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54 ~大輝さんのお手伝い 前編~

 冬休みが明けて何日か経ち、普段通りの生活にも慣れてきた。薫と栞も俺たちとの生活に慣れてきて、夜の兄弟だけの運動にも参加し始めた。二人とも、剣道と弓道をやっていたと言っていたが、普通に他のスポーツもうまかった。

  俺以上に動けてるだろ……普通に。

 歩と望が抜けた穴をを薫と栞で埋めたため、また少しだけ試合形式の練習を始めていた。今度は、皐と彰が引っ張っている。試合をやっていない期間もこの二人が引っ張っていたから来年度はこの体制になるだろう。

 俺はというと、相変わらず試合の記録と得点ボード係をやっている。

  まぁ、カオとシオが増えて、リーダーがサツとアキに変わったから、結構みんなの動きが変わって記録とってて楽しい。絶対に、誰にも言わないけど。……そろそろバイト復帰するかぁ。明日あたりに拓真さんに伝えに行こ。

 なんてことをベッドに寝転がりながら考えていると、机に置いてあったスマホが鳴る。誰からだ、なんて考えながら起き上がり、机に手を伸ばしてスマホを取る。画面をつけると淳さんからメールが送られてきていることを示していた。俺は、淳さんから送られてきたメールを開く。

  事務所に来てほしい、か。事務所ってどこにあんの? なんか、前に晴さんと話したときに言ってた気がしなくもないけど……ほとんど表玄関のほうに行かないから忘れたな。淳さんに訊くしかないか。手伝うことは問題ないし。

 俺は、事務所がどこにあるのか分からない、と返信する。すると、すぐに、玄関で待っていろ、という返信が来た。

  この玄関は、表玄関のことだよな。ってか、はい、とも、いいえ、とも言ってないのに行く前提になってる……。まぁ、いいけど。

 俺は、ベッドから降りスマホだけポケットに入れ、部屋を出る。裏玄関に向かい自分の靴を取って、表玄関に向かう。表玄関には、もう、淳さんが立っていた。

「ごめんなさい」

「いや、別にいい。ってか、事務所の場所ってまだ教えてなかったっけ?」

 表玄関を出て事務所に向かいながら淳さんが言う。

「ちょっと前に晴さんと話した気がしなくもないんですけど……、普段、ほとんどこっちを歩かないせいで忘れました」

「こっち歩いたら思い出すとか?」

「ないですね」

「そっか。まぁ、ずっと屋敷でやってたもんな。もう、何個か一緒に仕事をやってるせいで、知ってるもんだと思ってた」

「俺がいつも一緒にいることに慣れないでください。俺、別に手伝ってるだけですから。多分、この先も」

「えー、事務一緒にやろうよ。大輝兄の下悪くないと思うんだけどな」

「本屋で働きたいです」

「あぁー、深司さんのお守りのほうが大切だな。じゃ、今後も手伝ってもらお」

「いや、だから、普段から手伝う人員に入れないでください」

「それは、どうだろう。大輝兄に仕事ができるのバレたら終わりかな。ってか、もうバレてるから。冬の段階で」

「なんで、それを、先に言わないんですか!」

「俺の仕事が減るから」

「だからって……。いや、もう、いいです。兄弟たちに振り回されていると同じだと考えるようにします」

「まぁ、でも、翔を大輝兄の前に連れてきたのは俺だから、俺に仕事が回ってこなかったら、翔にも仕事は回らない」

「じゃあ、淳さんが仕事を回されなければいいということですね?」

「まぁ、無理だろうけど。大輝兄の実の弟だし。事務所にいる弟、俺だけだし。今は、まだ俺からしかパイプがつながってないけど、大輝兄と直接パイプがつながったら俺に仕事が回ってきてなくても呼び出されるかもな」

「気を付けます」

「いや、つながってくれていいんだぞ。その分俺の仕事が減るから。って言っても、高校生にやらせるのは気が引けるから、大学生になったら大輝兄と直接つながってくれ。その時は、多分、もう、俺は事務所の所員だから俺から仕事を振ることがあるかもしれないけど」

