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72 ~サッカー部との練習試合 中編~

「……カケ、ボール取りに行ってくれるか? そのまま、ミノにパス出してくれていい」

「俺? スグでよくね?」

「いや、カケがやって」

「……はーい」

 歩には逆らえない。

 相手ボールで試合が再開する。相手が責めてくると同時に稔が敵陣に走り出す。部員たちが少し気を取られた隙にボールを奪い、ゴール前に着いた稔にパスを出す。そのまま、稔がゴールを決めたと同時に試合終了のホイッスルが鳴る。

 部員たちは監督のもとに集まり、俺たちは歩の元に集まる。

「アユ。ちょっと来て。他は適当に何かしてていいよ」

「りょーかい」

 稔と歩が監督のもとに走っていく。

「2on2やる?」

 残った四人に問う。

「この後、守備やるみたいだし、やっておきたい気はする」

 望がボールを弄びながら言う。

「前の方で止められそうだし、あまり気負う必要はない気もするけどね」

 望の弄んでいるボールを目で追いながら雫が言う。

「俺、さっき攻撃してないから、シュート打ちたい」

 傑が言う。

「俺ら相手にゴール決められると思うなよ?」

「思ってない。けど、打ちたいものは打ちたい」

「じゃあ、やるか。チーム分けは?」

「俺とスグ対ノゾとシズでいいんじゃない? タツはGK固定で」

「りょーかい」

 俺たちのチームが先行で始める。

 兄弟相手のため、先ほどのように簡単に抜けるものではない。傑が雫と対峙し手間取っている。

  まぁ、簡単に抜けたらこんな人数差で勝負挑めないよな。一応、向こうも専門だし。

「スグー」

 俺が声をかけると、傑が苦し紛れにパスを出す。俺は、少し走り出して望を引き離してからパスを受け、そのままドリブルに入る。さすがにドリブルをしていると望も追いつき、対峙する。その間に傑がゴール前に走り込んでいる。雫が少し遅れを取ったところでパスを出す。傑はダイレクトにボールを蹴り、ゴールを決めた。

「タツー。大丈夫か?」

 反応がいつもより一テンポ遅かった樹に声をかける。

「いきなりダイレクトにくると思ってなかった。打ちにくいボールだったし」

「多少の無茶ぐらいするだろ。そうでもしないとシズに追いつかれるし」

 傑が雫を見ながら言う。

「カケ。何で抜きに来なかったんだ?」

 俺の横でむすっとした顔をした望が言う。

「スグが走ってるの見えたから。抜かない方が楽だし」

「来ると思って待ってたんだけど」

  だから、簡単にパスが出せたのか。

「俺が抜くと思ってるの?」

  面倒なことはやりたくない主義なのに。

「抜きに来てほしかった」

「……じゃあ、次、抜くから」

「待ってる」

 ボールを元の位置に戻して、再び始める。

「スグ。適当にパス出して」

 ボールを持って走り出した傑と並走しながら耳打ちする。

「了解」

 左右に分かれてゴールに向かう。俺には望、傑には雫がつく。ゴールから15mあたりの位置で傑からパスを受け、望と向き合う。左右に振ってみたり、感覚を取ってみたりするがしっかりと対応してくる。

  そんな簡単には抜かせてくれないよな。ま、当たり前か。

 だが、望の反応速度が前よりも鈍っていることは分かった。

  これならいけるか。

 何回かフェイントを繰り返しているうちに、望の反応速度が落ちてきたところで、抜く。傑が走り出しており、パスを出せる状況だ。俺は、パスを出すふりをして樹の注意を傑の方に向けてから、反対側の隅にゴールを決める。

