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58 ~体育のバスケ 前編~

 次の体育の授業。

 今日は、バスケの日だ。俺を除く七つ子のテンションが高いのは言わずもがなである。

  何なら、駅伝? の時よりもテンション高いし。

 朝からそのテンションでよく午後まで体力が持つなぁ、と思う。

  俺も持つんだろうけど、必要ないところでは使いたくないからな。

 適当に着替えて体育館に向かう。早く来た人達はチームの中でチーム分けをしておけ、という指示化教師から飛んでくる。

「チーム分け、どーする? 前回話してたやつか?」

 先に体育館についていた暁が話しかけてくる。傑は、まだだれも使っていないリングに向かってシュートを打つ練習をしていた。

「冬馬様たちに訊いてないから、訊いてから最終決定だな。多分、否定されないと思うけど」

「ん」

 俺は、俺らから少し離れたところに立っている冬馬様たちのほうに行く。

「チーム分け、どうしますか?」

「翔たちで決めてくれていいよ」

「できれば、冬馬兄さんと一緒にしてくれると嬉しいけど……。あ、別れても全然いいから」

  そこを分ける気はないです。面倒そうなので。

「俺が今考えているのは、俺、冬馬様、千明様、稔、亨のチームと、そのほかの四人と俺のチームです」

「それでいいよ。翔たちがそれでいいんだったら」

「僕も。それでいい」

「どちらが先に試合をしますか?」

「全部で何試合やるんだっけ?」

「五分の試合を五、六試合だと思います」

  って言ってた気がする。俺の記憶が正しければ。

「どちらでもいいけど、暁たちに待ってもらう方が大変そうだね」

「どちらでもいいですか?」

「あぁ。好きに決めてくれていいよ」

「わかりました」

「特に作戦とかはないよね?」

「ないですね」

「PGは翔?」

「多分、そうなるかと」

「わかった」

「失礼します」

 俺は、続々と集まってきている兄弟たちの元へ戻る。

「何だって?」

「チーム分けは、前回言ったやつ。覚えてるよな?」

「サト以下とカケのチームとカケと俺とトオ、冬馬様と千明様のチーム」

「それ。出る順番は好きに決めてくれていいって言ってたけど、じゃんけんでいいな?」

「いいよ」

「誰がやる?」

「サト」

 傑が言った。普段、あまり暁に譲ることがないため、兄弟たちが少し驚く。もちろん、暁も。

「いいのか……?」

「別に。一番うるさいのサトだろうし」

「こっちは、どうする?」

「ミノ。やってくれていいよ」

 こういう時は、大抵、亨が譲り、稔がやることになる。俺が含まれていたとしても。

「じゃあ、最初はグー、じゃんけんポン」

 暁が勝った。考えがなんとなくわかっているからこそ、勝たせることも、負けさせることも出来る。俺らのじゃんけんに運はほとんどない。ただの、駆け引きだ。ただ、話し合うと長くなるため、手っ取り早く自分の意思を伝えられるのがじゃんけんというわけだ。

「どっちがいい? サト」

「じゃ、先で」

「決定。動いとく?」

「やっていいのか?」

「少しだけやっていいらしい」

「作戦は?」

「そんなの、ないだろ」

「カケがPG?」

「その予定。冬馬様たちからも了承は得てる」

「じゃあ、最初にマークマンだけ決めて、後はじゃんけんで」

「早めにやってくれよ」

 譲りたくないとほとんどあいこになるため、決着はすぐにはつかない。

「大丈夫だよ」

「何する?」

「三四?」

「五二?」

「五二でいいだろ。どうせ、守備なんて関係ないし。先にやるほうがやるべきだろ」

「連携も何もないんだから、1on1でよくない?」

「じゃ、そーしようぜ」

「俺はやらん」

  これから疲れることが目に見えてるのに、先につかれることをするのはバカすぎる。

「今日、多分、一番やるのカケだよね?」

「カケは、やらなくてもできるだろ」

「それも、そっか」

 そう勝手に結論付けて、兄弟たちは適当にペアを組み、1on1を始める。冬馬様たちのほうを見ると、向こうも1on1をやっていた。俺はボールを手の上で弄んで暇をつぶす。

 数分後に、教師から試合を始めるといわれ、最初に戦うチームが発表される。

  初っ端から試合かよ。

 ボールを手の上でもてあそびながら指定されたコートに向かう。兄弟たちは冬馬様と千明様も1on1をやめて、俺と合流した。

「結局、どっちが先にやるの?」

「俺たちだけのチームが先にやります」

「了解」

 俺がもてあそんでいるボールを取りに来る手から避けながら話す。試合に出ない四人は、体育館の端のほうに行き、座る。

 試合に出る俺と他四人は、コートに入る。もう、対戦相手が待っていた。

「サト。この中にバスケ部っているか?」

「四番と五番」

「どっちがPGやると思う?」

「さぁ? 4番かな。まぁ、どっちでも関係ないだろ。とりあえず、カケは必然的にPGとマッチアップするだろうし」

「他は?」

「今正面にいるやつで」

「りょーかい」

 ジャンプトスをして試合が始まる。もちろん、暁のほうがジャンプ力が高いため、先に余裕を持ってボールに触れられる。しっかりとコントロールされたボールは、俺の元に寸分狂うことなく飛んでくる。俺は、飛んできたボールをキャッチし、前に走る。すぐさま兄弟たちはじゃんけんを始める。

