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第5話、国王への報告

 


 この私、フィルナンド•フォア•スフィアナはこのスフィアナ連邦国の第112代国王である。

 この国、もといスフィアナ王家の歴史は精霊との歴史と言っても過言ではない程、精霊との繋がりが深い。

 このスフィアナ連邦国で使われている暦は精霊暦と呼ばれ、このスフィア大陸で人類と精霊との交流が開始した最初の年を0年として暦が続いている。

 今は精霊暦4025年であり、これはつまり人類と精霊との交流が始まって約4000年以上続いてきた事を意味している。

 このスフィアナ王家は当時の精霊王と人類の子孫だと伝えられており、唯一精霊王の血が入っている家でもある。

 このスフィアナ連邦国が成立したのは今から約300年前程であり、それまでは王政や帝政•共和制などを繰り返していた。

 しかし、反乱などが起こった事は一度も無く、善政で治められていたそうである。

 そして300年前、当時の国王が権力の一部を当時あった元老院(いわゆる議会)に移す事を決定し、権力を移譲した。

 その権力移譲には(元老院に力をつける為)や(元老院に脅された)などの噂が絶えないが、実際には政務が多過ぎて自由な時間がない為、という理由は王家とその側近しか知らない。

 そして、その後の約250年前に更に議会(元老院)に権力を移譲した時に議会は地方に出来る事は地方で、とのスローガンを打った。

 当時ようやく地方にも各領主の下に地方議会が出来て来ており、中央政府その地方議会にも権力を与えたのである。

 それによって、今に繋がる州が誕生し、立憲連邦君主制の基礎が固まったのである。

 そして、その時反発して私兵を民衆に向けた領主は国軍と民衆により引きずり落とされ犯罪者に、素直に受け入れた領主はその身分と財産を保障され永久貴族となった。

 当時100程あった貴族は立憲連邦君主制成立までの20年間程で60程にまで減り、現在は40程になっている。

 そして、当時の国家予算の約1.5倍もの資産が没収され国庫に入れられた。

 また、その際に各貴族の私兵は廃止され、各私兵は国軍に吸収され、各貴族の権限は大幅に制限された。

 しかし、各貴族はそれまで行なっていた領主としての仕事が無くなっただけでは無く国から貴族としての地位及び財産を保障され貴族年金を受け取れる事になった為、逆に喜んだと言う。

 それ程までに、当時の善良な領主の仕事は多かったのである。

 しかし、問題が無かった訳ではない。

 各貴族や領主が保有していた私兵は地方軍としての役割だけでは無く警察としての役割も持っていたのである。

 それまでは貴族の私兵や民衆が自警団などを結成して治安維持を行なっていた。

 しかし非常に非効率的であり、なおかつその自警団が犯罪組織との繋がりがある場合も珍しく無かった。

 その為、当時の連邦議会(この時、既に国名はスフィアナ連邦国となっていた)は治安維持機構(現在の警察)の設立を地方自治体(州)に命令し、州警察(地方警察)が設立した。

 その10年後、今度は州を跨ぐ犯罪対策として連邦警察(国家警察)が誕生し、スフィアナ連邦国の治安維持体制が完成した。

 そして今から90年前に、当時軍隊の一部であった近衛師団(2個師団)が国防省の管轄下から警察などを管轄する国家安全保障省に移され名前も近衛師団から連邦保安隊へと改編された。

 国家安全保障省は現在、防災庁•情報庁•連邦消防庁•連邦医療庁•連邦警察庁•陸上保安庁•海上保安庁•出入国管理庁などが配下にある。

 ちなみに現在の中央省庁は1府15省(内閣府•総務省•財務省•外務省•宮内省•法務省•教育省••国防総省•農林水産省•経済産業省•厚生労働省•国土交通省•資源エネルギー省•研究開発省•国家安全保障省)ある。

 保安庁の配下である保安隊は軍隊と警察の間の存在として組織され、国の重要施設の警備や王族などの警護などを担う。

 また保安隊は陸などを担当とする陸上保安庁と海を担当とする海上保安庁の2庁から成り立っており、海上保安庁は日本の海上保安庁と殆ど同じである(規模人員装備などは国力に応じた差がある)。

 このような歴史を辿ってきたスフィアナ連邦国は80年前に国王が一部の権限(戒厳令など)を残し、残りを全て議会に移譲した。

 その為、今では国王の政務は殆ど無くなり、国家元首としての政務や一部残っている権限に関する政務のみとなっている。

 そんな残っている数少ない政務を終えたスフィアナ連邦国国王フィルナンド•フォア•スフィアナは王妃のリフェルティア•レア•スフィアナと国王補佐兼首相補佐のフィルニールと共にある部屋にやって来た。

