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50 ~冬休み 6~

 俺は、立ち上がり、部屋を出る。隣にある、歩の部屋に入った。

「遅い」

 部屋の中央に座って、ペンを握っている歩ににらまれる。歩の部屋の中は大量の紙が床に散らばっており、小さい文字で細々と書いてあるものや、一言だけ大きく書いてあるもの、白紙のもの、なんとなく塗りつぶしたものなどだ。

「ごめん」

 俺は、潔く謝った。

「手伝って」

「まだ書いてる途中? それとも全部出し切った?」

「まだ書いてる」

「じゃ、整理しながら待ってる」

 俺は、とりあえず扉の近くにある紙を手に取る。座る場所を作り、そこに座る。書いてあることを読みながら、整理していく。

 歩は、入ってくる情報がキャパオーバーした場合、情報を頭の中では整理できなくなり、考えていること、整理できていない情報をすべて紙に書き、それを整理することで頭の中を整理している。この姿は、俺にしか見せていないと本人が言っていた。

  最近はキャパオーバー寸前まで行っていることが多かったからな。そろそろこうなるとは思ってたけど。

 俺が、この手伝いをするのはこれで十回目だ。そのため、どのように整理すると、歩が理解しやすいかがなんとなくわかっている。その順番通りに手近にある紙から整理していく。

  こんなんで整理できる頭を持ってるのいいなぁ、って何度思ったことか。

 歩に、どうやって整理しているのか聞いたら、整理できていない情報ボックスというのが頭の中にあって、その中の物をいったんすべて紙に書き写すことで空っぽにして、そのあと、紙で整理した情報をそれぞれの記憶ボックスに入れている、と言っていた。俺には到底できそうにない。

  絶対いらない情報まで入れるし、そんで、結局、また整理しなきゃいけなくなるし。

 紙には、試験に出てきそうなことから、最近のニュース、両親たちや、俺たち兄弟のことなどいろいろ書かれていた。

 すべての紙を整理し終える頃に、千明様から、当主様の部屋に行くように、という連絡が来た。

「俺だけで行ってくる」

「頼んだ……」

 これから整理した情報を頭の中に入れるという仕事が残っている歩が、紙の束と向き合いながら言う。

  まぁ、何の情報も入れない方がいいか。

 俺は、頑張れという気持ちを込めて、歩の頭をなでてから部屋を出る。

  当主様と連絡先を交換したくはないけど、毎度千明様に連絡してもらうのも申し訳ないな。

 なんて思いながら、当主様の部屋に向かう。当主様の部屋の前に着いたら、とりあえず、気配を探る。

  三人。当主様と……弟妹たちか? 当主様側には一人だから。

 俺は扉をノックし、名乗る。当主様の返事があってから、部屋に入る。

 二つの気配の主は、どちらもこちらを向いていなかったため、顔は分からなかったが、姿勢が要や忍並みにいいことは分かった。

「翔だけ?」

「はい」

 当主様が俺を見上げながら言う。

  呼び捨てになってるっ。

「じゃあ、ここに座って」

 当主様が隣を優しく叩きながら言う。

  当主様の隣に座れと? 無理だろ……。嫌だ。

 と思いながらも、そんな感情は一切外には出さず、言われたとおりに当主様の隣に座る。前に座っている二人の顔を初めて見たが、どちらも両親に似ていた。

  すごい緊張してるな。

 感情を隠すことは教えられているのだろう。普段の兄弟たちを見ていなかったら、わからなかったかもしれない。

「二人は、(かおる)(しおり)。翔、本当に知らない?」

「僕は、知らないです」

「薫と栞は、知ってる?」

「知らないです」

 男子のほうが答えた。多分、薫。

「そうか。なら、自己紹介は、みんなでやってもらってもいいかな? 先に二人に説明だけしていいかい?」

「はい」

 俺が答え、薫と栞は頷いている。

「二人の保護者も私になったから、なんかあったら私のところに持ってくるように。手続きの大半はこちらでやるけど、二人が必要な時は翔を介して伝えるようにするから、来てね。翔を連れてきてくれてもいいよ」

