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42 ~冬休みの予定~

 それから、それなりに充実した日常を送っていると、冬休みが近づいてきた。


 冬休み一週間前。

「翔、冬休み中の予定、歩さんたちとかの分も含めてまとめておいてくれるか?」

 学校からの帰宅途中、後部座席に座っている冬馬様に言われた。

「いつまで、ですか?」

「できれば、明日か明後日ぐらいに父さんと話したいから、それまで。紙に書いておいてくれると嬉しいって」

「わかりました」

「あと、その話し合い、翔にも来てほしい」

「……俺だけですか?」

「とりあえず、翔だけ」

「わかりました」

 ちょうど本屋に着き、俺は、晴さんに礼を言って車から降りる。まっすぐ本屋に入り、兄弟チャットに冬休み中の予定を共有カレンダーに入れておくように指示を出しておく。

 普段から、予定は共有カレンダに入れておくようには言ってあるが、結構当日になってから予定を思い出すこともある。しかし、今回は当主様たちに出すため、今ある予定はすべて入れておいてほしい。

 ロッカー室に入り、荷物を置く。上着を脱いでハンガーにかけ、ウエストポーチをつけて、ロッカー室から出る。在庫の確認をしてから倉庫を出て、一階のレジに向かう。

「こんにちは、舜さん。拓真さん、どこにいるか知ってますか?」

「ごめん、わからない。さっき、深司さんと何かを話して、出て行ったことだけ確認したけど……」

「深司さんは、どこにいるか知ってます?」

「上。三階かな」

「ありがとうございます。それじゃあ、ここをお願いします。深司さんに訊いてくるので」

「わかった」

 俺は、階段を上り、三階のレジに向かう。舜さんが予想した通り、三階のレジに深司さんはいた。相変わらず、小説を読んでいる。

「深司さん。拓真さんって、どこに行ったんですか?」

「ん? あぁ、翔か。拓真さんは、今、本家に戻ってるけど、晴さんから聞いてない?」

  完全に、本の世界に入ってたな。お客さんがいても気づいてないやつだ。

「聞いてないですね。年末の予定ですか?」

「多分な。俺は、あまり関わらないから全然知らないけど」

  そういや、この後何すればいいか聞きに来たんだった。

「あ、そういえば……」

「俺に予定についてなんか言っても、意味ないからな」

「言う気はありません。何か、伝言もらってもせんか?」

「えーっと……。なんか言ってた気がするけど……忘れた」

「何やってるんですかっ」

「……うーん……。……あ、そうそう、明日発売の漫画の新刊にビニール掛けしておいて、って伝えてって言われた」

 深司さんは、数分経ってから言った。

「わかりました。……ちゃんと、お客さんの相手はしてくださいよ?」

「さすがに、そこまで職務放棄はしない」

「してそうだから言ってるんです」

「うっ……」

 思い当たる節があるのか、深司さんは目をそらす。

「じゃ、ビニール掛けしてきます」

 俺は、見なかったことにして、二階に降り、倉庫に入って明日発売の漫画にビニールカバーをつける。

 その作業をしている間に、拓真さんが帰ってきて、社会人のお客さんも増えてきた。

「おかえりなさい」

「翔君……。あぁ、ちゃんと深司君からの伝言は伝わってるみたいだね」

