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羽入さんと緋色の事情


「緋色の殉職イベントの追加は、緋色の人気の低迷もあるのですが、私の"演技"に問題があるって、ですぴえろさんから言われたんです……」


 "ですぴえろ"とはマイパンの開発・運営を行なっている『株式会社バスターライフル』の代表であり、プロデューサーであり、近年"虐殺ピエロ"の異名で世間へ名を轟かせた有名シナリオライターである。


「私の緋色には何かが足りない。だからその足りない何かを殉職イベントまでに改善して、挑んで欲しいと。もしも殉職イベントで、万が一緋色の人気が上向けば、整理対象から外すって言われまして……」


 繰り返しになるが、マイパンの殉職イベントで生き残ったキャラクターはこれまで皆無である。

むしろ、その手の性癖があるユーザーからは一定の評価を受けているらしい。ようはこれは“ですぴえろ”というライターのブランド価値であった。


 ですぴえろ氏曰く『昔、可愛い女の子たちがわんわん泣きながら、次次と脱落してゆく、アイドルオーディション番組があったじゃないですか? あれを参考にしてみました(笑)』とのこと。


 このイベントの存在がマイパンを際立たせている一因を担っているのは言うまでもない。


「正直、今の自分に何が足りないのかわかりません。そんな時、いつも一生懸命緋色を応援してくれている小津くんの投稿をみつけて感動しちゃいまして。で、履歴を掘ったら、カレーが出てきて。そのカレーを調べてみたら、私の生活圏内にあることがわかって……だったら、緋色を愛してくれているその人を探して、意見を貰おうと思いまして!」


 行動力があるのは良いことである。だけどもちょっと怖い気もする。やはりSNSへはおいそれと生活感のある投稿はしない方が良いと思った武人だった。


「気持ち悪いことをしているのは重々承知です。小津くんのプライベートへ土足で踏み込んだことは謝ります! だけど、こういうことをしてでも、私は緋色を助けたいんです!」


 ずずっと羽入さんが迫ってきた。いくら美少女で、愛するキャラの中の人でも、さすがに腰が引けてしまう。


「緋色は私が初めて頂いた大きなお仕事で、苦楽を共にしてきた私の分身です。だからーー! 小津くん、緋色と私を助けてください!」

「た、助ける!?」

「はい! お願いします!」


 立ち上がった羽入さんは45度の最敬礼をした。唖然とする武人の前で、羽入さんは頭を下げたままピクリとも動かない。

唐突過ぎて訳がわからなかった。しかし同時に、


「とりあえず頭あげよ? そこまでしなくて良いからさ」


 申し訳なさの方が勝り、そう声をかけたのだった。


「そうですか……?」

「うん。羽入さんが真剣なのはわかったから。座ろうよ」


 羽入さんは言った通りに座り込む。座る直前に、スカートを平す。丁寧な所作で好印象だった。さすが美少女は違う。


「もしもさ、俺が羽入さんのお願いを引き受けたとして、実際何をすれば良いの?」

「引き受けてくれるんですか!?」

「いやいや、その前に俺がどう協力すれば良いか聞きたくて。演技指導とかそういうのは教えられないと思うけど?」

「大丈夫です。小津くんの生活や接し方へは一切御迷惑をおかけしません。小津くんは緋色が大好きなユーザーさんとして、日々、私の演技を聞いてくれればいいんです」

「演技を?」

「はい。私自身は、私の演技で小津くんがどう反応するか確認します。小津くんはユーザー視点で、簡単で構わないので"よかった"とか"ここはこうしたら?"とかを、都度押していただけると助かります」

「そんなんでいいの?」

「はい! そんなんで構いません!」


 つまり武人は絶対にお近づきになれないと思っていた学校のアイドル的存在と日々を過ごし、さらに愛してやまないキャラクターの声を生で聴きまくれるということだと解釈する。滅多に、というよりは、もはや奇跡に近いご提案。しかし懸念事項もある。


「それだと人目が気になるってか」

「人目?」

「うん。多分、その……すごく目立つ、と思うんだ。羽入さんと俺が一緒にいることって……」


 モブとヒロインのカップリングなど、どこからどう見ても変だ。人目に晒されるのはまだいいが、妙なちょっかいを仕掛けてくる連中が現れるかもしれない。平穏が崩されるのは真っ平御免である。


「そんなに目立ちますかねぇ?」


 と、注目を集めていることに無自覚な羽入さんは不思議そうに首を傾げた。


「目立つって。だからそこんとこをどうしようかなと」

「うーん……だったら、学校内ではあまり声をかけないとかですか?」

「そだね。そこは欲しいね」

「わかりました! じゃあ、こっそりって条件をつければ、OKってことで良いんですよね?」


 計らずながら了承する形になってしまっていた。

もはやこの段になって断ることなどできるはずもない。


「力になれるか、どうかはわからないけど……わかった、協力する」

「ありがとうございます!」


 再度の最敬礼であった。


 話が決着したは良いが、じゃあこの後どうするべきか?

そんなお互いにそんなことを考えているのか、妙な静寂が個室に漂う。


「と、とりあえず、何かしましょうか?」

「そ、そうだね。まずは親睦を深めるってことで……」


 意見は一致。まずはお互いを知ることが重要なのかもしれない。


「あとさ羽入さん、同級生なんだから敬語はいいよ。くすぐったいし」

「良いの?」

「もちろん。って、もう早速なってるじゃん」

「あ……ごめん」


 画面から飛び出してきた緋色が謝っているような。そんな感覚を抱く。


(さて、まずは何をするかなぁ……)




★【ご案内】★


 以降“いちゃいちゃパート”です。


  いちゃいちゃパートとは!? A、B、Cの三つのシチュエーションで構成される【羽入 唯】とのいちゃいちゃ場面集である!

一つ読んで本編へ戻るもよし! 三つ全部読んで先に進むもよし。気に入ったシチュエーションがあれば繰り返し読んで、気持ちを高めるもよし。とにもかくにも"いちゃいちゃ場面"をお楽しみ頂ければ!

*いちゃいちゃパートは定期的に登場します。



Aパート:何か飲む(4部へ)


Bパート:何か食べる(5部へ)


Cパート:とりあえず歌う(6部へ)


*続きが気になる、面白そうなど、思って頂けましたら是非ブックマークや★★★★★評価などをよろしくお願いいたします! 

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