 二人は頷きながら聞いている。

  勝手に俺も行くことになってる……。まぁ、何でもいいけど。

「これは、質問。二人は行きたい小学校とかある? なかったらこっちで決めてしまうけど」

「お任せします」

「公立がいいとか、私立がいいとかはある? 一応、こっちにも相川家が運営してる学校があるけど……」

「どこでも大丈夫です」

 当主様への受け答えはすべて薫がやっている。

「わかった。あと、伝えておくことは……、あぁ、翔たちと一緒に過ごすで大丈夫? 兄弟だし面識があると思ってたから、一緒に過ごしても大丈夫だろうと思ってたけど、面識がないんだったら、違う方がよかったりする?」

「翔さんたちが良ければ、僕たちは問題ありません」

「翔は?」

「こちらも問題ありません」

「部屋は、まだ余ってたよね?」

「はい」

「じゃあ、好きなところ使ってくれていいから。手伝ってほしいことがあったら言って。冬馬達に手伝ってもらうから。晴樹たちの相手もしてもらってるからね」

「わかりました」

「いったん、今はこのぐらいかな。また、なんかあったら呼び出すかもしれないから、その時はよろしく。……あぁ、荷物が届いた時も連絡するから、対応よろしく」

「はい。失礼します」

 俺と薫と栞は一礼して部屋を出る。

「お疲れ。一応、自己紹介しておくと、俺は翔。兄弟からはカケって呼ばれてる。わかるように呼んでくれたら、何でもいいよ。よろしく」

 俺たちの部屋に向かいながら、俺は後ろを歩いている二人に話しかける。

「薫です。よろしくお願いします」

 男子のほうが言う。

  合ってた。薫と栞は性別関わらずどちらにもいそうだから難しいんだよな。

「栞です。よろしくお願いします」

 女子のほうが答えた。二人ともまだ緊張しているようだ。

  どうやったら、五歳差の兄弟に会わせずにいられるんだろう。まぁ、島の反対側で過ごしてたら分からないけど、多分、屋敷の近くには住んでただろうし、五歳差だったら、小学校が被ってるはずなんだけど。島に小学校は何校かあるけど、さすがに、下の学校に入ってないだろうし。

「どこに向かっているんですか?」

「俺らの部屋。とりあえず、アユの部屋に行く。……あぁ、アユって、ここにいる一番上ね。あと、敬語抜いてくれていいよ」

「うん」

「二人は何か習ってる?」

  姿勢がいい理由が知りたい。俺らもそこまで悪くないと思うけど。

「弓道と剣道を少しだけ。週に二日程度」

「だから、姿勢がいいのか」

「カケ兄も姿勢いいけど?」

「カオとシオ程よくない」

「カケ兄は、習ってなかったの?」

「なかった。まぁ、習いたくないって言ったら、仕事を渡されたけど」

「仕事は、俺たちも少しだけ手伝ってた」

「比にならないと思うぞ。十数人分ぐらいやってたから」

「十数人分? 一人で?」

「うん」

「何で?」

「他人の分と兄弟の分」

「じゃあ、他の兄さんたちは、やってなかったの?」

「やってなかったというより、やらせてなかった。嫌なら、俺がやればいいかなって」

「それじゃあ、他の兄さんたちはできないの?」

「いや、中学生ぐらいの時はやってたぞ。二人と同じくらいには」

「そっか」

 そんな話をしているうちに、歩の部屋の前に着く。

「ちょっとここで待ってて」

 二人がうなずくのを見てから、俺は、歩の部屋に入る。部屋の中にいた歩は、頭の中に情報を入れたのか、紙とは向き合っていなかったが、ベッドに寄りかかり、天井を見上げてぼーっとしていた。

