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57 ~体育の駅伝?~

 今日は、冬休みが明けてから二回目の体育の授業だ。初回は、オリエンテーションをやって少しストレッチをしただけで終わった。

 オリエンテーションで説明された内容としては、三学期は学年全体で体育をやること。各クラス一人以上入っているチームを作り、いろいろな競技をやる。そのチーム決めと、競技をやる順番、競技の説明だった。

 もちろん、俺らのチームは俺ら七つ子と冬馬様と千明様だ。他に組めそうな人はいないし、組む気もない。兄弟が各クラスに散らばっていて良かったと思った。

  誰も、俺らとなんて組みたくないだろうからな。

 他の七つ子は、同じチームでがっつり戦えるためそれなりに浮かれている。

  どうせ、圧倒して終わるだけなんだろうけど。一緒にできることのほうが嬉しいんだろうな。普段、兄弟で組んだら兄弟としか戦えなくて、楽しくないし。

 そんなこんなで、今日は駅伝をするらしい。なぜ駅伝をやるのかというと、正月に駅伝があってとても心が熱くなったからと、体育の教師が言っていた。

  そんなんで種目決めてんのかよ、って感じだけど。

 ルートは、学校の外周五キロを一人一周。チームによって人数が違うため、平均の時間で競うらしい。しかも、女子は一人一キロをつないでいくらしい。一方、男子は、五キロ走らされる。しかも、タスキをつなぐ、ようなことはない。時間が足りなくなるからだ。

  それじゃあただの持久走だ。駅伝要素は一つもない。

 千明様は、一応男子として学校に在籍しているため、五キロ走る。

  ま、そこらの男子より全然早いけど。

 男子は、持久走を測ったときのように、前半と後半に分かれ走る。

 今は、授業が始まる少し前。それぞれ、準備体操……とも言えないが、体を動かしている。

「前半と後半なんて、分けなくてもよくね?」

「うん。分けるとしても、何でもいいと思う」

「サトとスグ一緒に走らせても大丈夫だったんだろ?」

「まぁ、そうだな」

「じゃあ、本当に何でもいいな」

「タイム測る側としては、同じ時間の人たちで走ってほしいけど」

「それは、こっち来てから測ったやつ?」

「誰が一緒だったっけ?」

「亨、暁、傑、忍、雫」

「じゃ、それでいいよ」

 兄弟の意見を合わせて、冬馬様たちに確認しに行く。

「いいですか?」

「みんながそれでいいならいいよ」

 冬馬様たちからも承認を得て、走る順が決定する。授業開始のチャイムとともに、前半組がスタートする。

「どっちが見てる? タイム」

 残った稔が近づいて話しかけてくる。

「俺が見てる」

「了解」

 俺は、広げていた気配を感じる範囲から五人が消えて行ったことを確認し、ゴール側に向ける。

「なぁ、次の種目、バスケだったよな?」

「あぁ」

「ポジション、どうする?」

 俺の隣に座った稔が訊いてきた。

「なんでもいいだろ」

  兄弟の中で決めてくれたら楽だ。

「いや、俺たちにとっては大事だよ。冬馬様と千明様と一緒にプレーする人を決めるの」

「サトとスグは一回やったことあるけど……」

「じゃあ、サトとスグに押し付けて……」

「押し付けるな。前回は不可抗力だ」

「どうせ、カケがずっと出てるんだろうし、サトとスグがやってくれたら、俺はやらなくていいし」

「俺がずっと出てるっていう保証はないぞ」

「ある。俺がやらせるから」

  やらせないでくれ。

「バスケ部だし、サトがやったほうがいいだろ」

「いや、サトよりカケがやったほうがいいと思うけど。冬馬様たちいるし」

「じゃあ、ミノは冬馬様たちとな」

「カケが全試合出てくれるなら」

「なんでだよ」

「トオじゃ、止められないだろ。なんかあったときのサトとスグ。でも、冬馬様たちにパスを出せるのもカケしかいないんだから、必然的に全試合出ることになる。あ、サトとスグを冬馬様たちと一緒に出したら、俺らのほうは休んでてくれてもいいけど」