「えっ、淳さん、今も事務所員ではないんですか?」

「俺、今は大学生だから、大輝兄に呼び出されない限りはこっちに来てない。事務所員じゃないよ」

「結構、こっちにいる気がしますけど。そんなに呼び出されてるんですか?」

「大輝兄も忙しからな。雑用とか人手が欲しい仕事は大体俺が手伝ってる。んで、それが一日で終わる量じゃないから、結局毎日来てる」

「大学は、大丈夫なんですか?」

「全然問題ない。こうなるだろうってわかってたから、ほとんど一、二年で終わらせたし」

「そうですか」

「あ、そうそう、今日やることは、大掃除。……って言ってもがっつり掃除するんじゃなくて、ファイル整理。得意だろ? そういうの」

「まぁ、鍛えられてますから」

「頼りにしてる。まぁ、俺らで組まされることはない気がするけど。メンツ的に」

 そんなことを話しているうちに事務所に着く。

  そういや、こんな建物見たことあったな。って言う外観だな。

「今度から呼び出したらここ来て」

 淳さんが扉を開けながら言う。

「呼び出されたくないですけどね」

 淳さんが窓口にいる女性と二言話して、また歩き出す。

「呼び出さないよう大輝兄には言っておくし、多分、高校生までは数が少ないと思うけど、あまり期待しないで」

「あまり期待していないので大丈夫です」

「わかってんな」

 淳さんが階段横の廊下をまっすぐ進み、左手にある扉を開けた。

「お、来た。翔、呼び出して悪いな」

 扉を開けた先の部屋には、大輝さんと大量のファイルが床に乱雑に置かれていた。

「悪いと思ってるなら、呼び出さないでください」

「仕方ないだろ。仕事のできる暇そうな人が翔以外に思いつかなかったんだから」

 大輝さんが言い訳をしている横で、淳さんが肩を揺らしながら笑う。

「なんだよ」

「いや、この事務所にも大輝兄にまっすぐ不満を言える人いないのになぁ、と思って」

「お前は言うだろ」

「だって、弟だし」

「そういわれてみれば、確かにあまり言われないかも」

「だから、ずばって言える翔がすごいなと思って」

「そうだな」

 二人から感嘆した視線を向けられるが、俺は思ったことを言ってるだけだ。

  あぁ、思ってることをそのまま言えるのがすごいのか。

「ってか、翔も引き受けたんだから俺だけのせいじゃないだろ」

「何をするかは教えられてなかったです。証拠、見せましょうか?」

「いや、いい。淳は結構説明を省く」

「大輝兄も、な」

「悪かったな」

「それに、翔だったら大体何でも引き受けてくれるから。別にいいかなって思った」

「そういう問題じゃない。……が、本当に人手が足りないから手伝ってほしいって言うのが本音だな」

「まぁ、俺も暇だし、大変そうなのは見過ごせないんで、手伝います」

「あと、真と修と條が来るはずなんだけど、連絡来たか?」

「もう少しで着くって連絡が、修兄と條兄からきてる。真兄からは何も来てない」

  真さんと修さんと條さん……。修さんは、晴さんの口から聞いたことある。條さんは、淳さんの仕事を前にやってた人。真さんは? 呼び方的に、大輝さんの弟で淳さんの兄っぽいけど、どうなんだろ。

