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27 ~野球部との練習試合 前編~

「大丈夫です。それよりも、早く向かったほうがいいんじゃないですか?」

「はい」

 結局、後ろに歩と望が座り、中央に俺と稔、助手席に千明様が座った。

「そんなに話し込んでたの?」

 自分の荷物と、暁の荷物を抱えて隣に座っている、稔が言った。

「まぁ、それなりに」

「ふぅん」

 あまり、興味のなさそうな声が返ってきた。

「ポジションは、決めた?」

「七人だろ? ……まぁ、大体は決まった」

「まぁ、結構ばらばらのポジションだからね。普段やってるところが」

「いつも通りいけばよくね? サツがピッチャー、タツがキャッチャー。レフトとライトとセンターは……。外野はサトとスグにしておけばいいだろ」

「あいつらな。外野をやらせたら、右に出る者はいないと思う」

「で、残りが、内野陣でアユ、ノゾ、ミノだろ。ノゾがファースト、アユがセカンド、ミノがサードになるな」

「カケはやらなくていいの?」

「さっき、アユの言っていた七人の枠に入ってなかったし、サトたちじゃないんだから、わかるだろ?」

「まぁ、そっか」

「それに、やったとしてもどこに入るのさ。七人でも、全部カバーできるだろ?」

「サトとスグが喧嘩でもしだしたら?」

「ミノがいるし、アユもノゾもいるんだから、問題ないでしょ」

「本当に止まらないようだったら、カケがセンターに入ってよ?」

「面倒だな。喧嘩しないよう、祈っておくか」

「いつも祈っとけよ」

 あきれた口調で稔に言われた。

「あいつらは、やりだしたら止まらないからな」

「あの二人と同じクラスにだけはなりたくない。二人とも一緒にじゃなかったらいいけど」

「体育が同じなだけでも嫌になるのに、教室までって言ったらもう、その一年は終わったなって感じるだろうな」

「実際になったことはないからね」

「俺らはならないから、気が楽だな」

 俺と稔の会話を後ろで聞いていた、歩が言う。

「留年したら?」

 稔が訊く。

「留年するような成績も、欠席数も、取る気がないから無いかな。というより、そんな点数取ったら、父さんたちになんて言われるか。ねぇ」

 望が言った。

「確かに、父さんたちにも、当主様たちにも顔見せできなくなるな」

 そのあとは、千明様や晴さんも加わり世間話をしていたら、いつの間にか学校についていた。

――ここで、野球のポジションについて紹介しよう。

 まず、ピッチャー。投手とも書く。野球場の中で一番高い位置にある、マウンドというところにいて、ボールを投げる人。肩が強かったり、球が速いのはもちろんのことで、他に、コントロールがいい人が適任。精神力もそれなりにないと難しい。この人がいないと野球というのは始まらない。

 次に、キャッチャー。捕手とも書く。ピッチャーが投げたボールを取る役目を持っていて、バッターの癖などから、どう打ち取るかを決めるため、周りが見えていて戦略が立てられる人が適任。肩が強かったり、コントロールが良かったり、ボールに対して恐れない人がいい。。

 次に、内野陣。一塁……キャッチャー側から見て、一番右側にあるベースの近くにいるのが、ファーストと呼ばれる人。一塁手とも書く。一塁手は、どんなボールでも取れる人が適任。背が高い人や、大柄な人が有利。内野の中では、ファーストだけが左利きが有利。

 次に、二塁……キャッチャー側から見て、真ん中にあるベースの近くにいることが多いのが、セカンドと呼ばれる人。二塁手とも書く。二塁手は、仕事が多く、守備範囲も広い。様々なバウンドをするボールなどに過敏に反応できる人や、一瞬で状況判断ができる人、素早く何でもできる人が適任。

 次に、三塁……キャッチャー側から見て、一番左側にあるベースの近くにいるのが、サードと呼ばれる人。一番強い打球が飛んでいきやすいため、ボールに怖がらない人が良く、素早く前に出られる人が適任。肩が強いほうが有利。