「深司さんからは何も言われなかったので、自分から訊きに行きました」

「わかってて、深司君に伝えてあったんだよ」

 拓真さんが、フフッと小さく笑いながら言う。

「まぁ、深司さんでよかったです」

「それなら、よかった」

 そう言って、拓真さんは倉庫を出て行った。

 すると、また倉庫の扉が開き、舜さんが入って来た。

「あの、翔君、拓真さんから、ビニールかけるの手伝ってあげてって言われたんだけど……。なにすればいい?」

「ビニール掛けはやったことありますか?」

「ない」

「じゃあ、教えます。こっち来てください」

 俺は、舜さんにカバーのかけ方を教える。最近、俺も深司さんに習ったばかりだったが、深司さんの教え方では全く伝わりそうになかった。

「じゃあ、俺、段ボール持ってきて空けるんで、ここでつけててくれますか?」

「了解」


 その後も、ビニール掛けやら、レジ打ちやら、ブックカバー掛けやらして、帰宅する。

 自分の部屋に荷物を置き、歩の部屋に入る。

「おかえり」

 イスに座りテキストをもっていた歩が振り返って、テキストを振りながら言う。

「ただいま」

「どうした?」

 歩は、片手でテキストを閉じ、机に置きながら言う。

「今日、行かないのか? 連絡きてなかったけど」

「あぁ……、まぁ、寒くなって来たし、俺とノゾ的にはテスト近くなってきたから、休みたいなって思ってるだけ。他のメンツは行ってくれてもかまわないけど、とりあえず、今日は何の情報共有もしてないし、休み。それに、予定を聞きたいって言ったの、カケだろ?」

  アユの口から、テストって単語が……。

「まぁ、そうだけど」

「あれを送って来たってことは、カケが知りたいわけじゃないんだろ?」

「冬馬様に、当主様から伝えるように頼まれたって、言われた」

「なぜかわかるか?」

「さぁ? ただ、いろんなところの予定を集めてるっぽいってことは分かってる」

「ふーん。じゃあ、紙に描いたほうがいいのか」

「あ、うん。紙に書いてって言われた」

「了解。準備しとく」

「いいよ、俺がやる。勉強してるっぽいし」

「いや、俺がやる。少し気分転換したい」

「……わかった。任せる」

 歩は頷いた。

「……アユの、冬の予定は?」

「まぁ、一応、受験勉強かな。あ、でも、町内会の大会とかは息抜きに出るかも」

「そっか」

「兄弟練習は……」

「冬休みに入るから、毎日午後まで部活あるだろ? 毎日やつ必要はない」

「だよなぁ。ノゾも毎日じゃなくていいって言ってたし。なんなら、アユは行くなとまで言われた」

「受験生だからな。この時期にケガしたらどうするんだよ」

「別に、ケガしないだろ。普段だってしてないし」

「するかもしれないだろ?」

「カケまで、ノゾみたいなこと言うな」

「考えてることは一緒だってことだよ。……みんなが戻ってきたら、ここ集合?」

「あぁ。チャットに送っとく」

「わかった。それじゃ」

 俺は、歩の部屋を出て自分の部屋に戻る。机に積まれている中で途中まで読んでいた本を取り、ベッドの上に座る。壁に寄りかかり、本を開く。

 それから一時間ぐらい経ち、歩から集まるよう連絡が来た。読んでいた小説のページ数を覚え、読み切った本を本棚に戻し、読んでいる本は机の上に積む。スマホをもって、部屋を出た。出て、すぐ右手にある扉を開き、歩の部屋に入る。