 今日は息子のスフィアナ連邦国第2王太子であるレイン•フォア•スフィアナの『個別適正検査』の日である。


「わざわざ済まないな。早速だが、結果を聞かせてくれ。」

「は、はい。」


 彼女はレインが通っているエルネランド学園長のテスニア•フォン•エルネランド。

 名前からも分かる通り代々学園の学園長を務めている貴族である。

 貴族と言っても、此方は王族であり、力の差は歴然としている。

 わざわざ、レインの『個別適正検査』の結果を伝えに来たのである。

 他の人にとっては精霊魔力•通常魔力•知力•体力のどの数値が高いか、という話になるが、王族として大事なのは最初の精霊魔力値である。

 精霊王の子孫とも呼ばれているスフィアナ王家の人間が精霊魔力値が低い訳無いのだが、第2王子のレインに関しては家族全員、非常に楽しみにしていたのである。


「では、まず・・・レイン殿下からの神事『個別適正検査』の結果ですが・・・・」


 そう言ってレインの結果を伝え始めた。

 神事『個別適正検査』はこの星の女神である創造神セレスティアから預かった神器によって行う神事である。

 20年前にそれまで使用していた機器が壊れてしまい、どうしようかと国中の魔道具師達が知恵を振り絞っていた時にセレスティア様が降臨し、この神器を授けて下さったのである。

 この星、もとい世界は神と人類の距離が非常に近く、神は想像の中では無く、存在する者として認識されている。

 このスフィアナ連邦国は創造神セレスティアの加護を受けている国であり、非常に資源も豊富で豊かな土地である。

 そんな創造神セレスティア様から授かった神器で一度『個別適正検査』を行うと、何故かその後も簡易機器で自分のステータスが確認出来るのである。

 その仕組みは今でも判明していない。

 そんな神器で今回『個別適正検査』を行なったのは第2王太子であり、末っ子であるレインである。

 彼が生まれた時は精霊が祝福に来るという前代未聞の出来事が起こり、精霊女王からも祝福を頂いた。

 6歳から通っているエルネランド学園での成績も優秀なようであり、未来の国王として育てて来た。

 私の子供には第1王子のリーク(18)第2王子のレイン(15)第1王女のステリア(19)第2王女のセーラ(17)の4人がいて、第1王女のステリア及び第1王子のリークには既に婚約者がおりそれぞれ20歳になると結婚する予定である。

 4人の中でも1番年下のレインは3人にとても可愛がられており、溺愛レベルである。

 第1王子のリークは他国の王女と結婚して、その嫁ぎ先の王家に入り国王となる為、レインが国王になるのである。

 この国は別に女だから王になれないという事は無いが、レインの場合は非常に特別なのである。

 その為、自分はテスニア学園長の言葉を聞き、言葉を失っていた。


「レインに、精霊適正が無い?・・・・・・・・・」

「はい。・・・大変申し上げにくいいのですが、検査の結果、そうなりました。」

「嘘、だろ。・・・・・・・ちょっと、すまんが結果を見せてくれるか?」

「はい。此方になります。」


 そう言って満身創痍の中、テスニア学園長からレインの検査結果が記載された紙を受け取った。

 そこには次のように書かれていた。


 ——————————————————————————


 名前:レイン•フォア•スフィアナ

 性別:男

 年齢:15

 Lv:18

 種族:ヒューマン

 身分:王族

 職業:学生

 状態:正常

 適正属性:風•水•光•闇

 精霊魔力:0180

 通常魔力:1850

 知力:1620

 体力:420

 固有スキル:☆3ミラージュ

  :☆4無限収納

  :☆4魔眼

  :☆5精製

 アルカナ:☆5

 加護:女神セレスティア(隠蔽)