 次に、二塁と三塁の間にいるのが、ショートと呼ばれる人。遊撃手とも書く。セカンドと似たような人が適任であり、セカンドよりも肩が強い人がよい。

 次に、外野陣。内野陣よりもさらに遠くにいる。キャッチャー側から見て左側にいるのがレフトと呼ばれる人。左翼手とも書く。打球の落下地点を瞬時に判断し、確実に捕球できる人が適任。肩が強く、コントロールの良さも大事。

 次に、キャッチャー側から見て中央にいるのがセンターと呼ばれる人。中堅手とも書く。外野陣の中では一番守備範囲が広い。足が速く、打球への判断力も大事。外野手のポジショニングを調整するために広い視野を持っている人が大事。

 最後に、キャッチャー側から見て右側にいるのがライトと呼ばれる人。右翼手とも書く。一塁のカバーのために毎度走れる人や、肩が強い人、送球が正確である人が適任。

 とまぁ、こんな感じだ。――

「ありがとうございました」

 全員が車から降りると、代表して歩が晴さんにお礼を言った。

「良いんだよ。ここ最近は本当に何もなくて暇だから。仕事ができたほうが逆にうれしい」

 歩と望は自分の荷物を持って野球部のグラウンドに向かい、稔は、皐と暁と自分の荷物を持って、その二人と連絡を取りながらどこかに向かって歩いて行った。

「翔君、終わったら連絡頂戴。できれば、人数も教えて」

 三人を見送ってから、晴さんが言った。

「分かりました」

「それじゃ、千明君のこと、よろしく」

「はい」

 晴さんはそう言って、運転席に乗り込み、車を発進させた。

「あの、翔君。歩さんたちに飲み物とかって、もっていかなくていいの?」

 晴さんを見送ると、千明様が俺を見ながら言った。

「自分たちで何本か持ってきてるので、大丈夫ですよ。月に一度、三箱くらい買ってますから。親が」

「なるほど。……」

  何か言いたそうだな。今の話の流れ的には……。

「買いに行きますか? 飲み物。学校なので、自販機に売っているものなら買えますけど」

「買いに行きたい。お金は持ってる」

  千明様が、お金を持ってるっていうと、大金のほうを考えちゃうんだよな。今、話してるのは小銭のほうなんだろうけど。

「どこの自販機がいいですか?」

「うーん、テニスコート近くのがいいかな」

「好きなものでも売ってるんですか?」

「よく飲むものが売ってる」

「そうなんですね。それじゃ行きましょうか」

「歩さんたちのところに行かなくても、大丈夫?」

「連絡しておけば大丈夫です」

 俺は、ポケットからスマホを取り出しササっとメールを送り、千明様とテニスコート近くにある自販機に向かう。

  トオとアキ、居るかな? まぁ、居るでしょうけど。部活をやってれば。

「そういえば、テニス部って誰か入ってるの? 部活動見学行ったよね?」

 自販機に向かっている途中、千明様が思いついたように言った。

  俺の思考、読まれてるのかと思った。

「いますよ。二人」

「じゃあ、練習してるかな?」

「してると思います。サボってなければ」

「それは、そうだよね」

 テニスコートの横を歩いていると、突然、ヒューとボールの降ってくる音がした。見上げると、真上からボールが落ちてきていた。

  こんな高いネットを超すようなボールを打てるやつ、そうそういないと思うんだけど。

 と、思いながら、落ちてきたボールを片手でキャッチする。

「テニスボール?」

 千明様が俺の持っているボールを見ながら言う。

「はい」

「戻しに行く?」

「いえ、多分取りに来ると思うので、持ったまま動いたほうが迷惑になるかと……」

「そっか。じゃあ、待ってようか」

「そうですね」

 少し待つと、テニスコートから見覚えのあるユニフォームを着たやつが出ていた。

「あ、カケ―。ありがとう」

 ボールを取りに来たのは、亨だった。

「誰が飛ばしたんだ?」

「俺。だから、取りに来た」

 亨が、そう言いながら左手を出してきた。

「そんな外すようなボールを打ったのか?」

