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56 ~歩と望の進路&望と翔の話し合い~

 共通テストが終わった翌日の夕方。

 俺はバイトから帰ってきて、部活組も帰ってきたところで、歩と望から話があるといって、歩の部屋に兄弟が全員呼び出された。久しぶりに呼び出され、少しだけ緊張感が漂っている。

  多分、二人の進学についてだろうな。

「俺とノゾの進学についてなんだけど、」

 全員が集まると、歩がそう切り出した。

  俺たち高校生組には結構身近な話だけど、カオとシオにとってはあまり関係ないかな。

「俺は、長崎の大学に行こうと思ってる」

「えっ……?」

 歩の隣に座っていた望が困惑した目で歩を見ている。

  ずっと、違うところに行くって言ってたんだろうな。ノゾのあの反応を見るに。

「今、長崎には父さんたちがいなくなって、当主の傍系が誰もいない状態になってるけど、それはあそこにとってはよくないことだと思う。一応、満が対応してくれてるみたいだけど、全然対応できてない。だから、少しは仕事を知ってる俺が向こうに行くべきだと思った。本当は、カケが行くべきだと思うけど、カケはこっちにいたほうが向こうにいるよりいいだろうから、俺が行く」

「カケがこっちにいたほうがいいのは否定しないけど……」

「ノゾはこっちに来なくていい」

  ここまで、アユがノゾを遠ざけたの初じゃないか? ノゾのほうが心配だな。

「なんで? 人は多いほうがいいでしょ」

「ノゾはこっちにいたほうがいいと思うから」

「いや……」

「それに、ずっとこっちの大学目指してたんだから、今更変える必要ないだろ」

「それなら、アユだって……」

 俺は、七つ子で話し合うのと同じように眺めていたら、服の袖を引っ張られる。

「どした?」

「いつ終わるの? これ」

 隣に座っていた栞が訊いてくる。

「さぁ? でも、二人はそこまで話長くならないと思う」

「そっか」

「とりあえず、俺は、長崎に戻ってあの大学に行く予定。当主様と話したら少し変わるかもしれないけど、俺はあそこに行くつもりで相談する。ノゾは?」

「俺、は、ここから少し離れたとこ。ここから通うのは少し遠いから、一人暮らしか、近くの相川の家がないか探してみる予定。優斗様も同じ大学って聞いた」

 まだ動揺を隠しきれていない望が言う。

「どっちもここからはいなくなるってことだね?」

「まぁ、そうなるな」

「長崎に行くなって、当主様に言われたらどうするの?」

  当主様は言わないだろうな。

「そう言われることはほとんどないと思うけど、言われたら、元々ノゾに伝えてあった大学に行く」

「それは、ここから通うのか?」

「いや、それだと少し遠いから一人暮らしかな」

「了解」

「何か、俺らが知っておくべきことある?」

 今度は歩が訊いてきた。

「えーっと、知ってるかもしれないけど、兄弟練習行き始めたから」

「だから、夕飯が遅かったのか」

「そ。だから、ご飯遅くなるから、早めにご飯食べたかったら、二人で作って食べて」

「俺は、今まで通り待ってる。そっちで生活習慣ができてるから」

「俺も。待ってる」

「了解」

「他、何かある?」

 歩が皆を見回しながら言うが、誰も手を挙げない。

「じゃ、解散」

 各々立ち上がり、部屋を出ていく。

「カケ、ちょっといい?」

 俺も部屋を出ようと思い立ち上がると、望に呼び止められた。望に呼び止められることはほとんどないため、少し驚く。

「いいけど、ここで?」

「いや、違うところがいい。カケの部屋でいいか?」

「いいよ」

「カケ、兄弟練習、行かなくていいのか?」

 残っていた歩が訊いてくる。

「大丈夫。今日はもともといかない予定だから。その代わり、夕飯少し早くなる」