「アユ、弟妹来たけど、どうする?」

「ん……ここに入れて。……全員呼び出す?」

 どこかに行っていた歩の意識が戻ってきた。

「名前だけは知っててほしいけど、全員整理がついてからでもいいかな。何するかわからない状態で合わせるのは、少し怖い」

「じゃあ、先に、俺とノゾとカケだけで二人と話すか?」

「アユは、整理できてるのか?」

「手伝ってもらったからな」

「いったん、俺の部屋にいてもらうっていう方法もありだけど」

「ノゾって、整理終わってると思う?」

「さぁ? 本人に訊いてみないと分からないな」

「整理終わってたら、連れてくるか」

「ノゾに訊きに行くの、俺でいい?」

「俺が言ってくるから、ここにいて」

 歩が立ち上がりながら言う。

「了解」

 歩が部屋を出ていくのと入れ違いで、薫と栞が入ってきた。

「とりあえず、ここ座って」

 俺は、いつも座っているところに座り、右隣の床をたたく。と同時に、気配を感じる範囲を広げ、誰がいないか確認する。

  アキ、トオ、シノ、シズ。アキに連絡しておくか。

 スマホを取り出し、彰との個人チャットに、二人分多く買ってくるように、と送っておく。一応、その文をコピーして亨にも送っておいた。

  多分、大丈夫だろうけど。

 俺は、隣に座っている二人に視線を向ける。まだ緊張している。

「先に説明しておくと、ここにいるのは、一番上が双子、二番目が四つ子、三番目が俺を含めた七つ子の全部で十三人」

 俺は、二人に向かって言う。

  司って人は、ここにいないから、ここにいるって言った。兄らしいけど、俺は知らないし。

「さっきの人は?」

「双子の、上。アユだよ。あぁ、あと、後で自己紹介してもらうから。特に言ってほしいことはないから、大丈夫だと思うけど」

「うん」

 すると、歩と望が入ってきた。

「じゃ、とりあえず、自己紹介しよ」

 歩が薫の正面に座りながら言う。

「俺は、歩。アユでいい。よろしく」

「俺は、望。ノゾでいいよ。よろしく」

 望が歩の隣に座りながら言う。

「薫です。よろしくお願いします」

「栞です。よろしくお願いします」

「カケ、敬語抜くことは、伝えてない?」

「伝えた」

「じゃあ、最初だけか」

「呼び方は?」

「カオとシオだろ」

「だな。じゃあ、当主様に言われたこと、教えて」

 薫と栞が話し始めそうにないため、俺が二人に伝えた。

「じゃあ、まだ転校先は決まってないのか」

「みたいだね」

「俺たちと一緒に過ごすのはいいんだけどさ、夜、どうするよ。俺たちの時間にご飯を食べるのは、さすがにやめた方がいいだろ?」

「とりあえず、アユとノゾが大学受験が終わるまでは、アユとノゾと一緒にご飯食べればいいだろ」

「そうも言ってられないんだよな」

「ってか、予定を考えるのは、後でいい」

「じゃあ、学校が始まった後のタイムスケジュール組んどいて。冬休み中に」

「了解」

「あと、この二人、頼んでいいか?」

「頼んでいいか、と言われても、俺もまだ会ったばっかで、誰とうまくいくのかとかわかってないから」

「とりあえず、だ。うまくいくやつが分かったら、組ませればいい」

「まぁ、了解」

「自己紹介は、向こうでやったほうが早いか? ご飯の時、どうせ全員集まるし」

「それまでは、俺のところにいる?」

「いや、勉強する気が起きないから、ここにいてくれてもいいけど」

「いいんですか? それで」

「まぁ、別に。問題ない」

「ノゾは?」

「……勉強してきていいか?」

「どうぞー」

「そろそろ昼ごはんになるかもだから、先に行っててもいいと思う」

「買い物組、帰ってきたのか?」

「うん。向こうの家にいる」

「じゃあ、移動するか。ノゾは、好きにしてくれていいよ」

「俺も、向こう行く」

「じゃ、適当に集合で」

「ほかの兄弟たちにも、連絡入れといて」

「了解。カオ、シオ、ついてきて」

 俺は、二人を連れて歩の部屋を出る。

「えーっと、ここが、一応俺たちの部屋。一番奥が俺ね。なんかあったら、勝手に入ってきてくれていいから。……で、場所が指定されていない集合の時は、さっきの部屋に来て。あそこは、アユの部屋。まぁ、暇になったら、アユの部屋に行けば誰かいるから。少なくとも、アユはいるし」

