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20 ~長い休日 2~

 部屋の扉が開いて、望が入ってくる。

「千明様から、なんて届いたんだ?」

 いつもより緊張した面持ちの望が部屋に入ってきて言う。

「買い物を頼みたいんだけどいいか、ってきたよ」

「ふぅん。それで、なんて返したんだ?」

「まだ返してないよ?」

「何を買うのか知りたいな。それで判断する」

「そんな、スーパーに売ってないようなものを買いには行かせないでしょ」

「そんなの、俺は分からねぇよ。ほぼ話したことないんだからな。カケとかタツみたいに人を見抜く才能もないし」

「そんなの、俺は持ってないよ。話したことなかったら、俺にも分からない」

「訊けるか?」

「ちょっと待って」

 俺は、千明様に何を買うのかメールで訊く。すると、すぐに返信が来る。

「今日の夕飯の食材だって。買いに行ってくれるなら、詳しいリストを送るって言ってる」

「それなら大丈夫そうだな」

「行けるって返信しちゃうよ?」

「お願い」

 望の返答を聞いてから、俺は千明様宛に、行けます、と送る。

「買ってきてほしい物、送られてきたよ。転送するけど、ノゾ以外に誰に送る?」

「俺だけでいい。後から一緒に行くメンバーには伝えるから」

「了解」

 俺は、千明様から送られてきた、買ってきてほしいものリストを望宛に転送する。

「サンキュ。いつものメンバー連れてくから」

「女中の家に置いておく?」

「まぁ、いつも通りだとそうなるよな」

「四人で足りる?」

「増やしてくれた方がいいかも、この量だと」

 スマホを見ていた望が言う。

「ノゾとアキとトオとシズだよね。うーん……」

  誰がいい? 誰がこのメンバーと一緒にいても問題ない?

 誰がいいのか候補を出しながら、選んでいく。

「サツとサト、もしくはカナとシノかな。どっちがいい? 直行で千明様に渡すんだとしたら、サツを連れて行った方がいいと思う。でも、いったん帰ってきてから行くんだったら、カナとシノのほうがいいと思う」

「直で行った方が食材的にもいいと思うんだよね……。サツとサトを連れてく」

  残るのは、アユとカナとシノだな。害はないけど、なんかあったとき面倒だな。

「了解」

「そっち、大丈夫?」

「まぁ、アユさえ何もなければ、カナとシノだから全然。冬馬様達に何かあったとすると、使えるかどうかは分からないけど」

「カケなら、大丈夫か。じゃ、行ってくる」

「行ってら」

 望が部屋から出ていく。俺は千明様宛に、了解しました、と送っておいた。椅子に座り、今週の結果をデータ化していく。今日は、本屋に行っていたため、まだデータ化が一ミリも終わって無ければ、分析もしていない。

  本が読みたいけど、俺が運動しないためにもやるしかないよなぁ。

 運動を嫌っているわけではないが、兄弟たちに付き合ってなどいられない。

  毎日あんなのに付き合ってたら、俺が死んじゃうよ。鍛えてるわけでも、運動部に所属してるわけでもないし。

 運動に付き合うよりは、データ化や分析をする方が、俺の性に合っているということだ

  何か、気配を感じるな。

 望が部屋を出て行ってから、ちゃんと望が言っていたメンバーを連れて行ったのか、確認するために気配を感じる範囲を広くしていた。

  別に、ノゾを疑っているわけではないけどね。

 だが、買い物組はもう出て行ったはずだ。もう新しい反応がないだろうと思っていたが、廊下の方から二つの気配を感じた。

  誰だろう、晴樹様達かな? 二人だし。あー、でも、千明様達っていうのもあるのか。

 二つの気配は、まっすぐ俺の部屋に向かってくる。

  二つの気配の動き方的に、晴樹様達ではない気がする。アユの部屋に三つの気配があるし……。

 データ化する手を止め、気配を探るのに真剣になる。

  アユの部屋で曲がることなく、俺の部屋に来たか。じゃあ、冬馬様と千明様だろうな。優斗様だったら、アユの部屋に向かうだろうし……。あーでも、こういう時に誰かわかるように識別できたらいいのに。