「あ、そ」

「ノゾ、行こ」

「あぁ」

 望と一緒に歩の部屋を出て、隣の俺の部屋に入る。

「で、何?」

 俺は椅子に座りながら言う。

「アユのこと。少し気付いてただろ」

 望がベッドに腰を掛けながら言う。

「まぁ、今、ノゾが話したくなることは、それ以外にないと思ってた」

「わかってんなら早い。カケは、どっち派?」

「どっちっていうのは、賛成か反対か?」

「そ」

「まぁ、どちらかというと賛成」

「何で?」

  反対、と言ってほしそうだな。

「何でって……。反対する理由、なくね? 俺がどうこう言っても変わらないだろうし……」

「理由はいくらでもある。長崎には、まだ父さんたちを殺した女中たちもいるし、あんな、実力一本勝負の学校から出てきたやつと一緒にいなくてもいい選択ができるのに、自らそっちに行かなくてもいいと思う。あんなところにいてもいいことないだろ。それに、向こうがうまく回ってないにしても、アユがやることではないと思う。どうせ、大学に行きながらの手伝いって言ったら少ししかできないだろうし、大学卒業してから行けばいいと思う。そんな危険なことしなくていいと思う」

 誰かに話しかけるでもなく、ただ先ほどまで出かかっていたけど留めておけた言葉がすべて出てきている。

「ノゾは、心配なのか?」

 俺は、望の言葉をすべて聞いて少しだけ考えてからそう言う。

「心配だろ。アユが俺から離れようとしたことなんて、今までで一度もないんだぞ。何かあっても俺はフォロー出来ない。それで、何かあったときが怖い。アユも俺も」

「何があると思ってるの?」

「女中が襲ってくるかもしれないし、学校の全員が敵になってるかもしれない。元々孤立してたのに、今後仲良くなれるとも思えない。そんな場所に行ってわざわざ孤立しに行くなら、アユには新天地で楽しくやってほしい。俺が向こうに行ってもいいから」

  アユのために自分は犠牲にする精神、昔から変わってなさすぎる。

「ノゾが、もしさ、女中だったらアユを襲う選択をするのか? ノゾだったら、約半年で校内中を自分の味方にできるのか? ノゾが、もし、元々浮いてたやつが戻ってきたら、そういう対応をするのか? そもそも帰ってくるかもわからない人に対してそんな対応できないよな? 長崎に行こうとしてたことなんて、俺達でもわからなかったんだから。ノゾすらわからなかったのに、誰が反応できるって言うんだよ」

「俺は、そんなことしないし、できない」

  ノゾがしないことぐらい、わかってる。

「でも、その選択肢が浮かぶってことは、するかもしれないんだろ?」

「俺はしないけど、やりかねないだろ、あの人たちは」

「自分の心配って裏返しでさぁ。自分がされるって思ったことって、自分だったらやるって思わないと、される、とも思ないだろ? だから、自分は絶対そんなことしないと思ってても、無意識的にやってるかもしれない」

「そんなことしない」

「まぁ、ノゾは、今までの経験則から出した予測何だろうけどさ、少しぐらいはいろんな人を信用してみたら? そんなにずっと気を張ってたらアユより先に倒れて、アユに迷惑かかるよ」

  アユは迷惑だとは思わないだろうけど。ノゾにはよく効く言葉だから。

「アユは信用してるし、信頼もしてる。でも、他の人はまだ信用できない。だから、心配なんだよ。カケもわかるだろ? ってか、そのぐらい気を張っておかないと、何か起きた時に対応できない」

「分からなくはないけど、アユの好きなようにやらせてあげたらって思う」

「結構自由にやらせてると思ってたんだけど」

「自由にはやらせてると思うけど、ノゾがアユから離れることはなかっただろ?」

「離れるわけないだろ。何があるかわからないのに。アユを一人にさせられるか」

  それがダメなんだって。ノゾは直接そのまま言った方がいいのか?