 すでに何人か集まっており、髪の毛が少し濡れているやつもいた。

「風呂、入ったのか?」

「まぁ、汗かいてたし。この後、どこにも行かなかったら、風呂入るよな」

「ミノたちは?」

「まだ」

「そっか」

「あ、まだ予定入れてないやつは入れておけよ。全員集まったら、確認するから」

「「はーい」」

 俺は、歩の隣に腰を下ろす。

「アユがテキストを持ってるなんて、珍しい」

 部屋に入って来た、稔が言う。

「別に、勉強が嫌いなわけじゃないし」

「いや、勉強してること自体が珍しい、って話」

「まぁ、そうかもな」

「学校の雰囲気が受験勉強に向いてたら、やらないとなぁって、思うよな」

「今の状態のままでも受験する学校受かるけど、やるなら上位目指したいし」

「頑張れ、って言っておくのが正解?」

「それなりに頑張るよ。ノゾほどじゃないけど」

「二人とも、進路先違うのか?」

「違う。ノゾのほうが上」

「アユの学力があれば、俺が行こうとしてるところも余裕で受かるけどな」

「ノゾだって、受かるだろ」

「アユと同じ考えだよ。やるなら、上位取りたいし。狙うは満点」

「俺も」

「ふーん」

 そんな話をしているうちに全員が歩の部屋に集まる。

「全員集まったな? それじゃ、部活度ことに予定入れてって。町の大会の日程を知ってればそれも」

「はーい」

 皆は円になって座っており、その中央に冬休み期間中の日付がずらっと書いてある紙が置いてある。順番に紙を回しながら記入していく。俺に回ってくる頃には、大体の日付が部活の予定で埋め尽くされていた。俺は、本屋の閉店期間だけ書いて、歩に回した。歩は、望と相談して、予定を書き入れた。

「んじゃ、これ、ちゃんと俺らの予定のほうにも入れといて。……カケ、後、頼んだ」

「了解。サンキュ」

 俺は、歩から紙をもらう。写真を撮って、兄弟チャットに送っておいた。

「この後は、ご飯食べて、そのあとは自由?」

「それでいいだろ」

「じゃ、夕飯の時間になったら教えて」

「もう、食おうぜ」

「別にいいけど」

「じゃ、移動」

 兄弟たちがそれぞれ立ち上がり、部屋から出ていく。

「俺、紙、置いてくる」

「ちゃんと来いよ」

「行くよ」

 俺も立ち上がり、部屋を出る。自分の部屋に入り、机の上に紙を置いて部屋を出た。

「今日の夕飯って、何?」

 家に移動中、彰の隣を歩いていた皐が訊いた。

「ハンバーグ。これから作る」

 彰が答える。

「一人、二つ?」

「自分が食べたい量を自分で作って。焼くから」

「俺は、アキに任せる」

「俺も、いつものサイズでいいんだけど」

「いつものサイズでいいなら、俺が作るけど、普通のサイズがいい人」

 彰が振り返って言う。俺は手を挙げた。他に手を挙げたのは望と稔、亨だけだ。

「じゃ、その四人分は俺が作る」

 家に着き、とりあえず全員リビングに入る。すると、俺のポケットに入っていたスマホが鳴った。俺は、リビングを出て二階に上がってから電話に出る。

「はい。翔です」

「千明です。……あの……、頼みたいこと……があるんだけど……」

 いつもより声が小さく、元気のない声だ。

「何ですか?」

「……掃除を……手伝って……ほしくて……」

「わかりました。どこですか?」

「わ……僕たちの家と……冬期休暇中……地方から来る人が……泊まるところの……掃除なんだけど……。今週末に……表玄関に……集合してほしい……。できれば……人手が……多いほうがいいから……、歩さんたちも……いたら……」

「アユたちは、いつでも空いているとは思いますが、行けるかどうかはわかりません。他は、後で確認します」

「うん……、お願い」

「土曜日と、日曜日のどちらもですか?」

「うーん……、土曜日に……終わらなかったら……日曜日も……かな……」

「わかりました」

「それじゃ……切るね」

「千明様、何かありましたか?」

「……何が……?」

「いつもより、元気がないと感じただけです」

「あ……、それは……、冬馬兄さんが……近くにいないから……だと思う。……元気がない……わけじゃない……から」

「そうですか」

「それじゃ……、ね」

 千明様側から、電話が切れた。俺は、スマホをポケットにしまいながら、下に降りる。リビングに向かう途中の台所で、みんながせっせとハンバーグを作っているのが見えた。

「誰から?」

 俺がリビングに入ると、ふすまに寄りかかりスマホをいじっていた亨が俺を見上げながら言う。

「千明様」

「なんだって?」

 今度は稔が訊いてきた。

「掃除、手伝ってほしいって」

「いつ?」

「今週末」

「土曜? 日曜?」

「土曜に終わらなかったら、日曜も、だって」

「俺らも手伝うのか?」

「とりあえず、空いてる奴は全員連れていくつもりだけど」

「あ、そ」


 翌日。

 バイトには行かず学校から帰ってきて、自分の部屋に荷物を置く。学ランを脱いでハンガーにかけ、バッグの中から筆箱を取り出し、兄弟の予定が書いてある紙を持って、部屋を出る。

  昨日のハンバーグ、うまかったな。さすが、アキ。

 そんなことを考えながら、当主様の部屋に向かう。

  ……気配がないな。どこにいるんだ?