「はいっ」

 忍の声だ。俺は、忍を探し、ボールを放る。これで俺の仕事は終わりだ。この後俺に回ってくることはない。次の守備に備える。

  サトが言ってた通り、四番がPGっぽいな。ずっと俺についてたし。なら、まぁ、楽かも。

 その四番の動きを確認しながら、忍がシュートを決めるのを見届ける。

 相手がスローインをし、ボールがPGである四番に渡された時点で、兄弟たちはじゃんけんを始めた。一応、マークにはついているが、あまり意味をなしていない。

  変なプレッシャーかけるのはやめてくれ。俺がここで止められなかったらどうするんだよ。相手は仮にもバスケ部らしいし。まぁ、一本入れられたところで特に影響はないんだろうけど。

 なんて考えながら、相手からボールを奪い、それより少し前から走り出していた傑にパスを出す。周りに一切ディフェンスがいないため、悠々と3Pを決めた。

  まぁ、誰も、俺のところで止められるとも思ってなかっただろうし、仕方ないか。にしても、バスケ部がもう一人いながら反応遅くね?

 相手のスローインを待ち、再び、四番にボールが渡される。すると、すぐに、隣に構えていた五番にパスを出した。が、その間を俺が通り、パスカットをする。今度は雫がじゃんけんに勝ったらしい。走り出していた。俺は雫にパスを出す。四番が追いかけようとしていたが、俺がブロックし、結局雫も3Pを決めた。

 その後もいろいろ仕掛けてきたがどれも全て俺と暁に阻まれ、一本もシュートを決められないまま、試合終了のブザーが鳴った。

「ナイス―」

「いぇーい」

「相川!」

 相手チームの誰かから呼ばれ、全員が振り向く。

「これは、サト宛?」

「多分な」

 という会話を小声で交わし、暁が一歩前に出る。

「何だ?」

「お前、全然シュートに来ねぇじゃねぇか。どういうことだ」

「お前しかバスケ部いないのに」

「じゃんけんに負けまくったんだよ。仕方ないだろ」

 暁の言葉通り、この試合俺たちのチームは合計二十五本のシュートを決めたが、そのうち暁は三本しか決めていない。この試合の得点王は忍だ。一人で十本ぐらい打っている。

「は? あの、じゃんけん、……もしかして、シュートを決めるやつを決めてたのか?」

「そうだけど、何か?」

  教えちゃっていいのか? そういうの。多分、教えたところで何も変わらないと思うけど。

「やべー」

「何でそんなことできるんだよ」

「それは、カケに訊け。俺はできない」

「カケって……PG?」

  うわっ。何か面倒ごとに巻き込まれそうな予感……。

「そう」

  話すのが面倒だからって、俺に振るなよ」

 と思っているうちに、相手の四番が近寄ってくる。

「どうやってやるんだ? 特に何もやってなかったように見えたけど」

「……やってないから」

  本当に。何も。

「カケに訊いても無駄だぞ。無意識的にやってることが多いから」

 稔が間に入ってきて言う。

  ありがたい。

 稔に少し下がるように手で指示され、俺は一歩下がる。

  こういうのは、得意な奴に任せておけばいい。

「何もないわけないだろ」

「ないよ」

「お前に訊いてない」

「ねぇ? カケ」

「何もない」

 稔が振ってきた質問に答えるだけでいいのは楽だ。

「なんかあったら俺らもできるようになってるって」

 暁も間に入ってきて言う。

「そうかよ」

 そう言って、四番は去っていった。

「ふぅ。やっと行った」

「カケの技を盗もうとするのは時間の無駄すぎる。俺らにはできない芸当だから」

「ミノ。助かった。ありがと」

「いーえ。いつも助けてもらってるんで」

  俺のほうが助けられてる回数多そうだけど、まぁ、いいか。

「カケの顔にわかりやすく面倒だって書いてあったからな」

「次の試合、いつ?」

「この試合が終わったら」

「相手チームは?」

「多分、あそこに集まってるやつら」

「サト。誰かいるか?」

「いないかな……。多分」

「じゃ、そこまで頑張らなくてもいいか」

「いたら、大体当たるからな」

「疲れるんだよ」

 その後、四試合をこなし、最後の一試合となる。

「ねぇ、稔。僕らもじゃんけんに参加してもいい?」

 試合が始まる前の休憩中、冬馬様たちが話しかけてきた。

「わかりました。タイミングはこちらで指示してもいいですか?」

「僕らじゃわからないから、お願いしたい」

「わかりました」

「カケ。冬馬様たちも入るって」

 冬馬様たちが離れていくと、稔がそう言った。さすがに、近くで話していたのだから聞こえている。

「別に何でもいいよ。俺がすることは変わらないから」

 さすがに、五試合やるのは疲れた。時々、連戦があるため、そこで結構体力を持っていかれた。しかも、バスケ部相手だと余計に。

「ん。よろしく」

 先ほどまで、稔と亨と俺だけでやっていたことを冬馬様たちを加えたことによってさらに相手は混乱し、余裕で勝つことができた。冬馬様たちも、周りにマークマンがつかないから、こっちのほうが楽だと言っていた。