「あぁ、真からは、俺に来てた」

「なんて?」

「出遅れたって」

「まぁ、真兄のことだし、寝てたんだろ」

「いや、今は家にいるはずだし、昼に連絡した時もすぐに返信来たから寝てるってことはないだろうけど、なんかあったんだろうな」

「家にいるって……、締め切りは大丈夫なのか?」

「本人が大丈夫って言ってたから、大丈夫だろ。じゃなかったら、淳に任せてた」

「え、俺? いやぁ、真兄いてくれてよかった」

「あの、真さんって……」

「二番目。自己紹介は自分でやってもらうつもり。他は知ってんのか?」

「え、っと、少しだけ聞いたことがある程度で、会ったことはないです」

「修は三番目で條が四番目。修と條は双子。まぁ、見たほうが早いか」

 すると、突然、扉が開いた。

「よ、久しぶり」

「久しぶりってほど久しぶりじゃないと思うけど」

 似たような顔をした男性が二人入ってきた。

「俺は久しぶりなんだ」

「二日前に俺のとこ来なかったっけ?」

「修のとこはには行ったけど、大輝兄のとこには行ってない」

「なんでだよ」

「なんとなく? 昨日は淳と打ち合わせしてたし」

「大輝兄のとこには一番初めに行くべきだろ。一応、事務所に所属してるんだし」

「行く暇なかったんだって」

「俺のとこでくつろいでる時間があっただろ」

「そんなに、俺がいるの嫌?」

「嫌じゃないけど、やることはちゃんとやれ」

「そーだね」

 元気な方の男性が大してやる気のなさそうな返事をする。

「それで、誰?」

 大人しいほうの男性が俺を見ながら言う。

「待って、当てよう」

 元気な方の男性が言う。

  別に、当たらないだろ。どうやって当てるんだよ。何のヒントもなく。

「いや、無理だろ」

 大輝さんが呆れたように言う。

「えー、俺ら知らない?」

「修は、聞いたことあるんじゃないか? 條は……、どうだろ」

「ちょっと待って。えーっとね、見たことある気がする。似たような顔」

 大人しいほうの男性が目をつむって記憶の中を探り出す。

  アユたちとか、か?

「えーっと、歩君。兄弟じゃない?」

  やっぱり。……これは、俺が答えるべきなやつ?

 と考えていると、四人の視線が全部俺に来た。

「歩は、俺の兄ですね」

「歩君っていったら、長崎か。えー、誰だろ」

 元気な方の男性も考えだした。

  なんで、アユだけで長崎ってわかるんだ? そんなに有名?

「名前、間違えてたらとっても申し訳ないんだけど、翔君?」

  ……当ててきた。

「そう、です」

「よっしゃ」

「どこで知ったんだ? 條」

「前に父さんについて行って長崎に行ったとき、なんかやってる子がいたんだよ。だから、俺が蓮さんに聞いたら、俺の子の翔だって教えてくれた。だから、多分そうかなって」

  どっかで会ったことあるのか。全然覚えてないけど。父さん関係の思い出にとりあえず蓋をしたからか?

「へぇー。翔君か……。晴さんがよく話題に出してるな」

  何の話題? すっごい気になる。なんて言われてんだろ。

「なんなら、昨日、淳と話してるときに何回か出てきたな」

「とりあえず、挨拶」

「だな」

 顔の似た二人が近寄ってくる。

「俺が修でこっちが條。二十三歳。よろしく」

  大人しい方が修さんで、元気な方が條さん。……二十三歳ってことは、深司さんと同い年か。

「よろしくお願いします」

「よろしく。長崎の話、聞きたいけど……、今はいっか。いつか聞かせて」

「はい」

「俺は、いろいろ管理してるところにいる」

「俺は、その辺飛び回ってるから、あまり会うことはないかなぁ。今日も珍しいんだ。あと二日もしたらまた東北のほうに行く予定なのに、大輝兄が呼び出すからさ、仕方なぁく来たんだ。俺は休むこともできないみたい」

