表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/120

22 ~長い休日 4~

 本編です。

「今いるメンバーは全員集まったぞ」

 望が言った。

「そんじゃ、誰から行く?」

「晴樹君と夏樹君は、誰が分からないの?」

 歩が隣に座っている二人に訊いた。

  無神経すぎんだろ。

「えーっと……」

  ほら、答えづらそうにしてるじゃないか。全く。

「アユ、無神経すぎるから。応えられないに決まってるだろ。そんな質問」

「だって、誰を知らないか、俺らじゃ分からないだろ?」

「それでも、本人の前で知らないとは言えないだろ」

「そう? 俺、普通に訊くけど」

  訊かないから!

「じゃあ、もう、アユとノゾと俺以外全員」

 俺は、歩の説得が面倒になり投げやりに言う。

「誰から言う?」

「誰でもいいよ」

「サツ?」

「そっちの端から順番のほうが、いいんじゃ?」

 兄弟たちが話し合っている。

「順番、誰からがいい?」

 この状況が一分ぐらい続いたところで、歩が飽きたのか、早く抜け出したいのか隣に座っている晴樹君たちに訊いた。

  まだ、無神経な! 少しぐらい待てよ。

「えーっと、誰からでも」

  困ってるじゃないか。

 晴樹君たちが応えづらそうに言う。俺が内心頷いていると、歩がガクッとうなだれる。

  いや、その応えは待ってなかって態度で表しても、変わらないから。

「サツからでいいよ。年齢順」

  飽きたんだな。

 話し合うことなどそうそうない、歩からしたら長い時間だったのだろう。俺や七つ子たちは、絶対譲らないという顔をしているし、これ以上の話し合いを覚悟している。慣れているからだろう。