 俺は、家に向かいながら言う。

「で、今向かってるのは、元女中の家。家って言ったら、そこのこと。改装はしてないけど、家具は一式変えてるから、あまり女中の家って感じはしないと思う。普段は、そこでご飯を食べたり、風呂に入ったりしてる。まぁ、でも、大体はこっちで過ごしてるかな。別に、好きなところにいてくれていいけど」

 二人は、頷きながら聞いている。

「とりあえずは、こんなもんかな。あ、スマホ持ってる?」

「持ってる」

「じゃ、兄弟チャットに招待するから、連絡先教えて」

 俺は、二人から連絡先を教えてもらい、兄弟チャットに招待しておく。

「大体の連絡は、ここに入るから。個人宛も結構使うことには使うけど、連絡先は……こっからわかるから、問題ないよな?」

「うん……」

「気になったことあったら、誰かに訊いて。全員、それなりには答えてくれるだろうし、誰に訊くのがいいかも教えてくれるだろうから」

「わかった」

 そんな話をしているうちに、家に着く。

「今日の昼、何?」

「オムライス。卵の固さ、どのぐらいがいい?」

「アキの気まぐれで」

「二人は?」

 彰は、俺の後ろについてきた薫と栞を見ながら言う。

「同じで」

「カケと?」

「はい」

「了解。カケ、他のメンツは、どんな感じ?」

「これから連絡するけど、まだ早い?」

「いや、してくれていいけど、焼きあがるのは、一人ずつだから、順番に来てくれると嬉しいぐらい」

「伝える?」

「いや、いい」

「わかった」

 俺は、兄弟チャットに、昼ご飯を食べに来るよう、連絡を入れる。

「これから全員集まる。名前だけ言ってもらうから、そのつもりで」

「うん」

「好きなところ座ってくれていいよ」

 俺は、二人分の座布団を取りに、二階に向かう。押し入れから座布団を二枚取り、下に戻る。居間に戻ると、それなりに集まってきていた。薫と栞は端の方で小さくなっている。その辺の空いているところに座布団を置き、二人のところに向かう。

「なーに、縮こまってんだ?」

「別に縮こまってるわけじゃ……」

「わけだよな。ま、何でもいいけど。とりあえず、こっち来い」

 俺は、近くに会った座布団に座り、その隣をたたく。

「部屋、どうしたい? 俺たちは一人一部屋使ってるけど、二人はどうする?」

「一人がいい」

「誰の隣がいいとか、あるか? まぁ、何も知らないときに訊いても、わからないと思うけど」

「薫の隣は、嫌だ」

「端がいいとかは?」

「それは……、どっちでもいい」

「俺は、できれば端がいいなぁ」

「了解」

 全員が集まり、順番にご飯ができていくため、順番に食べていく。食べていないメンツから順番に、名前を言っていく。

「まぁ、なんとなくで呼んでくれたら、わかるから」

「うん」

「部屋はどうするんだ?」

「そのことなんだけどさ……」

 両親が出てきてすぐにいなくなってしまったと思ったら、次は弟妹です。一応、正真正銘の弟妹です。どうやって過ごしていたかは、またどこかで書きたいです。名前を決めるのに、結構時間がかかりました(漢字一字で読み仮名三文字の好きな名前を探すのに……)。

 歩がいろんな意味で寄りかかれるのは翔だけです。翔が寄りかかれる人は今のところいないですね。歩は寄りかかってほしいと思っています。


 次回は、 冬休み 7 です。

 そろそろ、冬休み終わらないかなと思ってます。3カ月も冬休みですよ? 実際だったらうれしいですけどね。

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