  兄弟は、本当にズバッと言うんだな。大輝さんに対して。

「それは、俺への当てつけか?」

「違うよー」

「悪かったな。他の奴らを動かすのは、お前らを相手するより疲れんだよ」

「大輝兄の部下だろ? 大丈夫だって」

「そんなんだから、大輝兄の仕事が増えてくんだろ」

「できるだけ何とかするから。今日は頼む」

「大輝兄から頼まれちゃ、やるしかないよな」

「淳からだったら断ってもいいけど」

「断るつもりだったのかよ」

「まぁ、五分五分かな」

「まだ、誰か来るのか? 待ってるけど」

「真が来る」

「真兄って、今、家にいるんじゃなかったっけ? 来れんの?」

「遅れてるとは言ってたけど、来てるっぽい」

「大丈夫なのか?」

「さすがに、睦月が帰ってきてるだろ」

「それもそうか」

 そんな話をした数分後に、男性が入ってきた。

「君は?」

 男性は、倉庫に入ってきてまっすぐ俺のところに来た。

「翔です。よろしくお願いします」

「俺は、真。よろしく」

「んじゃ、全員そろったしやるよ。全部、こんな感じの倉庫の掃除をしてもらう。今の状態みたいに全部棚からファイルを出して、拭いて、しまう。まぁ、やる順番は何でもいいけど、入れる順を変えるから、全部出すのが一番楽かなって思う」

「それのために、こんな人数いる?」

「いる。ここだけじゃないから。これと同じ部屋があと四つある」

「うわっ」

「並べる順番は? 大輝兄に訊けばいいのか?」

「いや、後で紙を渡すから、その順番に並べてほしい」

「俺、役に立たないけど? 普段、そんなことしてないし、力ないし」

 真さんが言う。確かに、他の四人と比べて細身ではあったし、色白だ。

「問題ない。俺と組めば、働けるだろ」

「えー……」

 真さんはとても嫌そうな顔をした。

「修と條は一緒にしたいけど、そうすると、條がちゃんとやるか分からないから、分けたいな」

「えー、修と一緒がいい」

「俺は、別にどちらでも」

「お前はほっとくと修と一緒にいるんだから、少しぐらい離れとけ」

「じゃあ、俺が條兄と? さすがに、翔には任せられないでしょ」

「いや、條と淳を一緒に組ませたらさぼる未来しか見えない」

「ひどくない? これでも大輝兄の右腕なのに……」

「翔と二人にしたら、ほとんど仕事を押し付けてるやつが何を言う。翔、條と組んでくれ。修は淳な」

「りょーかい」

「わかりました」

「大輝兄、どこの部屋やればいいの?」

「この階の倉庫三つと、三階の倉庫二つ」

「淳は、やる場所分かってんの?」

「うん」

  なら、俺と條さんペアと大輝さんと真さんペアが下だな。……俺が考えるとしたら。

「翔、どう?」

 淳さんにそう言われたが、何を訊かれたのかさっぱりわからない。

「何がですか?」

「分け方。どのペアがどこ担当?」

「それ、俺が決めるんですか?」

  大輝さんがいるのに、俺が決める必要はないと思う。

「どうせ、考えてただろ?」

「まぁ、考えてましたけど」

「じゃあ、それでいい」

 大輝さんまでそう言う。

  さすがに、皆さん考えてると思うんだけどな。

「俺が考えてたのは、俺と條さんペアと大輝さんと真さんペアが下で、修さんと淳さんペアが上です。だた、どこかやりたいとこがあれば変えるべきかと」

「動き方は?」

「それぞれに合わせるべきだとは思いますが、ファイルを全部棚から出して、棚を拭いてから床で少しだけ整理してからしまうのがいいかなと思います」

「これでいいな?」

 大輝さんが全員を見回しながら言う。

「いいよ。何でも」

「大輝兄に任せる」

「じゃ、決定。修と淳は上行って」

「ねぇ、やっぱり、俺、修とペアがいい」

 兄弟練習、再開しました。結局ずっとやりたかったのを我慢していた状態だったので、とても楽しそうにやっています。

 淳さんから呼び出されるといったら、まぁ、お手伝いですよね。ただ、いつもやっていることなので、翔の得意分野です。

 そして、初対面の真、修、條。修と條はずっと名前は聞いていたけれど会ったことはなかった二人と、名前を聞くのも初めての真。全員淳の兄弟の上層部ですね。真は何の仕事をしているかはまた今度。


 次回は、 登場人物紹介 亨編 です。

 まだ書いてないです。本格的にやばいです。

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