  慣れは大事だな。

 歩から指令を受けた、皐から年齢順に名前を言っていく。

「声とか、顔とか似てて分かりづらい……」

「覚えるのに結構時間かかるかも……」

  へぇ、似てるんだ。今まで、言われたことなかったな。声も含めて。

「間違えてもいいよ。全然問題ないから」

「誰が呼ばれてるか分かればいいし」

「間違えたところで、何かがあるわけでもないしな」

「これでも、半分ぐらいしかいないけど」

「覚えられるように頑張る」

「うん」

 晴樹君と夏樹君が、気合を込めて言う。

「それで? これだけじゃないんでしょ。呼び出した理由は」

 俺の隣に座っていた稔が歩を見ながら言う。

  そういえば、アユからの呼び出しってことになってたな。

「正解。ちょっと相手しといて。話し合ってくるから」

「なるほど。それで、仲良くなっておくっていうか、……名前を知っておかないとっていうことね」

  さすが、理解が早いな。ミノは。

「正解。それじゃ、よろしく」

 歩が立ち上がる。

「どこで伝えるの?」

「カケの部屋で良くね? ノゾのとこ行く?」

「カケのとこでいいよ。俺らが入れないほど汚いとは思えないし」

「さっき入ってきたじゃんか」

「そうだね」

「それなら、先にご飯作っておこうか?」

「その手があったな。じゃあ、向こうに移動して、作っておいて」

「了解。晴樹君たちは、こっちで食べるの?」

「分からない」

「冬馬様達に訊いてくる?」

「僕たちが訊いてくるから、先に行ってて」

「二人が食べるかどうかわからないと、作る量が変わってくるから……」

「二人分多く作っておけばいいだろ。食べなかったら、俺らが食べればいいんだから」

「食材も二人分多く買ってきてるし、作っちゃっていいよ」

「分かった」

「サツだけ、ついて行って。晴樹君たちに」

「まだ、言われた期間じゃないだろ」

「話してるところに慣れてほしいからだよ」

「じゃあ、サツ、一緒に行け」

「……了解」

 歩に言われたのが効いたのか、皐は、渋々頷いた。

「じゃあ、晴樹君たちは、サツを一緒に連れて行って」

「分かった」

「うん」

「じゃ、それぞれ分かれて」

 歩の号令で、それぞれ立ち上がり自分の持ち場に向かう。

「もう、ここで話してくれていいよ。移動するのも面倒だ」

 立ち上がったままだった歩がその場に座りながら言う。

「確かに」

「サツ、連れて行っちゃったけど、大丈夫?」

「まぁ、ほぼ俺が話してたし、サツも俺が話してくれって言ってたからいいんじゃないか? サツがいないと説明に困るっていうこともないし」

「じゃあ、いい。で、どうなったんだ?」

 望に訊かれ、俺は先程の会話を頭の中で整理しながら、順序だてて歩と望に説明する。

「なるほどねぇ……。ノゾ、買い物大丈夫?」

「まぁ、いつかは慣れないといけないんだし、俺らより場数を踏んでるサツかカケがついてくれるなら、なんとか……」

「場数を踏んでるって言ってもねぇ……。サツはほぼ俺らと同じだぞ?」

「それでも、やっぱ、慣れって大切だろ? サツは慣れるのが早い方だし」

「どっちがつくことが多くなりそうなの?」

「そこらへんは話し合ってからだな。部活とかの関係もあるし」

「その都度決めるってことだな?」

「まぁ、そうなるね」

「ご飯は、どっちで食べるんだ?」

「誰が?」

「千明様だよ」

「気づかなかった」

  緊張で、いつものように頭が動いてなかったから……」

「訊けるか?」

「さっきの今だからなぁ。訊けないことはないけど……」

  訊きづらいよねぇ……。

 すると、俺のスマホがブブッと鳴る。スマホをポケットから取り出し、画面を見る。皐からのメールだった。

「なんだって?」

 望が言う。

「千明様のご飯、俺らと食べるって」

 俺は、皐から来たメールの半分を読み上げる。

  もう半分は……サツからの苦痛の声だから、読み上げる必要がないな。

「それは、また難易度の高い……」

 歩が顔をしかめて言う。

「そうでもないよ。千明様だし」

  どっちかって言うと、冬馬様のほうが一緒にいるのが大変だと思う。

「それは、どういう意味だ?」

「どうって……、千明様のほうが難易度は低いってことだけど?」

「冬馬様は?」

「冬馬様は……、二人でいると緊張する」

「雰囲気の問題か?」

「まぁ、そうだね。千明様といるとやわらかいけど、俺と二人とかだと、結構固い。話しかけやすさとかもあるし」

「まぁ、カケの見る目はいいから、そうなんだろうけど」

「っていうか、冬馬様と二人きりになったことあるのか?」

「それは、どういう意味?」

  そこまで交流がないノゾが知ってるはずがないけど……。冬馬様の性格なんて。

「冬馬様が千明様から離れることが考えられないというか……」

  結構、分かってんだな。ノゾ。