「ミノがパス出せばいいだろ。あと、サトとスグと冬馬様たちを一緒にするのは、本当にあり得ないから。もう、激重+激重だから」

「俺は、そんなにうまくパス出せないし。冬馬様たちとサト・スグを一緒にしないんだったら、カケが全試合出るしかない」

「はぁ……」

  バスケをやるって聞いた時からわかってはいたけど、疲れるし、嫌だな。

 そんなことを話しているうちに、五つの気配を感じた。

  帰ってきたのか。

 俺は、タイマーが見える位置まで移動する。教師も記録を取っているだろうけれど、俺も見ておく。前回持久走のタイムを計ったときは見えていなかったから。

  教師にタイムを聞くのも面倒だし。

 稔も俺の後について来る。

「戻ってきたのか?」

「あぁ」

 数十秒後に五人がゴールラインを走り抜けて、数メートル走ってから戻ってくる。

  相変わらず、全員同じタイムなんだな。ある意味すごい気がする。

「タ、イム、は?」

 亨が肩で息をしながら訊いてくる。

「七分十五秒」

「全然追いつけてねー」

「どうやったら七分なんてタイムが出るんだよ」

「も、むり……」

「……」

 歩いて俺たちが座っていた場所まで戻る。

「後半組ー。あと、五分したら走り出すぞー」

 教師がタイムを書きながら言う。

「じゃ、行きますか」

「後、三分はここにいてもいいだろ」

「行ったっていいだろ」

「それなら、ここにいたっていいだろ」

「わかったよ。間を取ってあと一分」

「あ、そだ。次のバスケのチーム分け、なんとなく考えといて」

「ん……」

「りょー……かい」

 まだ、呼吸を整えている五人を置いて、スタートラインに向かう。冬馬様たちは先に行っていった。「走りたくねぇー」

「仕方ないだろ。嫌なら早く終わらせろ」

「じゃ、ミノもついて来いよ」

「元々そのつもり。カケに追いつくことだけ考えよ」

「それで、自分のペース崩して前よりも遅い記録になっても知らないぞ?」

「無理だなと思ったら自分のペースで走るから」

「あ、そ」

 全員そろい次第、スタートする。

 俺は、前に走ったときよりも少しテンポを速めて走る。ちょこちょこ女子たちが待っているのは、一人一キロしか走らないからだろう。稔も言った通り、ほとんどずっと一緒に走っていたが、最後のほうは少しだけ稔のペースが落ちて、最後は俺一人だった。