 当主様の部屋の前で立ち止まっていると、廊下の曲がり角から冬馬様と千明様がやって来た。

「あ、悪い。伝え忘れてた。大広間に集合になったから」

 冬馬様がこちらにやってきながら言う。

「わかりました」

「一緒に行こう。僕たちもこれから行くところだから」

 歩き出そうとしたら、千明様に言われた。何も変わらない、いつも通りの千明様だ。

  本当に、冬馬様がいるかいないかで変わるもんなんだな。

「今日って、誰が来てるの?」

 千明様が、冬馬様を見上げながら言う。

  千明様、知らないんだ。

「……父さんと、晴さんと……、大輝さんも来るって言ってたな。兄さんは、来ないけど」

  大輝さんがいるのか。ずっと名前だけは聞いてたけど、会うのは初めてだな。

「そっか」

 大広間に着き、俺が扉をノックして名乗る。当主様の返事が返ってきてから扉を開け、先に、冬馬様と千明様を入れる。最後に俺が入り、扉を閉める。中には、当主様と晴さんと、淳さんと知らない人が一人いた。淳さんよりも少し背が高く、顔は少し似ている。

「君が、翔君か。俺、大輝。聞いてると思うけど、淳の兄だから。よろしく」

 知らない人が、俺の前までやってきて言う。

  俺より、少し背が高いくらいか……。

「よろしくお願いします」

「そっか。初めてか。もう、会ってるもんだと思ってた」

 向こうのほうから晴さんの声が聞こえた。

「紙、もらうよ」

 俺は、大輝さんに紙を渡す。

「それじゃあ、座って」

 大広間の中央にあるローテーブルを七人で囲む。晴さんと冬馬君と千明様の正面に大輝さんと淳さんと俺が座り、晴さんと大輝さんの間に、当主様が座る。

「進行は大輝君に任せるよ」

「わかりました」

 大輝さんが話を進めていく。普段からやっていることなのだろう、とても進め方がうまい。

  俺の評価基準だから、実際のところどうかわからないけど……。

 俺は、話を振られたときに話す程度で、ほぼ話を聞いているだけだった。

  まぁ、冬馬様とか千明様の予定を聞いておくのは大事だからな。

「それじゃあ、この方向で予定決めておいて。決まり次第、連絡頂戴」

「わかりました」

 当主様、晴さん、冬馬様、千明様がそれぞれ立ち上がって大広間を出ていく。

「さてと、翔君、残ってくれる?」

 大輝さんが俺と淳さんの向かい側に移動しながら言う。

「わかりました」

  どうせ、淳さんから聞いてるんだろうな。……俺も、大輝さんを知っていたように。

「俺は、戻って……」

「いいわけないだろ。翔君にも残ってもらうんだぞ?」

 淳さんが立ち上がろうとしたのを、大輝さんが目力で制す。

「まぁ、そうですよねぇ」

  淳さん、いつもよりリラックスしてる気がする。……あぁ、大輝さんがいるからか。

 大輝さんは、先ほどの話し合いの中でメモしていた紙と、全員の予定表を俺たちの前に広げる。

「で、俺らは、何すればいいの?」

 初登場大輝さん。ずっと名前は出ていましたが、やっと翔の前に現れました(避けていたわけではないんですけどね)。淳さんも翔と二人の時ではしなさそうな言動があって、やっぱり兄弟なんだなと思いました。

 冬休みにまで部活やるとか、僕には考えられない世界でした。


 次回は、 登場人物紹介 翔編 です。

 やっと来た主人公(本当はもっと後にやりたかった主人公……)。

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