「そういうことね」

「どういうこと?」

 案の定、歩は分かっていなかった。

  そうそう分からないよ。

「で、どうなの?」

 望は、歩を無視して俺に訊いてくる。

「体育で持久走やったでしょ? その時」

「サトとスグがいただろ」

「あー、あの二人はいたけど、結構離れた場所に放置してたから。それで」

「なるほど」

「それで、千明様のほうが楽だったと」

「そ。それに、二週間、夜はずっと一緒にいるんだから、慣れるっしょ」

「最後のほうは慣れていたいと思うね」

「皆だったら、慣れてるよ」

「カケが言うなら、そうなるだろうね」

「つーか、慣れてもらわないと、俺が困る」

「何で?」

「毎回のように、俺を連れて行かないと話もできないようじゃ困る」

「さすがにそれは、脱出しないとな」

「冬馬様達も同じだけどさ。俺が毎回通訳できるとは限らないんだから」

「冬馬様達も同じ?」

「聞いただけだから、本当かどうかは分からないけど……」

「分からないけど、なんだ?」

「まだ一緒にいる時間が少なすぎるから、千明様と二人きりにはできないって。俺以外」

「それ、さ。今回の頼みって、ほぼカケが一緒についてないといけないってことじゃないか?」

 先程まで、話についていくことをあきらめていた歩が、気づいてはいけないものに気づいてしまったような顔をして言う。

  アユにしては、鋭いな。も、もちろん、俺は分かってたけど。

「まぁ、別にいいし、分かってて受けてる」

「ほんと? 無理してない?」

  アユがノゾ化してる……。

「してない。サツにも、練習はしてもらおうと思ってるし」

「どんな?」

「カケの練習は結構きついからなぁ。サツがつぶれないか心配」

「サツもそう簡単につぶれない方だけど、カケだと、サツが心配になる」

「そんなことしないし」

「どんなことするんだ?」

「まだ、慣れてる晴樹君たちと一緒にいること」

「あ、そのぐらいなら……」

「油断できないけどな。どこまでの負担になるのかは、本人しか分からないから」

「確かに……」

「そういえば、今行かせてるけど大丈夫かな? サツ」

「ああいうところで、緊張で倒れるような奴じゃないって分かってるでしょ」

「それは、そうだけど」

「大丈夫だよ。話す必要がない時に、話さないでしょ」

「話してたとしたら?」

「まぁ、意見は訊かれててももおかしくないと思う」

  さっきの苦痛の声は、多分、意見を訊かれたんだろうな。

「大丈夫なのか?」

「二人とも心配しすぎでしょ。もう少しは、サツを信じてやりなって」

「いや、信じるけどさ……。心配だろ?」

「それは、二人が冬馬様達と話したことがないからだよ。そんな悪い人たちじゃないから」

「そのぐらい分かってる」

  アユは分かってなさそうだなぁ。ノゾは分かっててもおかしくないけど。

「分かってるなら、心配しなくてもよくね? 伝えたいことは全部伝えたから、向こう行こうよ」

「そうだな」

「移動するか」

 三人で歩の部屋を出て、いつもご飯を食べている家に移動する。

「全員に伝えるのか? このことは」

「一応全員に伝える。晴樹君たちは聞いてると思う?」

「どうだろ。知らないってことはないだろうけど」

「やっぱり?」

「後で訊いてみればいいんじゃないか? 影響されないわけじゃないんだし、当事者なんだから。知っておかないと困るでしょ」

「そういうことを考えるのは、当主様の仕事だよ」

「そうだな」

「俺たちが何を考えていても、結局は意見の一つでしかないわけだし、決定権があるのは当主様だし」

「カケ、サツたち、まだ冬馬様達のところにいる?」

「さぁ? ……調べろってこと?」

「そうだよ」

「分かってて訊いたでしょ」

 俺は二人から散々に言われ、仕方なく、ため息を吐いて、冬馬様達の部屋がある方に気配を感じる範囲を伸ばしていく。

  一、二、三、四、五、六……。

「いると思う」

「何人いるんだ?」

「同じ部屋に五人の塊、他の場所に一人」

「他の場所に一人っていうのは、優斗様のことだよね?」

「多分」

「まだ、いそうだな」

「だから、そう言っただろ」

「そうだけどさ」

「あ、移動してる。三人」

「じゃあ、いたんだろうな」

「待ってるか?」

「結局向こうで会うし、混雑するから先に行っておいた方がよくね?」

「そうだね」

「いや、サツが耐えてるかどうか……」

「だから、大丈夫だって」

「サツも気づいてるだろうから、待っててもいいかもしれないね」

「カケも言うなら待ってようか」

「俺は、先に行ってるぞ」

「俺も」

「カケが待っててもいいって言ったんじゃないか」

「俺が待つとは言ってない」

「確かに、そうだけどさ」

「ノゾだけ待ってればいいんじゃない?」

「ひどいな」

「俺は行ってるから、好きにして」