 俺は、亨の手のひらにボールを乗せる。

「アキのボールが強すぎたんだよ」

 亨が、右手を振りながら言う。

「それは分からなくもない。というより、アキと戦ってるって、なんの練習してるんだ?」

「シングルスの試合」

「試合で場外まで飛ばすのか?」

「アキの強いボール受けすぎて、手の感覚が一瞬なくなってさ、そしたら飛んでった」

「なるほど」

「あ、そだ。なんか飲み物買ってきてくれない? もう切れた」

「スポドリの粉ならあるけど、それじゃダメ? っていうか、マネージャーがいるだろ。どうしたんだよ」

「マネージャーは今、他のことやってんの。粉があるなら欲しい。何個持ってる?」

「四つ」

「なんでそんなに持ってんだ?」

「使うかなーと思って」

「さすが、カケだな。二個頂戴。俺とアキの分」

 感覚が戻ってきたのか、右手を差し出してきた。

「アキもないのか?」

「うん」

「はぁ……はい。自分で作ってよ」

 俺は、バッグの中からスポーツドリンクを作れる粉を二つ取り出し、亨に渡した。

「了解。ありがと。……千明様、待たせてしまって申し訳ございませんでした」

 亨が、俺の後ろに隠れている千明様に頭を下げる。

「あ……うん。大丈夫。部活、頑張って」

 千明様は、話しかけられると思ってなかったのか、たどたどしくなっていた。

「はい。失礼します」

 亨は、そんなことも気にせず返事をして、テニスコートの入り口に走っていった。

「翔君、なんで僕こんなに謝られてるのかな?」

「申し訳ないことをしたと思ってるからじゃないですか?」

「そうなんだけどさ……」

「何、飲みますか?」

 俺は、目の前にある自販機を見ながら言う。

「え、あ……自分で買うからいいよ」

「そうですか」

 俺は、自分の飲み物を一本買う。そもそも飲み物を多くのまないため、一日一本でも事足りる。

「カケ―」

 千明様が飲み物を買い、野球部のグラウンドに戻ろうとすると、後ろから声がかかった。多くの運動部の部室がある方からだ。

「なんでここにいるの? グラウンド、真反対だけど?」

「飲み物、買っていこうと思ってたんだよ」

 俺が訊くと、暁が答えた。

「スポドリ、ここにないけど? 水もないし」

「仕方ないから、他のを買おうと思ってたけど」

「その反応だと、カケ、持ってる?」

「粉でよければ、二つ」

「頂戴。ダッシュで部室に戻って作ってくる」

 暁が言う。

「一人分でいいのか? サトのために三人で動いてるとも思えないんだけど」

「さすがカケだな」

「サツの分も頂戴」

「今、すぐに飲みたい感じ?」

  これ以上試合のスタートを遅らせるわけにはいかないよな。連絡はしてあるけど。

「いや、試合の途中でいい。もうなくなったから、補充したいだけ」

「ふーん……。千明様、俺が補充してきていいですか?」

 俺の後ろに隠れている千明様のほうを見ながら言う。

「え? うん。いいけど……」

「サツがいるので、周りは感知できます。早めに試合を始めた方がいいかもしれないので、この三人と先にグラウンドのほうに行っててもらっても良いですか?」

「僕はいいけど……」

「あ、この三人のことは気にしなくていいです。サト、バスケ部の部室ってまだ空いてる?」

「お、おう。マネージャーが残ってるはずだ」

 暁は半分以上話の流れに置いて行かれていたけれど、答えてくれた。

  まぁ、質問しか聞いてないんだと思うけど。質問が返ってきてるなら、俺としては、問題ない。

「言ったら、中に入れていくれるか?」

「俺とサツの名前を出せば、多分……」

 皐が言う。

「了解。空いてる水筒、頂戴」

 俺が手を出すと、二人はそれぞれのバッグの中を漁りだし、水筒を出した。

「はい」

「それじゃ、千明様のことよろしく」

「早く戻ってきてくれよ」

「まぁ、マネージャー次第かな」

「確かに」

 俺は、二人から水筒を受け取り、皐たちに千明様のことを任せ、バスケ部の部室に向かう。

  三人か?