「翔、入ってもいい?」

 冬馬様の声が聞こえてくる。

  その訊かれ方で、拒否はできない……。毎回思うけど。

「どうぞ」

 部屋に入ってきたのは、緊張した顔をした冬馬様と千明様だった。俺は、椅子から降りて床に正座する。

「依頼、受けてくれてありがとう」

  それだけで来るはずがない……多分。

 冬馬様と千明様は、俺の正面に座った。

「俺が行ったわけじゃないので、俺にお礼を言われても……。多分、直でノゾとサツが届けに行くと思うので、その時に二人に伝えてください」

「確かにそうだね。でも、連絡役になったのは翔だからね」

「それは、そうですね。ですが、それだけじゃないですよね? ここに来た理由は」

 本当は、冬馬様達から言ってくるのを待つのが正解だが、待ってられない。二人の顔を見たら。

「さすが、分かってるね。翔」

「お二人の顔を見たら、嫌でもわかります」

「そっか」

「俺に伝えても大丈夫な内容なんですか?」

「父さんから伝えるように言われたから、大丈夫だよ」

「そうですか……」

  って言っても、多分、俺が兄弟の中で一番初めに聞かされるんだろうから、何かあるんだろうな。

「二つ、伝えないといけないことがある」

  二つもあるのか。俺に伝えるってことは、俺らに関係するんだろうけど……なんだろう。

「長崎の……翔の両親が住んでいるところに左遷された女中たちが、騒ぎを起こしてるらしい。それで、母さんが向かわなければならなくなった」

  美佳様が? 長崎か。父さんたち、大丈夫かな。

「そして、その騒ぎを起こしているのがここから向かった人たちなんだ。だから、他のところに左遷した人たちの様子も見に行かないといけないんだ。女中の管理は、母さんの仕事だけど母さんだけじゃ回り切れないから、僕と兄さんも回らなくちゃいけなくなった」

  冬馬様と優斗様だけ、か? 千明様はどうなるんだ。同じ立場ではあるよな。あ、そういえば、女中とのこと、少し避けてたっけ? 関係してんのかもな。

「ここに残るのは、父さんと千明、晴樹と夏樹。でも、このメンバーだとご飯を作れるのが千明だけになるから……」

「ご飯を作るのを手伝ってほしいってことですね?」

  ここ最近の冬馬様の行動とか、さっきのこととか、いろいろ合点が行くな。

「それもあるんだけど、もう一つ、いいかな?」

  だーら、その訊き方で断れないんだって。断る気もないけど。

「なんでしょう」

「護衛を頼みたいんだ」

「護衛……ですか……」

  護衛って、小説でしか聞いたことないよ? それも、異世界系の。

「護衛って言っても、戦って守るとか小説に出てくるようなやつじゃないよ」

  そっか、冬馬様達も読書好きなんだっけ。

「何をするんですか?」

「翔は気配を探ることができるって言ってたでしょ? それで、僕たちも結構学校で助かってることとかあるから、家の中でもやってほしい」

「何か警戒する対象とかいるんですか? そういう対象がいなかったら頼みませんよね?」

「できれば、晴さんと大輝さんの兄弟以外は近づけたくないっていうのが、父さんの考え。晴樹と夏樹はまだしも、千明は……あれだから」

  ??? まぁ、でも、訊かないのが得策なんだろうな。それに、大輝さんの兄弟って誰? あとで晴さんに訊いてみるか。

「……その、気配を探る役目は、俺じゃなくてもいいんですか?」

 今の話を聞いていて、ぱっと出てきた質問をする。

「他にいるんだったらいいよ。僕らが知ってるのが、翔だったから最初に翔に声をかけただけで……」

  それだけじゃないだろうな。

「あと、当主様と千明様、晴樹君、夏樹君がバラバラの場所で過ごしていたら、全員はしっかり見れません。それに、学校に行っている間は千明様以外は無理ですけど、そこは?」