「過保護」

「……やっぱり、そう思う?」

「アユがノゾ離れできてないように見せかけて、ノゾがアユ離れできてない」

「アユにも同じこと言われた」

「アユに言われたなら、それなりに響いてるんじゃないか? 俺なんかが言うより」

「カケにも言われたら本格的に離れないといけないなと思ってたけど、結構簡単に言われて、普通にショックなんだけど」

「勝手にショックを受けないでくれる?」

「アユ離れ、します。……頑張ります」

  やっぱり、それが一番つらいことなんだな。

「ガンバレー」

「ってか、カケは俺がこっちにいたほうがいいと思う? それとも向こう?」

「向こうに行ったらアユから離れないだろ。それに、俺はここにはいなくてもいいけど、こっちにはいてほしい」

「何で?」

「アユがやってたことは、サツとアキと俺で何とかなるって言うか、するけど、ノゾがやってたことは、俺たちじゃできないことだから」

  アユの役割は何とかしないといけないことも事実だし。

「まぁ、確かに、アユは何とかなるだろうな。カケがいるし」

「俺だけじゃアユがやってたこと全部はカバーできないけど、当主様に話に行く仕事は俺になりそうだとは思ってる」

「なるだろうな」

「でも、ノゾの仕事は、まだミノとかトオにはできない。四つ子はそもそも無理だろうし。だから、ノゾが近くにいるとありがたいかな。まぁ、アユが向こうに行ってもバックアップはするつもりだし、アユは大丈夫。ノゾも新しいところで楽しんでよ」

「カケが言うなら、アユは大丈夫か。本人にも言われたし。楽しめるかどうかは分からないけど」

「もう、落ち着いた?」

「あ、バレてた?」

「バレてるよ。ノゾは俺を呼ぶことなんてないから」

「その割には、すっごいいろいろズバズバ言われた気がするんだけど」

「まぁ、ノゾの相談を受けることがほとんどないからどうしたら良いのか分からないのが本音。だから、とりあえず、当たってみたり、質問してみたりって感じ」

「まぁ、落ち着いた。サンキュ」

「当主様にはいつ話に行くんだ?」

「いつがいいかなぁ。アユと相談してから決めることになるかな」

「了解」

「じゃ、アユと話してくる」

「いってら」

 望がベッドから立ち上がり、部屋から出ていく。俺は気配を探り、みんながどこにいるか調べる。

  ご飯作ってるな。今日は、シオか?

 俺は、立ち上がって家に向かう。

「あ、連絡入れる前に来た」

 俺は、家に入り台所に向かうと、台所にある椅子に座ってご飯を作っている栞を眺めていた薫が、俺に気付いてそう言う。ご飯を作る担当は、彰と栞がリーダーとなり何を作るかを決め、他が手伝うという形になった。それまでは、彰だけだったから、負担は軽くなっている。

「何かすることある?」

「テーブルを拭くぐらいかな」

「カオは何かやってたのか?」

「栞を眺めるって仕事してる」

  これは、怒られるんじゃないか?

