと合流しておいたほうがいいと思うが?」
「……うん。じゃ、そうせてもらう。サト、行こう」
「おっしゃあ」
皐と暁はグラウンドに出てきたバスケ部の新レギュラーと合流する。
「じゃ、誰が出るか決めようか。この後、サッカーも控えてるから、前後半で4人ずつ交代する。異論は?」
「「ない」」
「一人、ずっと出ることになるけど、それは、誰がやるんだ?」
「やりたい人ー?」
誰も手を挙げなかった。
「じゃあ、俺がやる。次、4人ずつのメンバーだけど……」
俺が次の話を振る。サッカーでは歩が入るため、稔と対戦することになるのは歩だろうから、俺がバスケにフルで出たほうが良いという判断をした。
あまり出たくはないけど。
「先にサトを消耗させて後で叩くか?」
「のほうが良い? 10分じゃあまり意味はないと思うけど」
「それなら、俺ら3人と七つ子の中の一人が前半で出て普通にやってから、後半、残った七つ子たちでやるのは?」
「ミノがそれでいいなら、いいけど」
バスケの後どのぐらい休憩をくれるのか知らないが、多分、俺らよりも確実に稔の方がサッカーでは動くことになるだろう。そう考えたら前半に出て、しっかりと休憩時間を取ったほうが良い気もするが。
「カケが俺を走らせなければ良いから、俺はどちらでも」
稔に選択権を渡したはずなのに俺に戻ってきてしまった。
「カケ?」
「……わかった。さっきのアキが言ってたやつで良いよ」
「俺たちの中で誰が出るよ?」
「俺は何でも良いよ」
「俺も」
「じゃんけんする?」
「じゃん負けで良いか?」
「いいよ」
俺と暁を除いた七つ子の5人でじゃんけんをし、負けた亨が前半にその他4人が後半に出ることとなる。
「じゃ、メンバーは決定で。ポジションは……、適当でいいよな。マークする相手だけ決めるか?」
「誰が出てくるかわからないし、向こうがマークしてきた人にしよう。必要があれば適宜変更して。サツには俺がつくから」
「珍しくカケがやる気だな」
「やる気はない。ただ、中途半端にやったら後でサツに怒られるだろうからさ」
「あり得るな」
前半に出る四人がウォーミングアップを始める
「ミノたちは誰にマークつくかとポジション決めておいて。交代する可能性もあるけど、サツがどう使ってくるかだけでも参考になるだろうから」
「り」
「はーい」
後半に出る4人から返事をもらい、前半に出る4人に合流する。適当に体を動かし、何回かパスを回してボールとの感覚を掴んだところで、ウォームアップタイムが終了した。
挨拶をし、出場メンバーを確認して試合が始まる。
ジャンプボールをして先にボールキープしたのはバスケ部だった。皐のマークをしていた俺は、皐にボールが回ってこないよう圧をかける。皐へのパスを諦めその他の4人でパスを回そうとするが、早々に樹がパスカットした。
それと同時に俺と亨が動き出す。皐と暁を避けるように樹からパスが飛んできた。ジャンプして受け取り、そのままエンドラインギリギリでスリーポイントシュートを狙っていた亨にパスを出す。亨がきれいに決め、3点を先取した。
「ナイスー」
兄弟たちが俺の周りに集まってくる。
「ナイスパス」
「タツもな」
「とりあえず、カウンター中心でやろ。マークマンはそのままでいい?」
「問題ない」
「じゃあ、このままで。パス欲しかったら走って」
「りょ」
「はーい」
相手のパスから試合がリスタートする。今度は、初めから皐がボールを持っている。
さて、どうするかな。パスならサトの方には行かせないようにしたいし、抜いてくるなら止めないといけないし。
とりあえず、暁がいる方を重点的に守る。皐は早々に暁にパスを出すのを諦め、俺を抜くか逆サイドにいるメンバーにパスを出すかで迷っているようだ。
時間がなくなり、皐はパスを選択した。今度は要にパスカットされる。しかし、パスカットされることがわかっていたのだろう。俺にパスが回って来るとすぐに守備の体勢に入った。
抜けるか? いや、パス出したほうが安全か?