 部室の扉は閉まっていたため、中の気配を探り人数を数える。

「すみませーん」

 俺は、扉に向かって言う。

「はーい」

 すぐに、女子生徒の声が聞こえ、扉が開いた。

「相川君?」

 マネージャーと思われる人に、俺の顔を見た瞬間に言われた。

  俺たちって、そんなに似てるかな? 似てるって言われたこと、ほぼないんだけど。

「でも、それだったら挨拶しないよね?」

 部室の中に座って、ユニフォームをかごに入れていたマネージャーが言う。

「えーっと……」

 扉を開けてくれたマネージャーが、俺を見ながら何を言おうか迷っている。

「皐と暁の兄弟です」

 なんとなく気まずい雰囲気が出てきたため、とりあえず言ってみた。

「何か御用ですか?」

「二人の水筒に水を入れてほしいのですが……」

「水でいいんですか? いいですよ」

「でも、二人って、水だけじゃ飲まないよね?」

 机で何かしら作業をしているマネージャーが顔を上げて言う。

「あ、これ、一緒に入れてください」

 俺は、バッグからスポーツドリンクを作れる粉を出して、マネージャーに渡した」

「じゃ、ちょっと待っててね」

「何か、手伝いましょうか?」

「いいよ。マネージャーの仕事だから」

「分かりました。待ってます」

 数分待つと、蓋が閉まった状態で水筒を渡された。

「ありがとうございました。失礼します」

 そう言って、礼をしてから、俺は野球部のグラウンドに向けて歩き出す。

  もう始まってるか? 試合。 まぁ、なんでもいいや。

 少し早歩きで、グラウンドに向かう。試合はまだ始まっていなかった。俺はグラウンドに入り、兄弟たちのいる三塁側のベンチに行く。

「まだ始まってなかったのか?」

 兄弟たちが固まって話しているところの間に入りながら言う。

「おう。ポジションとか打順とか、向こうが決まってないから、待ってる状態」

 俺の質問には、樹が答えた。

「タツとスグが抜けたら、決めなおさなきゃいけないってことだよな?」

「なんでもいいんじゃねぇの?」

「で、こっちのポジションは?」

「ミノに伝えたけど……。まだ、伝えてなかったのか?」

 俺は、稔を見ながら言う。

「あれで決めたのかわからなかったし」

「俺は、あれで決定のつもりだったんだけど」

「それ、俺らにも教えて」

 話の決着がつきそうになかったのを見越したのか、傑が訊いてきた。

「えっと……。ピッチャーがサト、キャッチャーがタツ、ファーストがノゾ、セカンドがアユ、サードがミノ、ライトがスグ、レフトがサト。異論は?」

「「ない」」

「いつも通りだな。大体」

「スグ、正ポジがセカンドじゃないことバレるけど、大丈夫なのか?」

 暁が訊いた。

「バレたところで何か悪くなるわけじゃないし、別に何でもいいよ。隠してないし」

 傑は何ともないといったような感じで言う。

「まぁ、ライトは肩が強くて送球のコントロールがいいやつがなるからな。普段部活でやってるポジションとは、結構離れてるよな」

「つーか、部活だとセカンドやってんだ?」

 またも、練習試合まで行けなかったです……(予定通りに話が進むことって、あるのか……。あったらいいなぁ)。

 野球のポジションの説明はしましたが、もっと詳しく知りたい方は自分で調べてみてください。今では、あまり地上波で見れませんが、時々、地上波でやっていたりするので本物の試合を見るのも楽しいかと思います(高校野球でよければ、春と夏の甲子園がやってたりします)。


 次回は、 野球部との練習試合 中編 です。二週間後です。

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