 最後の曲がり角を曲がり、少し走ると、ゴールに立っている教師と、大きなストップウォッチが見える。

  六分三十五秒。順調。

 そのまま駆け抜ける。ちらっとストップウォッチを見てタイムを確認する。

  六分四十五秒。前よりも十五秒早くなったな。

 すぐ後ろを追ってきていた稔のタイムも見てから、兄弟たちの元に戻る。

「カケ、早すぎるんだけど」

 兄弟たちの元に戻るまでに呼吸を整えた稔が言う。

「っても、ミノだって十五秒差だっただろ」

「前回から一秒も縮まってないんだよ」

「知るか」

「俺らも一秒も縮まってないし」

「俺らが早くなっても、カケたちが早くなったら何の意味もないんだよ」

「悪かったって」

「謝っても、変える気はないだろ?」

「まぁ、な」

「こうさぁ、少しずつ置いてかれるって言うか、離されていく感じがすごく嫌。俺は全速力で走ってるから、それ以上速く走れないけど、少しずつ置いてかれてくんだよ」

  俺は、それ、経験したことないなぁ。昔、完全にみんなに置いてかれたことはあったけど、少しずつではなかったし、俺もやる気なかったし。

「カケと走ったことないからなぁ」

「走らせてくれないし」

  走ったっていいことないだろ。

「ミノと一緒に走ってないと、前に人が走ってることないから、どのぐらいのペースで走ったらいいかわからないしな」

「走ってくれてもいいんだぞ?」

「嫌だよ。もう、疲れた」

「同じく」

「もう一周しても全然間に合うし」

「走ろ」

「ガンバッテー」

「カケとミノが走らなきゃ何の意味もないんだよ」

「今日じゃなくてもいいだろ」

「いつか、な」

「それ、絶対走ってくれないやつ」

「走らないとは言ってない」

「それより、バスケのチーム分け、考えた?」

  とりあえず、話し変えないとな。って、魂胆が丸見えだけど、まぁ、いいか。俺も話しそらしたかったし。

「カケとミノに任せる」

「俺も」

「うん」

  まぁ、そうなることは分かってたけど。

「わかってると思うけど、冬馬様たちとは違うチームにしてよ」

  誰もなりたくないんだな。同じチームに。

「今、カケが考えてるのは、どんなの?」

「まだ、冬馬様たちに訊いてないから確定ではないけど、一応、俺がずっと出て、ミノとトオが冬馬様たちと一緒の予定」

「それでいいよ」

「一番楽だからな」

「俺は、楽じゃないんだけど」

 俺と稔は話していたからいいが、亨は初めて聞いて嫌そうな顔をしている。

「結局カケが全試合出るんだな」

「それが最適解だと思ったから。でも、いくらでも譲る。できれば俺はやりたくない」

「いや、結構です」

「カケ以外に誰がやるって言うんだよな」

「冬馬様たちの相手をして、サトたちをまとめあげるとか、俺は無理」

「俺も無理」

「別に、パス出せば動くだろ? 勝手にパス出す相手決めてくれるし」

「カケがいるときだけな。俺らはそんなことできないから」

「やってみれば? 遊んでも勝てる試合だし」

「やってみるなら、サトか?」

「無理」

「結構楽しいと思うんだけどな」

「カケにとっては楽しいかもしれないけど、俺らにはそれできないから。楽しいも何もない」

「できるだろ。俺よりうまいんだから」

「カケよりうまいなんてことはないし、無理だな」

「やってみないと分からないだろ」

「やらんでもわかる」

 数分後に冬馬様と千明様が戻ってくる。

「お疲れ様です」

「二人とも早いよ」

「うん。すぐに見えなくなった」

「僕たちは一緒に走ったことあったから少し慣れてたけど、他の人たちの表情はすごかったなぁ。僕たちも初めて一緒に走ったときはあんな顔してたのかな?」

  いや、冬馬様たちはそんなに表情に出てなかったと思うけど。普段からほとんど出てないし。

「冬馬様たちも十分早いですから、もう慣れてるかもしれませんね」

「そうか? 翔たちほど早くないけど」

  そんなことないレベルで早いんだけど。

「なぁ、カケ。全員のタイム、覚えてるか?」

「いや、冬馬様と千明様のは見てない。タイム、わかりますか?」

「うん」

「平均、出そうぜ。暗算でできるだろ」

「どうせ一番だし、出す必要ないだろ」

「時間の計算、面倒なんだよな」

「いいよ。言ってくれれば暗算する」

「早い順でいい?」

「何でもいい」

「俺、六分四十五秒。ミノ、七分ジャスト。他五人、七分十五秒」

「僕が十二分四十五秒。千明が十四分四十五秒」

 俺が言い終わると、冬馬様が続けて言った。

「えーっと、?」

「八分三十六秒六六」

 俺が答えた。

「それだ」

「十分切ってんのやばいな」

「僕たち入れなかったら、何分?」

「えーっと、七分八秒五二」

「結局、カケのおかげだな」

