★Cパート:やっぱりここはみかんでしょ!
「おばあちゃん家からおくってきてくれたやつなんだ。甘くて美味しいよ?」
「へぇ!」
「そういえばさ、小津くんってみかんを剥く時はヘタから? それとも裏側から?」
「後ろを凹ませて剥くかな」
「やっぱそっか。この間友達とそのことで話してね。私は俄然、ヘタから!」
「なんでまた?」
「ふふん、ちょっと見てて!」
羽入さんは自身ありげにへたへ指をかけた。皮を剥くと綺麗で瑞々しい橙色が姿を現す。
白い繊維がほとんど付いていなかったのだ。
「ヘタからだとね、白いのがあんまり残んないんだよ?」
「へぇ、なるほどね。おばあちゃんの知恵ってやつ?」
「そうそう、それ!よかったらどーぞ」
と、剥いたみかんが差し出された。
羽入さんが武人のために剥いてくれたみかんだった。橙色に輝く宝石のような。それは言い過ぎにしても、すごく大事で貴重で、尊いものにかんじられる。そしてやっぱり、こういう至れり尽くせりは恥ずかしい。
「あ、ありがとう」
でも、嬉しいので受け取っておくのだった。
「みかんおいしいね」
「あ、おう……」
羽入さんは平然、武人は胸の鼓動を堪えつつ、二人で並んでみかんを口にする。
カラオケの時と良い、羽入さんは無自覚でドキドキさせることを平気でやってくる。
だけど気付いているのかいないのか。
彼女ははちょっと天然が入っているのかもしれない。