 俺はそう言いながら、裏玄関で靴を履く。

「あ、ちょ」

「俺も行ってる。別にサツのこと心配じゃないし」

 歩も靴を履く。

「そうか……」

 結局望は、皐たちを待つことにしたらしく、俺と歩は並んで家に向かう。

「ノゾは、本当に心配性だな」

「アユ、本当に心配してないの?」

「まぁ、サツだし心配しただけ、俺の気力が削られるだけだから」

「確かに」

「それに、ノゾの心配性も、それで助けられたのもあるから、何とも言えない」

「確かに」

「ん~、今日の昼は何かなぁ~」

 歩が手を組んで上に伸ばしながら言う。

「さぁ」

「っていうか、千明様、カケ以外と話せるのか?」

「サトとスグは体育で一緒だから、何度か顔を合わせたことあるし……アユたちよりは、話しやすかったりするのかも」

「そう考えると、買い物とかカケがいないと、辛いんじゃないか?」

「買い物って、いつ行くのかな? 今のままだと夜だけど」

「夜のままでいいんじゃないか? そうすれば、確実にカケがいるし」

「そうだよね」

「そう考えると、晴さんに往復してもらうのかな? 門を通るときは車のほうがいいから」

「歩いて帰るのは少しな……。俺らの気持ちがな……」

「そうだねぇ」

「でも、カケが行くとなったら、ノゾが残っててほしいっていうのもあるよなぁ」

「俺がノゾの代わりになればいいけど、そうもいかないからなぁ」

「何で? カケなら、ノゾのやってることぐらい普通に覚えるしできるでしょ」

「覚えても、ノゾになることはできないから」

「それは、そうだけどさぁ」

「サツが慣れてくれたら、一番早いんだけどねぇ」

「そうだなぁ」

「できるだけ、サツをつけて慣れてもらうか……」

「学校では、カケが絶対つくから、家ではサツでもいいかな」

「まぁ、サツにも部活があるからその時は俺がつくし、試合とかあると俺がつくしかないからね」

「カケばっかり、負担かかってるけど大丈夫なのか?」

「アユがノゾ化してる」

「そんなにノゾ化してない」

「してるっていう自覚はあるんだ」

「うん」

「まぁ、学校とかはいつも通りだから、この敷地内にいるときだけ見ておけばいいってことだろ? そう考えると、そこまで多い感じはしないんだよな」

「やってみないとわかんねぇぞ?」

「そう言っても、俺とサツしかできないんだし」

「それは……悪いと思ってる」

 歩がうつむきながら言う。

「仕方ないじゃん。っていうか、俺が持ってるより、アユたちが持ってた方が日常的に使えると思うんだけどね」

  なんて、俺がこの能力を持ってるんだろうって、何度思ったことか……。

「それは……カケが……。いや、なんでもない」

  ここ最近、こればっかり。アユが隠すことなんてほぼないのにさ。

「詳しくは訊かないけど、いつか教えてよ」

「まぁ、いつかな……」

 二人で、家に入る。

「あ、やっと来た……って、サツたちと一緒じゃないの?」

 台所から居間へおかずを運んでいる途中の亨が廊下に顔を出す。

「あぁ、すぐ来ると思う」

「そっか」

「なんかやることある?」

「ないよ。座ってて」

「了解」

 歩が先に靴を脱いで、居間に向かう。俺も後を追って、居間に入った。

「ここで話すの?」

 俺が居間の床に座りながら言う。

「さっき、カケ、三人来るって言ったよな?」

「……そうだね」

「ってことは、晴樹君たちにも聞かれるってことだから、伝えてはいけないって言われてたとしたら、夜じゃないとだめだな」

「それに、全員揃ってないし」

「今日は、練習日だから夕飯の時かなぁ」

「アユ、説明できんの?」

「そりゃあもちろん。……って言いたいところだけど、多分無理」

「じゃあ、誰がやるのさ。俺はやりたくないよ」

「ノゾに任せるか……。もしくはサツだな。一部始終を知ってるのはかけしかいないけど、まぁ、何とかなるんじゃないか?」

「適当だな」

「それが俺の売りだから」

「確かに」

「カケがやるって言ってくれれば早いんだけどね」

「やだよ」

「まぁ、後でノゾとサツと話してから決めるか」

「えぇー、それ、絶対俺になるやつでしょ! 狙ってるの?」

「いや、全く」

「まぁ、アユが狙ってやるとも思えないな」

「それは、どういう意味だ?」

「ん? アユは嘘をつかないってことかな」

「それならいい」

 歩が満足そうに言う。

「二人とも食べるぞ」

 はい、ということで、普通の日常感のある休日です(僕は、こんな休日は過ごしたくないですけど)。

 久しぶりすぎて、二回ぐらい保存を忘れて書き直しました(何やってんだよ!)。

 長い休日の間に休みに入ってしまったので、長い長い休日になってしまいました(申し訳ないです)。


 次回は、 長い休日 5 です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