「カケーっ!」
彰がゴール下に走り込みながら俺を呼ぶ。リングの少し上にパスが欲しいということだろう。
ここから出してもいいが皐の上は通さないほうが……、いや、抜きに来るとわかっていたらそれこそ止められるな。ならば……。
俺は、皐を抜く体勢に入る。案の定、皐も予想してたようで、俺を止める体勢を取る。そこから、抜くふりをして皐が食いついてきたところで一歩後ろに下がり、リングの上に向けてパスを出す。
皐や、彰についていたマークマンがパスカットしようとするがボールに触れることはできず、そのままリングめがけて飛び込んできていた彰の手に収まり、ボールはリングに叩き込まれた。
「ナイスー」
自陣に戻ってきた彰に声をかける。
「よく、サツの上を通そうと思ったな」
「あれだけ引き付ければできるかなと思って」
「その勇気がすごいんだよ」
再び、皐にボールが渡り、俺はマークに付く。先ほど、俺が抜こうとしたからか、皐も抜きにくる体勢に入る。
まぁ、パスは一生通りそうにないもんな。強いて言うならサトだけど、トオがべったりくっついてるもんな。俺を抜くのが一番早い。
俺も止める体制を取る。皐がボールやら重心やらを左右に動かし、的を絞らせないようにする。俺がそんなことには引っ張られないとはわかっていると思うが一点でずっとやり続けていたらボールを奪いに来ることもわかっているのだろう。
「抜きに来ないのか?」
「行くさ」
皐はそう言いながらも周りを見回している。まだパスという選択肢があると俺に考えさせるためか本当に考えているのか分からないが、俺がちゃんと止めに行けたらきれいなパスは通らないだろう。それなら暁以外であればパスカットできるはずだ。
俺はサツを止めることだけに集中すればいい。
俺の気持ちが固まると同時に、皐も決心したらしい。一度強くボールを叩き、跳ね返ってきたボールとともに俺の右側を通って抜きに来る。
ちゃんと利き手じゃない方狙ってきたか。それにこっちにはサトがいる。
左側に重心を残したまま、俺は、皐を止めに行く。皐は、俺が半分ほどの力で止めに来たことに気づいたのか、スピードを上げる。皐がその状態から反対に来ることはないだろう。
俺も、皐の方に体を傾け、全力で止めに行く。これだけ兄弟がいれば、直接皐が一人で決めに行くことはないだろう。どこかでパスを出すはずだ。そこが狙い目である。
できるだけ俺がパスカットしたほうが皐や暁の間を通す必要がなくなり相手に取られるリスクは下がる。しかし、皐相手にそこまで一人ではやらせてくれないだろう。できるとしたら気配を探っているときぐらいだ。目で見る必要はないが、神経は使う。誰かが気配の中にいるという曖昧な感覚ではなく、どのくらいの強さでどの向きにパスを出せば通るのかという明確な位置を把握しなければならないからだ。
今だ。
気配を探り出した皐の隙をついてボールを押し出し、奪う。流石にそこまで見抜かれていると思ってなかったのか、皐はワンテンポ遅れて反応し、追いかけてきた。
その一瞬のおかげで俺は一緒に走り出していた要へきれいなパスを通すことができる。パスを受け取った要がきれいなレイアップシュートを決めた。
「ナイスー」
「ナイスパス」
次はタツかなぁ。
それから何回か皐と攻防戦を繰り返したが、全ての攻撃を止め、俺たちは31得点をあげ前半戦を終えた。
五分のハーフタイムに入る。
「おつー」
兄弟たちが座っているベンチに戻りながら近寄ってきた彰に言われる。
「意外とカケ一人でも止められてるな」
樹も近寄ってくる。
「俺がミスしても周りがなんとかするだろうから、結構積極的に行ってる」
「それじゃあ、後半はうまく行かないかもな」
「信用ねぇな」
ベンチで待っていた傑が会話を聞いていたのかムスッとした顔で言う。
「それは、まぁ、そうだな」
先程のメンバーが守備型だとしたら、後半のメンバーは圧倒的攻撃特化型だ。点の取り合いを制するものは試合を制すという試合になるだろう。
前半のおかげで相当な貯金があるため、何をやらかしたとしても大抵のことは問題ないだろうが、俺が想像つかないことをしようとするのが俺の弟たち七つ子である。彰たち四つ子とはまた違ったまとめ方をしなくてはならない。