 あまり、冬馬様達の前でできないとは言いたくないが、この緊張感の中で、そんなことにはこだわっていられない。言われたことをやることが一番信頼につながる。

「……最悪、千明だけでも見れてれば、それでいい」

 冬馬様が言いづらそうに言う。

  まぁ、誰か一人確実に守れるって言ったら、選ぶの大変だよな。俺も無理だ。

「……そうですか。気配を探るのは、部屋の外からですか? 中からですか?」

「父さんの部屋にいるときは頼まないから、できれば、移動するときとか、父さんの部屋にいないときについてほしいんだ。まぁ、部屋の外で大丈夫だと思うけど、その時々で変わってくると思うから、確実とは言えないな。あ、でも、父さんにはついてなくていいよ」

「分かりました」

「頼める?」

「アユたちとかと、相談してからでいいですか」

「もちろん、全然問題ないよ。今、計画を立ててるところだから、今週中に決めてくれればいいかな」

  冬馬様達が計画を立ててるのか? いや、そんなこと……考えられないわけではないな。

「来週はいない、ということですか?」

「うん。来週から二週間ぐらい。でも、僕は減らしてもらってこのぐらいにするつもり。兄さんはもっと長いと思う」

  その口調だと、頼むってことか。誰だろう、頼まれてるの。二週間は……長いな。

「なるほど」

「それじゃ、決まったらメールでも何でもいいから、教えて」

「分かりました」

 二人が俺の部屋から出ていき、俺の気配を感じる範囲からも出ていく。

「ふーっ。久しぶりに緊張した」

 後ろにある机の脚にもたれかかる。

  今、ノゾとサツがいないから、アユだけでも話しておこうかな。

 歩の部屋からは、三つの気配を感じている。

  晴樹君たちか? まぁ、後ででいっか。ノゾたちが返ってきたら、話そう。

 俺は、体を机から話して立ち上がる。椅子に座り、その辺にあった紙に話したことを忘れてはいけないところをメモし、先程までの作業を続ける。


  帰ってきたか?