「そんな仕事はないよ」

 栞が薫に布巾を投げつけながら言う。水を含んだ付近はそれなりの速さで薫を襲う。薫は間一髪で布巾をキャッチしたからか、イスごと後ろに倒れる。

「わぁっ」

「おっと」

 俺は椅子ごと薫を受け止める。俺が受け止めなくても受け身は取れていたと思うが。

「シオ。危ない」

「ごめんなさい。そんなことになると思わなくて……」

「投げてもいいけど、力加減は気を付けて」

「うん」

「カオ。大丈夫か?」

「大、丈夫。受け身とろうと思ってたから、受け止められて少し驚いたぐらいで……」

「ケガはないな?」

「ない。大丈夫」

「シオを怒らせるなよ。今のは、カオも悪いからな」

「わかってる」

  大人しいなと思ってたけど、普通にこういうこともやるのか。

「じゃ、テーブル拭いてきて」

「えー、カケ兄がやるんじゃなかったの?」

「カオが布巾を持ってるし、立ってるからちょうどいいだろ」

「わかったよ」

 薫がテーブルを拭きに行く。

「カケ兄さん、連絡、お願いしてもいい?」

「呼んでいいのか?」

「うん。そろそろ人手ほしい」

「了解。呼んでおく」

 俺は、兄弟チャットに、夕食だから集合するように、と送る。

「カケ兄、本屋行きたい」

 テーブルを拭き終わり、布巾を洗っている薫が言う。

「じゃあ、明日行くか?」

「行きたい」

「シオは? どうする」

「薫が行くなら、私も行く」

「了解。明日、まっすぐ帰ってくるから、行く準備しといて」

「わかった。ありがとう」

  明日、って適当に言ったけど、それなりに人が多い日だから休んでも問題ないと思うけど、休まなくてもいいなら休みたくないな。先週ずっと休んでたし。

「連れて行ったら、二人で帰れるか? そんなに難しい道じゃないんだけど」

「行ってみないと分からないなぁ。なんで?」

「いや、バイト休むなら連絡しなきゃいけないから。まぁ、バイト終わるまで待っててくれてもいいけど、どうする?」

「何時まで? バイト」

「夜七時まで」

「そのあと、すぐ、練習だよね?」

「まぁ、そうだな」

「栞、どうする?」

「薫が決めてくれていいよ」

「じゃあ、帰れそうだったら自分たちで帰るし、帰れなさそうだったらカケ兄のこと待ってるから、バイト休まなくていいよ」

「了解」

 その後、続々と兄弟たちが集まって夕飯を食べる。

「あ、カケ」

 望に呼ばれた。

「何?」

「当主様のところに行くの、、明日の放課後になった。優斗様も同じ時間だって」

「当主様には言ったの?」

「言ったら、優斗様と同じ時間になるけどいいか、って訊かれたんだ」

「いい、って答えたの?」

「アユが、早いほうがいいだろ、って言ったから」

「そっか。まぁ、二人がそれでいいならいいと思う」

 栞が作った夕飯を食べ、順番に風呂に入り、寝る。


 翌日。

 学校から直で屋敷に帰宅し、薫と栞を連れて本屋に向かう。

「本当に一本道なんだね。これなら迷わなそう」

「すきに帰ってくれていいから。声だけかけて」

 本屋に入って二人と別れ、ベルトポーチと名札だけつけて、レジに向かう。

「翔。連れてきたやつ、誰?」

 レジの奥の椅子に座っていた深司さんが言う。

「弟妹です。この冬休み中にこっちに来たんです」

「へぇー。本、好きなのか? 他の兄弟、連れてきたことないだろ」

「まぁ、それなりにって感じですね。冬休み中は結構読んでたので」

「よかったな。仲間ができて」

「ほとんど本について話さないですけどね。……拓真さん、どこにいるか知ってます?」

「拓真さん、まだ来てない」

「何かあったんですか?」

「さぁ? 今日はほとんど来れないから、頼むって言われた」

「じゃあ、何したらいいですか? 深司さん」

「今、大体回ってるからなぁ。翔は適当にやっててくれていいよ」

「わかりました」

 俺は、とりあえず倉庫に向かい、在庫の確認をする。何冊か少なくなっているところがあるため、そこの追加をしに行く。その後は、倉庫の中がごちゃごちゃしていたため、倉庫の中の整理をしたり、レジの応援に入ったりしていたら、夜七時になった。

 薫たちから帰宅したという連絡は来ていないため、本屋の中を探し回る。

  それなりに人が多いところで気配を探ったりなんかしたら、数十分は動けなくなる。

「あ、いた。どう、進んでる?」

 二階の文庫ゾーンにいた二人に近づく。

「こんなに広いなんて聞いてない。もっかい来る」

「教えたんだから、いつでも来れるだろ。早めに帰らないと、あいつらに怒られる」

「そーだね」

 薫と栞と一緒に帰宅すると、案の定、廊下の真ん中に兄弟たちが待ち構えていた。

「遅い」

「ごめんて」

「すぐ準備していくぞ」

「はーい」

 突然の歩の告白に一番驚いたのは望。歩は両親が亡くなる前から考えていたことだったが、望には否定されることが分かっていたから、話していませんでした。そのせいで望はひどく動揺し、翔との話し合いをする。その中で、歩離れをすることを決めます。……本当にするかはわかりませんけどね。二人は、双子であり、年上だからこその絆というかつながりがあるため、離れるのも一苦労。わかっていても離れられないそんな二人は、この先どうなるんでしょうか。


 次回は、 体育の駅伝? です。

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