「だな」

  そんなことないけど。ミノも平均より早いし。

 そんな話をしているうちに授業が終わる。

 後日発表された結果で、二位と役に十分差をつけて一位だったことが分かった。個人タイムも発表されていて、上から九番目まですべて相川だった。

  個人タイムは発表する必要ないだろ。チーム戦って言ってんのに。

 ほとんど関係なかった走順で区間賞を出すためのものだろうが、そんなのはいらないと思う。区間賞だけでいい。

  どうせ、全部相川なんだし。

 二年生もやっているようで、記録が張り出されていた。しっかり上位を独占しており、タイムは前より全員十五秒早くなっていた。一応、四人のタイムも記憶しておく。

  今、アユたちと走ったらミノのほうが早そうだな。さすがに、普段運動してないやつと戦うのはよくないか。兄弟と言っても。


 後日。

 薫と栞のタイムも気になったため、二人と持久走をすることにした。

「俺ら、そんなに早くないよ」

 相川の裏門の前で準備体操をしながら薫が言う。

「いや、普段、ミノたちと一緒に運動できてる時点でそれなりに持久力はあるのは知ってる」

「途中で力尽きるから」

「だとしても、な」

「カケ兄はどのぐらい?」

「それなりに」

「何キロ走らされんの?」

「何キロがいい?」

「カケ兄たちは何キロ?」

「五」

「五は無理」

「だから、何キロでもいいよ」

「一にしよう。私、それ以上は無理」

「いや、向こうで二キロは走ってたよ」

「向こうの時より走ってないから」

「走ってくれてもいいけど。朝、俺以外は十キロ走ってるから」

「十キロっ!?」

「十キロ」

「十キロは無理」

「一キロぐらいでもいいんじゃない? 俺は走らないけど」

「何でカケ兄さんは走らないの?」

「走る気がないから」

「そっか」

「じゃ、俺、先に一キロ地点まで行ってるから俺のところまで走ってきて」

「わかった」

「曲がらないから、大体本屋の前ぐらいで一キロ」

「本屋まで一キロなの? じゃあ、財布持っていこうかな。本買いたい。前回の続き」

「持っていってほしいものあったら持ってくぞ」

「じゃあ、荷物全部預けていい?」

「いいよ」

 俺は、薫と栞の荷物を受け取り、二人の準備が整うまで待つ。

「じゃ、スタート」

 二人が走り出すと同時にストップウォッチをスタートさせ、俺もそれなりの速さで走り出す。

「はやっ」

 後ろから薫の声が聞こえてきたが、そのまま走る。ネット上のマップで一キロの地点で止まる。後ろを振り返っても二人はついてきていなかった。

  まぁ、そりゃそうか。

 だが、すぐに見えてきて、薫がゴールした十数秒後に栞もゴールした。

「お疲れ」

「カケ、兄、……早い、よ」

  普通に、カオもシオも早いな。小五にしては。

 薫と栞のタイムを記憶し、ストップウォッチのタイムをリセットする。

「まぁ、な。落ち着いたら、本屋入ってきて。そしたら、荷物渡すから」

「うん」

 俺は本屋に入り、荷物を置きにロッカーに向かう。

「あれ? 今日、遅れるって言ってなかった?」

 ロッカーでベルトポーチをつけていた舜さんに言われる。

「言ってました。いつもより遅いと思うんですけど……」

「何かしてきたの?」

「走ってきました」

「何で?」

「カオと……。弟妹のデータ取りたかったんです。だから、一緒に走ってきました」

「はぁ……」

「一キロぐらいなので全然疲れませんよ」

「いや、おかしいでしょ。俺はもう走れない」

「そうですか?」

「そうだよ」

 俺は、薫と栞の荷物を持ってロッカーを出る。

「今日も拓真さんは来ないんだよね?」

「って言ってた気がします」

「カケ兄っ」

 本屋に入ってきていた、薫に呼び止められる。

「ん? あぁ、はい、これ。早めに帰るんだったら連絡しといて」

「わかった」

「あの子たちが、弟妹?」

「はい」

「いいなぁ。俺には兄弟いないから」

「一人っ子なんですか?」

「うん」

「俺は、一人っ子、経験してみたいですけどね」

「ない物ねだり、だな」

「ですね」

 絶対にないなぁと思いながらも、全員で体育をやっている姿を書きたい、と思った結果です。楽しみにしていてください。何競技かやる予定です。

 全員同じ秒数早くなるのが七つ子です。全く、差が縮まってないため、お怒りの人が一人、二人……。

 そして、巻き込まれてしまった、薫と栞。普通に二人も早いです。翔たちが早すぎるだけです。


 次回は、 体育のバスケ 前編 です。


 本当は一つにまとめたかったのですが、無理でした。

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