  俺たち相手だと、どっちか決めて本気で止めに行かないと、止められないからな。

「ついていけてないって言う自覚はあったけど、ちゃんと見破られてたか……」

 望が溜息をつきながら言う。

「ま、な。前のノゾだったら怪しかった」

「そんなことはないと思う。カケには勝てん」

「そんなことない」

  前話されたやつか。俺のような俺じゃないような話。少なくとも、前の俺にあった力は、今の俺にはない。それだけは分かる。

「つられすぎだろ。タツ」

 俺と望の元に三人が集まってきて、傑が言う。

「カケとかスグのボールは、中途半場に止めに行ったらどちらも止められないから。どっちかにかけるしかないんだよ」

「二兎を追う者は一兎をも得ず、だね」

 雫がうまいこと言ったという顔をしている。

「でも、カケの方が打つっていう顔をしてたよ」

「んなの分かるかよ。俺は七つ子ではないわけだし」

「それも、そっか」

 雫が納得したようにうなずいている。

「カケー。ちょっと来い」

 部員たちと話していたはずの歩に呼ばれる。

「えっ……。これ、もしかして、俺対二人になるのか……?」

 絶望した顔の傑が言う。

「それなら、絶対勝てるね」

「練習の意味はないけどな」

「シュート練でもするか?」

「有りだな。タツの練習か」

「弱くしろよ。二人で攻められたら止められないから」

「はいはい」

 そんな四人の会話を背に聞きながら、歩の元に向かう。

「なに?」

「ミノを止めてくれ」

  ミノがアユが止められないくらいに暴走してる? そんなことあるのか?