  俺も、こっちが楽だから、ありがたい。

 俺たちの最後の試合が終わり、体育館の端に座って休憩していると、教師が近づいてきた。

  嫌な予感がするな。

「お疲れ。相変わらずな試合だったな」

「ありがとうございます」

 俺が対応できないことを察したのか、稔が対応してくれる。

「そんで、お願いがあるんだけど」

  ほらぁ。

「なんですか?」

「バスケ部と戦ってほしい」

「拒否権はないですよね?」

「ないな」

「一試合ですか?」

「あぁ」

「何分ですか?」

「五分」

「わかりました」

 稔が一歩引くと、暁が一歩前に出た。

「俺は、どっちに行けばいいですか?」

「どっちでもいいぞ。バスケ部としては、絶対外せないだろうけど」

「俺は、皐がいるから活躍できてるだけで、いなかったら使い物になりません。兄弟と戦うなんてもってのほか」

「それは部員に言ってくれ。俺はどちらでもいい」

「バスケ部の方には、もう伝えたんですか?」

「あぁ。だから、そこにいるだろ」

 教師が少し振り返って指をさす。そこには、七人ぐらいの人がいた。

「サト。行ってこい」

「俺は、こっちに入らない?」

「こっちにいてくれると、カケがあまり疲れずに済む」

「じゃあ、こっちにいれるように話してくる」

 暁が俺を一瞥してそう言い、バスケ部が集まっているところに向かう。

 さすがに、普段動いていないやつが五分の試合といえど、六試合するのはきつかった。しかも、チームが兄弟たちだから、最初から全力だったし、ついていくのには苦労する。

「カケ、動けるか?」

 傑が顔を覗き込みながら訊いてくる。

「動けって言われたら、動くけど」

「じゃあ、動け。一試合だから……」

「僕らは出なくていいよ。結構疲れてるし。出てほしいって言うなら出るけど」

 冬馬様たちにそう言われ、少しホッとする。

  兄弟たちだけなら、どこで組んでも特に変わらない。

「わかりました」

「どうする?」

「カケとサトは確定?」

「だな」

「ミノ。走れるか?」

「俺も、確定ってことか?」

「俺が出るなら。まとめること、やってほしい」

  多分、そこまでやっていたら、俺の身が持たない。

「了解。あとは、交代する? 二分半で」

「それでもいいけど、交代、しなくてもいいよ」

「俺も。もう疲れた」

 俺と同じように座っている忍と雫が言う。二人とも、普段から動くが、他のメンツよりは動かないため、疲れているのだろう。慣れている兄弟相手ではないから。

「じゃあ、トオとスグ。出てくれるか?」

「いいよ」

「じゃんけん、するのか?」

 一応聞いておいた。いきなりやらないと言われても、困るが。

「する」

「カケとやれることそうそうないから、やりたい」

「了解」

  その方がこっちも楽だし。

 バスケ部と話が着いたのか、暁が戻ってきた。

「こっち、残れる」

「試合は?」

「出れる」

「よかった。元々残ってもらうつもりでチーム組んでたから」

「誰が出るんだ?」

「上、五人」

「カケ、動けんのか?」

 暁から不安げ眼差しを向けられる。

「動ける」

「そっか」

「ただ、あまり動きたくないから、何回かサトに任せるかも」

「その程度だったらやる」

 暁が簡単に請け負ってくれたため、少しホッとする。

  できないと言われたら、どうしようか悩むところだった。

 他チームのすべての試合が終わると、オールコートを使って試合を始める。

 ジャンプボール後、すぐに俺にボールが回ってくる。と、同時に兄弟たちがじゃんけんを始める。

「はい」

 ゴール下に走り出していた亨が手を挙げる。俺は、その少し先にパスを出した。亨は流れるようにシュートを決める。

「ナイス―」

 すぐに相手のスローインがあり、相手の四番にボールが渡る。俺はすぐに四番に近づき対峙する。すきを見てボールを奪い、手を挙げた奴に渡す。

 これを何回か繰り返していると、手を挙げた奴に三人のマークがつく。

  まぁ、さすがにバスケ部だったら、そうしてくるよな。

 それでも、抜けることには抜ける。しかし、少しだけタイミングを計らなくてはならない。それを何回か繰り返していると、先に俺の限界が来た。

「サト。ちょっと頼んでいい?」

 お久しぶりのバスケですね。ですが、前回は、翔と暁と傑と冬馬と千明だけでしたが、今回は兄弟全員なので、全然違いますね。翔の苦労も段違いですが。稔たちがいるだけで少しは軽減されているのでしょうか……。

 そして、兄弟たちだけでもそれなりに大変なことをしているのに、楽しそうだからという理由で入ってきた冬馬と千明もそれなりにやばい人たちです。


 次回は、 体育のバスケ 後編&忍と翔の話し合い です。

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