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神の雫は夢をみる  作者: 茅菜ましろ
1/故の痛み
12/92

04




 ――――――4


 《風雁》に復帰が認められたことにより、翔緒が最初に言い渡されたのは、ケータイを変えることだった。もともと支給されていたものは壊してしまって、現在使っているものは自分で適当に調達したものだ。組織の人間になる以上、完全な管理の物にする必要がある。


「いーなぁ。新しいやつ」


 別件でのついでに寄ってもらってきたケータイを、陸がうらやましそうにのぞく。


「お前のはなんでそんなボロいんだよ」


「まー、そりゃ、雑だからでしょ」


「自分で言うなよ」


 笑って言い返しながら、これで今度こそ凛に連絡しないといけないな、とぼんやり考える。


「でさ、翔緒、あの子に連絡すんの?」


「は?」


「凛だよ凛!」


 なんとも、なれなれしい呼び方である。


「電話すんの? 受かったって」


「いや、試験とか自体話してないし……」


「まじで? じゃあ連絡しないの?」


「携帯が変わったことくらいは、一応伝えるつもりだけど……」


 嫌な予感がして眉を寄せると、陸が弾けるような笑顔で言った。


「かわって!」


「なんで!」


「一応、あいさつを……」


「親かよ!」


「じゃ、じゃあ! せめてスピーカーにして話して! 声だけ!」


「気持ちわりぃな!」


「いいじゃん! 俺だって」


 そこで、二人とも会話が止まった。廊下の前方から明斗が歩いてくる。来客だろうか、そう思って目を向けた瞬間、 ぞっとした。


「廊下で大騒ぎすんなよ、お前ら」


 明斗はあきれ顔である。その後ろに、漆黒の少女がいた。


 レースをあしらった黒のドレス。ウエストをきゅっと絞られたデザインが華奢な体躯を強調する。長い袖からもレースがのぞき、小さな手は隠れてしまっていた。


 巻かれた柔らかい髪は、ヘアアクセサリーを飾ってハーフアップに結われている。


「――――凛……」


 きれいにメイクした顔立ちは冷徹で見なれない。


 凛の後ろから、聖が笑って手をあげて見せた。


 なんで、こんなところに。


「翔緒、あとで彰人つれて指令室こい」


 すれ違いざま、明斗がそう命じた。


「なんで……」


「あー、大丈夫大丈夫」


 答えたのは聖だった。


「話しあいに来ただけだから。別にのりこんできたわけじゃないしさ」


 軽口っぽい言葉を残して、あとでね、と行ってしまう。


「……今の子が凛?」


 横から陸が訪ねてきた。


「え? ……あぁ、うん」


 そんなあいまいな答えしか返せない。


 歩いていく背中から目を離せずにいると、小さな頭が少しだけふりかえるようなしぐさを見せた。しかし、結局、凛は一度も翔緒と目をあわさなかった。








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