いや、まとめなくてもいいんだけど。その分俺に負担がくるってだけで。
「マーク付く人は決めた?」
俺はベンチに座り、スポーツドリンクを飲みながら、準備運動を始めた4人に問う。
「サトには俺がつく」
傑が宣言した。分かっていたことだが、暁に傑がつくということは、絶対に暁には何もさせないという宣言でもある。暁を確実に止めてくれるのはありがたい。
「他は目の前にいる人につくってことだけ決めた」
「守備は? どのぐらいする?」
「うぇー、カケがサツ止めらんなかったら諦めていいと思うけど。あんな守備上手くいかないし」
「さっきみたいな止め方はできないぞ。時間いっぱい触らせて攻撃止めるぐらいしか」
「それなら、もう、抜かれたら抜かれたで良いよ。スリーさえ決めさせなければ同等かそれ以上の点が取れるし」
「前半の貯金があるしね」
「守備より攻撃でやりたいことあんだけど」
傑が少し浮かれたように言う。
「何? 面倒なことはやらないからな」
「スリーどれだけ決められるか対決する。そしたらミノもそこまで動かなくていいだろ?」
「そんなのパスもらったもん勝ちだよ」
「もらえるために俺らが動けばいいだろ」
「スリーかぁ。苦手なんだよなぁ」
スグがスリー決めたら、サトもやろうとするだろ。そしたら少しは守りやすくなるか?
「じゃあ、全員、最初のパスだけスリー狙って。その後は好きに動いてくれていいから」
「りょーかい」
「しゃあっ!」
ハーフタイムが終わり、コートに出る。
皐たちから何と聞いたのかわからないが、バスケ部員が先程よりも警戒した表情をしている。
大方、サトが5人いるみたいな感じか。
相手ボールから試合が始まる。先程よりも緩めのマークに付く。絶対に止めなければならないというわけではないため、暁へのパスさえ防げれば良い。
皐にパスを出させ、スリーポイントだけ打たせないように守備をする。相手に早めに得点を取らせ、自分たちの攻撃に移る。
初っ端に傑に決めてもらったほうが暁の士気も上がって守備が楽になるか? ただなぁ、スグにはサトがついてんだよなぁ。
皐と向き合いながらそんな事を考える。
スグは、カウンターのときにやってもらうか。とりあえず今は……。
ハーフライン際にいた稔にパスを出す。稔は、少し驚きながらも、そこからスリーポイントを決めた。
なんで俺に出したの、と言いたげな目をした稔がやって来る。
「動きたくないならもうちょい中にいろよ」
「中にいたら絶対に出さない?」
「時と場合による。シノ、シズ、ちょっと良い?」
「なーに?」
「ん?」
自陣に戻ってきた忍と雫が近寄ってくる。稔は不貞腐れながらも離れていった。
「スグにはずっとサトがついてるから、スグには最後にスリー決めてもらう。できればカウンターが良い」
「俺らは何すればいいの?」
「俺が何回かサツを完全に止めに行くから、その時は、できるだけパスカットしてほしい」
「りょーかい」
「次の攻撃はどっちかに出すから。ミノとぶつからないように」
「ん」
相手ボールから試合が再開する。
それからは、点の取り合いだった。案の定、傑がスリーポイントシュートを決めてから、暁は明らかにスリーポイント狙いになり、守備が楽になったが、本気で止めに行かないと皐を一人では止められない。何回か止めはしたが、それなりにきれいなパスを通された。
しかし、全体的に俺たちのチームのほうが格上だったため、前半で開いた点数差よりもさらに開いた状態で試合を終えた。
ミノもそこまで動かさなかったし、上出来上出来。
挨拶をして、次のサッカーの試合までベンチで休もうと足を向けると、皐に捕まり、俺の肩に顔を埋める。
「使いすぎだよ」
三送会中編です。元々、前編と後編の予定でしたが、伸びてしまいました。次の後編で終わるのかというところも心配です。
バスケに関しては3回ぐらい登場していますが、兄弟対決は初めて……だと思います。
次回は、 三送会 後編 です。
と、宣伝しましたが、私用により、来年の「春」まで休載させていただきます。また、来年の「春」に戻ってきたときはよろしくお願いします。