 ——————————————————————————


「・・・・・・」

「・・・なんだ?このふざけたスキルは。」

「とりあえず精霊魔力は置いておくとして、通常魔力と知力の数値が高すぎませんか?あと固有スキルって4つもある物でしょうか?」

「無い。普通は1つか2つだ。」


 彼等がそう言うのも無理は無かった。

 まず通常魔力だが、精霊魔力とは違いランクを重ねる毎に上がっていく。

 つまりLv18で1850の数値なら将来、魔術師になるのも夢では無いレベルである。

 ちなみに15歳の平均は920、宮廷魔術師と呼ばれる国王に仕える国最強の魔術師でLv47で数値は4150である。

 そして、彼がLv18の時の数値は1480である。

 次に知力、これは日頃の勉学により上がる数値だが、要は知識量である。

 大学の入試ではこの知力がそのまま点数に反映される程である。

 比較だが世界最高峰の研究開発機関『塔』の入る下限は1200である。

 賢者の平均は1800、大賢者の平均は2500にもなる。

 つまりレインは知力だけなら賢者レベルの知識量があるのだ、最も大賢者の塔に関してはこの辺りがゴロゴロしている。

 そして何より精霊魔力•通常魔力•知力•体力というのはバランスが取れているのが普通である。

 全体の10%程の人はどれかが突出しているが、2つも突出している人は居ないのである。

 精霊魔力なら精霊術師、通常魔力なら魔術師、知力なら研究者、体力なら軍隊という風に決まっており、通常魔力•知力共に高いレインは異質でもあった。

 そして固有スキル、これは女神セレスティアからランダムに振り分けられるスキルであり、誰でも1つは持っている物である。

 スキルは魔法とは違い、魔法に同じものは無く、魔道具のみで代用可能である。

 そして当然☆1が1番多く、☆5はその人しか持っていない。

 そして最後にアルカナは創造神セレスティア以外の神からの期待を表す数値であり1から5まである。

 ちなみにここにいるメンバーは誰も気にしていないが、それはメンバーのレベルが高すぎて☆4レベルしかいない為である。


「はぁ、こんなに凄いスキルがあるのに勿体ない。」

「それでもレインは私達の子供に変わりは有りません!」

「あぁ、その通りだとも。」

「あのぉ、陛下、」

「どうした?フィルニール。」

「この事は精霊女王には伝えますよね?」

「あぁ、それはと・・・・・・・」


 宰相兼首相補佐のフィルニールの言葉に「それは当然だが。」と言いかけて止まった。

 精霊との繋がりが深いスフィアナ王家の人間が精霊との適正が無いのは非常に重要な事である。

 その為、その旨を精霊女王に伝えなければならないのだが、フィルニール以外はある大事な事を忘れていた。


「ティリファ姫にも伝えるんですか?」

「伝えなければならないだろう・・・だが。」

「・・・そうなると、マズイな。」


 彼等がティリファ姫と言っているのは精霊女王フィスティアの娘であるティリファ姫である。

 そして、レインの婚約者でもあった。

 2人の婚約は精霊女王とスフィアナ王家とのいわゆる政略結婚なのだが、娘を溺愛している精霊女王は政略結婚など認める筈は無いのだが、ティリファがレインの事を好きな為、認めたのである。

 このような事からも分かるように2人は相思相愛であり、そんな2人を引き離そうすると、何が起こるか分からない。

 何しろティリファの親である精霊女王フィスティアは創造神セレスティアの妹であり、ティリファは原始の精霊と呼ばれる始祖精霊なのである。

 その取り扱いに関しては水爆以上の危険さがあるのである。

 それだけ彼女はレインの事を愛していた。

 昨日まではその事を微笑ましく思っていた彼等だが、今日地獄に叩き落されるとは思っても見なかった。


「あのぉ、私はここにいてもよろしいのですか?」

「貴方も居て下さい。ただしこの話はこの部屋を出た瞬間に忘れる事。」

「は、はい。」


 ヤバそうな話にテスニア学園長が退出しても良いかという旨をフィルニールに伝えるが、もう遅いと思いフィルニールはテスニア学園長にこの部屋にいるように伝えた。

 レインが精霊王女と婚約している事は王族や国の上層部に関しては知られているが、国民にはまだ発表しておらずテスニア学園長もその知らされていないグループに入っていた。

 精霊王女との婚約、それは次期精霊王が2人の子供になる事が確定したという事であり、精霊至上主義のこの国•世界でその影響力は計り知れないものである。

 ただでさえ、スフィアナ王家は精霊王(女神)の血が入っていると言われているのに、更に精霊王の血筋が入る事になるとそれは近隣諸国との関係にまで影響する。

 しかし、それをやめないのは今回の婚約が王家からではなく精霊側から言い出した事だからである。

 流石に国の上層部も精霊側から要請された事を断る恐ろしさは知っている。

 そして、そんな国の重要機密に触れてしまったテスニア学園長はある思いでいっぱいだった。


(早く帰りたい。)


 もはやテスニア学園長にこのゆったりと出来る部屋でくつろぐ気力は残っておらず、ただソファーの端で縮こまり、早く終わるように祈る事しか出来なかった。



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