「いや、ミノの意見を代弁して。伝わらなさ過ぎて、話が進まない」

  そんなにミノの話が伝わらないことがあるのか? 俺が代弁したところで何も変わらない気がするぞ。

 そう思いながら、部員たちに熱く何かを語っている稔の近くに行く。

「ミノ。ちょっと落ち着け」

 よく見れば、半分くらいの部員は完全に稔の話を聞いていない顔をしている。

「止めないで。今、ここで言わない……」

「だーから、いったん落ち着けって。はい、大きく息を吸って」

 稔は不満そうな顔をしながらも、俺に言われた通り、大きく息を吸う。

「で、何が言いたい?」

「ベスト16はいったけど、それは一個上の先輩たちのことで、同じ部活にいるからといっていけるわけではないんだ」

 落ち着いた稔が言う。

「それで、通じてないのか……」

  どうするべきか……。

「同じ練習をしてきたんだから、そのぐらい行ける。ベスト16も行けば問題ないだろ」

 背番号十番の部員が言う。

「……うーん。あなたたちは、先輩方に勝ったことがあるんですか?」

「ない」

「なぜ?」

「当たり前だろう。先輩に勝てないのぐらい」

  なるほど。ある意味で割り切ってるのか。

「俺たちは一年ですけど、一人で先輩方に勝てますよ?」

「相川は例外だ」

「同じルールの上で同じことをしているだけですが……?」

「さっきの試合は、俺たちの攻撃をさせてもらっていない。そういう約束だったからな」

「そうですね。ですが、攻撃は守備から流れを作るものだと思うのですが……」

「取られた分、取り返せばいいだけだ」

  その心意気は良いな。

「じゃあ、やりますか? 次、俺たちは攻撃しないので、五分で五点取ってくださいね」

「あぁ、やってやる」

「ミノ。いったんこれで良い?」

「言いたいことはいろいろあるんだけど」

「そうだな。でも、最初に俺言ったよな? とりあえず、どちらもやらせると良いって」

「うん。今度も、カケが話して」

 部員たちがフィールドに散らばる。

「はいはい。ってか、なんでアユは止めに入らなかったの?」

 少し離れたところで見ていた歩がこちらにやってきたため、訊く。

「俺が入ったところで何も変わらないと思ったから。ミノの意見を理解できない意味が分からん」

  そうだった。アユはそっちの人だった。

「はぁ……」

「はやくやるぞ」

 センターサークルの中で待っている十番が言う。

「アユ行って。五人で止められるよな?」

「いったん様子見する。無理そうだったら呼ぶ」

「そうして。ミノと話がしたい」

「了解」

 歩がそう言って、フィールドに走っていく。

「落ち着いたか?」

「うん。ごめん」

「いや、俺を呼んでくれてよかった」

「俺と話したいことって?」

 落ち着いた稔が訊いてくる。

「詳しい話は、ミノの部活がない時に話したいけど、相手に反論の余地がある状態で何かを言っても無駄だよ」

「……それは分かってるけどさ」

「まぁ、聞いてくれる奴も中に入るけどさ、大体は反感したくなる」

「……うん。わかってる」

「聞いてないのが普通だからさ、反論の余地をつぶしてからやらないと。監督の話は聞くかもしれないけどさ、同じ選手同士だったら尚更な」

「だから今戦わせてるのか? 一年とも戦わせようとしてたのも?」

「そ。それで負けたらさっきより聞いてない人は減ると思うよ。さっきはほとんど聞いてなかったからな」

「そんなに聞いてなかった?」

  気づいてないのかよ。

「あぁ。ほとんどな」

「まじか……。それだけはなくそうと思ってたのに」

「そりゃあ、アユが俺を呼ぶわ」

「で、この後はどうするんだ?」

「最初に言ってた通り、一年とも戦わせようと思ってるけど」

「それでいいですか? 監督」

 稔が試合を見ていた監督に問う。

  聞いてないんじゃね?

「あぁ。できれば、稔たちと一年も戦ってほしいんだけど」

「それは、良いですよ。何分にしますか?」

「十分でちゃんとした試合を」

「わかりました」

「目標、決めるか。何が良いと思う? 戦ってみて」

「一年ですか?」

「あぁ」

「そうですね……」

  こんだけ聞かれるってことは、ミノは結構頼られてるんだな。まだ半年もこの学校にいないけど。

「位置も悪いし、自己中だし、ボールコントロールもどうかと思うし……」

 稔がぶつぶつ言っている。

「アユいるし、そこまで自己中にはならないんじゃないか? 俺らの時はなめられてたけどな」

「カケたちの強さを知らないからな」

「とりあえず、ボールコントロールは一朝一夕でできるものではないから今じゃない。自己中もそいつの持ちようだからどうしようもない。紅白試合がどれだけ自由が効くかわからないけど、俺らだったらいろんな攻撃ができるから、ポジションの練習するのが一番じゃないか?」

「そうだよなぁ。それでいいですか?」

「いいとは思うが、具体的にはどうする?」

「人数的には有利なので、どこまでそれを活かせるポジション取りとパス回しができるかですかね……」

「そうだな。一年。集まれ」

 監督が試合を観戦していた一年を集める。

「カケ。試合、入っていいよ」

「いや、点を取られる気がしないから、こっちに居る」

「そっか」

「……なぁ、ミノ。根本的に一年と二年って、二年の方が強いのか?」

「いや、同じか、一年の方が強い」

「ミノがいるからか?」

「それもあると思うけど、実力もかな。このまま二年が引き継いだら、県大すら危うい。全国なんて遠い夢」

「それは、それは。確かに弱いなと思ったけどそれほどとは」

「だから、二年生に見せつけたかった。弱いって」

「はぁ」

 一年生が監督の前に並び終わると、ちょうど五分の試合が終わる。案の定、一点も取れていなかった。

「稔。説明。君は、俺と一緒に二年の説教だ」

「俺ですか?」

 俺に振られるとは思っていなかったため、変な声が出てしまう。

「そうだ。さっき、考えて戦わせたんだろ? ちゃんと説明してもらわないと。俺とは違う考えかもしれないからな」

  それは、あまり良くないような……?