 一番端の部屋まで気配を感じる範囲を広げていたところ、何個かの気配が範囲の中に入ってきた。

  サツたちは聞いたかな? 冬馬様達のところに行くって言ってたけど。

 なんて考えていた五分後、部屋の扉がバーンと開けられ三人が入ってきた。ヘッドホンをしていたから音は聞こえなかったが、気配がすごく近づいたことで分かった。

「カケ、冬馬様達に何を言われた?」

「何を説明された?」

「何を頼まれた?」

「話せ」

 ヘッドホンを取られる勢いで三人が言ってきたため、渋々作業をやめ、椅子を半回転させる。三人は、歩と望と皐といういつものメンバーだった。

  俺から呼びに行かなくても、向こうから来たね。分かってたけど。

「落ち着け。何個か話すことがあるけど、なんて言われた? 冬馬様達から」

「何も言われてない。カケに大事なことを言ってある、とだけ言われた」

  俺に丸投げしたわけか。俺に任せたのは正解だと思うけど、冬馬様達から説明してもらいたかった。こんなこと考えただけで、女中に怒られるけど。

「それを、言われたっていうんだよ」

「そんな話はしてない」

  はぁ、さっきの紙、どこやったっけ。それで何とかならないかな。……あ、あった。

「はい、これ」

 俺は、真ん中に立っていた歩に先程のメモを渡す。横の二人も覗き込む。

「う~ん。……これだけじゃ、細かいところが分からないぞ」

「細かいところは、別にいいだろ」

「よくない」

「じゃあ、どこから話せばいい?」

「すべて」

「それは、話す内容についてだろ」

「どこからでもいいよ」

「カケの説明は分かりやすいからな」

「はぁ……。えーっと、どこから話そうか……」

 俺は、冬馬様から聞いたことを、時系列で三人に伝える。

「……なるほどねぇ」

「俺は、引き受けておくべきだと思うけど、サツとカケはどうなの? やることになるけど」

「俺は、どっちでもいいよ。移動と部屋にいるときだけだったら、カケと分担すれば少なくなるだろうし」

「カケは? 学校でもやってるだろうけど、疲れない?」

「俺も、どっちでもいいと思ってる。やることは変わらないし」

「アユは?」

「本人たちがどっちでもいいって言ってるんだから、引き受ければいいんじゃない? 俺がとやかく言う権利はないよ」

「じゃあ、引き受けるか」

「父さんたちにも一言言っておいた方がいいよね」

「そうだな」

「ご飯はどうする? 夜の練習前に夕飯食べるか?」

「晴さんに往復してもらうのも悪いからなぁ」

「晴さんって?」

「運転手さんの名前」

「晴さん、っていうんだ」

「うん。教えてもらった」

「で、夕飯を練習前に食べるとしたら、腹減るよな」

「夜食をを食べるか、昼を多くする?」

「どっちかだろうな。それ以上に問題なのは行く時間だ」

「鍵を閉めてもらえばいいんじゃないか?」

「寝る時間はまだしも、当主様のことを考えるとそれはできないだろ」

「それもそうか」

「風呂入ってる間とかは狙われないだろうし……」

「そういう時のほうが狙われるんじゃないか?」

「そう考えると、練習時間にかぶるな」

「生活の仕方を聞かないと、何とも言えないな」

「訊いてくるか」

「今から行くのか?」

「まぁ、学校で訊いてもいいけど」

「今訊いてきた方がいいだろうな」

「誰か一緒に行く?」

「それは、来てほしいのか、行きたい奴はいるか、っていうののどっちなんだ?」

「いないんだったら、一人で行くっていう意味」

「サツ、行っておいたら? できるだけ接触回数増やしとかないと、サツも向こうも大変だろ」

「カケがいるし、ちょうどいいだろ」

「それもそっか」

「あと、訊いておきたいことは?」

「今のところは、特にないかな」

「じゃ、行こう。サツ」

「メールしてから行けよ」

「分かってる。突撃訪問なんてしない。っていうか、できない」

「カケならやりそう」

「アユの間違いだろ」

「サツもやりそうだけどな」

 三人の話を横で聞きながら、俺は千明様宛に、先程の件で質問事項があります、とだけ送った。行ってもいいかとか、まだ質問の許可も得てないのに、訊けるはずがない。

 すぐに、冬馬兄さんの部屋にいるから、来て、という返信が来た。

 明らかに緊張している、皐を連れて冬馬様の部屋に向かう。

「カケは、よくそんなにメールとかポンポン送れるよな」

「これでも、兄弟の中では一番一緒に行動してるからね。未だに緊張するけど、まぁ、このぐらいなら」

「俺なんて、ほぼ話したことないぞ」

「これから話すようになるって、多分。話してない方が、気まずいよ」

「そうかぁ?」

「冬とかは、本当に話すようになると思う。俺もずっとついてられそうにないし」

「冬?」

「相川家の集まりがあるって、晴さんから聞いた。多分、その時も今日みたいなことになるんじゃないかな」

「そんなのあったんだ」

「あったみたいだよ。俺も初めて聞いたし、多分、父さんたちも行ってないと思う」

「確かに、行ってるとこ見たことない。毎日いたから」

「当主様のいとこなのに、いいのかな? そんなんで」

「そのぐらいの関係ってことだろ」

「サツが話す?」

「何言ってんだよ」

「練習。俺もいるし」

「カケが言った方が、向こうも助かるだろ」

「それはどうかな」

 「護衛」ってかっこよくないですか? 今の時代だと、ボディーガードとでもいうものですかね。どっちのほうがかっこいいでしょうか……。


 次回は、 長い休日 3 です。


 ここ最近は諸事情により、全然書けていません。とりあえず、年末までの分はできているのですが、そこから先がまだわかりません。春頃にはまた、投稿を再開できるかと思いますが、それまでは投稿が途切れる可能性があります。申し訳ございません。

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