 監督が二年生を集め、俺は監督の横に立たされる。

「はい、どうぞ」

「えっと……」

  どう言葉で説明するかが問題だな。

「さっき、三年生には勝てないのが当たり前と言ってましたけど、それなら、もちろん、一年には勝てるんですよね?」

「もちろん」

「先に一年と戦うか? そこまで体力消費していないだろう」

「できれば、先に一年生と戦わせたいですね」

「一年も集まれ」

 監督の前に一年生も集まる。監督が支持を出し、十五分の紅白試合が始まった。あまりないことらしく、一年も二年も驚いていた。稔も一年生のチームに参加している、結構本気の紅白試合だ。

「なぁ、ミノって、ボランチだったよな?」

 隣に座り込んだ傑が言う。

「そうだな」

「……トップ下のポジションだよな? あそこって」

 傑の指さした先には稔がいる。確かに、ボランチと言うよりはトップ下と言える位置に立っていた。

「さっき、先輩相手に一人でゴールしちゃったからね」

 傑とは反対側に座っている雫が言う。

「それにしたら、あの十番よく譲ったな」

「いや、戦う気だぞ?」

 後ろに座っている歩が言う。十番は稔とほとんど同じような位置にいる。

「これじゃあ、十一対十で不利だな」

「ミノが一人で五人分ぐらいの働きをするから関係ないでしょ」

「カケは、どんな結果になってほしいんだ?」

 歩の隣に座っている望が訊いてくる。

「引き分け、もしくは一年の勝ち」

「ミノがいたら負けることはなさそうだけどな」

「俺も負けだけはやめてほしい」

 俺らがそんな話をしているうちに、稔がシュートを放ち先制する。先ほどのポジションより少し後ろの位置につく。

「ボランチに戻ったか?」

「これから一点も取らせない作戦なのかな?」

「ま、それが良いよな。ミノ以外だと点数取れそうにないし」

「均衡状態っぽいよなぁ」

 選手たちの動きを観戦しながら面白くなさそうに歩が言う。

「そういやさ、シズ。一年の方が強く感じなかったか?」

「あ、スグもそう感じた?」

「カケは?」

「攻撃しかしてないから何とも言えないけど、まぁ、統率が取れてるというか、個々の力がそれなりに強いというか、そんな感じはした。ミノがいるからかな」

「そうなのか? 一年と戦うのが楽しみだな」

「ま、弱いけどな」

「二年は弱すぎたよな。ウォームアップにもならない」

「俺、何もしてないよ? GKなのに」

「俺だって何もしてないよ」

「俺も」

 そんな話をしているうちにも試合は進むが、ほとんど均衡状態でボールの取り合いが続いていた。あれだけ啖呵を切っていた二年生も本気で点を取りに行っているのだろうが、ことごとく稔の指示を受けた一年に阻まれている。

「ミノは撮りに行かないんだね」

「指示を出すだけで止められると思っているんだろ」

「なめてるな」

「珍しいね」

「カケ、どう見る?」

「徹底的に煽るつもりなんじゃないか? ミノ、相当怒ってたし。ま、あと、一年の方がここの力が強くて統率もそれなりにとれてるからな。ミノが指示を出せば止められるだろ」

「なるほど」

「ミノを怒らせるなんて、何をしたんだろう……」

 稔は、日常生活でほとんど怒ることはない。俺も一緒に過ごしていて怒っているところに遭遇したのは片手で数えられるぐらいだ。

「さぁな」

 そのまま点数は動かず、1対0で一年生が勝った。

「相川がいるなんてい卑怯だろ」

「相川を抜いてもう一回やるぞ」

「待て。集合っ」

 もう一度試合をやろうとしていた二年生を止め、監督が全員集合させる。

「お前ら、一年には勝てるって言ったよな?」

 サッカーをやっているシーンをどうやって書いたらいいかわからなくて、似たような表現を多用しすぎました。反省しています。

 二年生は弱いです。というか一年生が結構強いだけです。稔がいるのは少し反則な気もしますけど、稔も一年なので。紅白試合、いつか書きたいです(最近書きたいしか言ってない……)。


 次回は、 サッカー部との練習試合 後編 です。

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