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第3話、査定と宿

 


 学園を退学してから国有数の魔道具師であるマコモの店に向かい、これまでに作った魔石と精霊石の一部を買い取ってもらおうとした。

 査定中、お茶を飲みながらニュースを見ていると、マコモの声が部屋に響いた。


「レイン!査定が終わったぞ。」

「あ、すみません。今行きます。」


 そして待合室から鑑定室に向かうと、其処には大きな電子顕微鏡みたいな魔道具から精霊石を取り外し、紙に数字を書き込んでいるマコモの姿があった。

 確か全部で100個近くあったと思うんだけだ、これ全部その電子顕微鏡みたいな魔道具で見たのかな?

 そりゃあ疲れるよね、心の中で謝っておこう。


「こんなにたくさんすみません。」

「いや、構わないって、こんなに素晴らしい鉱石ばかりだからな。査定中何度腰を抜かしたほどか・・・」


 そう言いながらマコモは数字が書き込まれている紙を見ながら苦い顔をしていた。

 ん、なんかあったのか?

 まぁ、いいや。とりあえず値段聞こう。


「それで幾らになりました?」

「え、いや・・・まぁ、ちょっとな・・・」


 俺が値段を聞くとマコモは苦笑いしながら言い淀んだ。

 もしかして、そこまで価値無かった?

 まぁ、無限収納の中でも要らない奴を出したからなぁ。

 この100個近い魔石•精霊石を鑑定室させた後にまたやらせるのは気の毒だ。


「何を勿体つけて、サッサと言いなさいよ。」

「いや、この金額は1度にに用意するのは無理だからな・・・」

「?」


 マコモの奥さんであるフィーナさんがそう言うとマコモは査定表と思われる紙を彼女に見せた。

 するとフィーナさんは「あらあら」と言い、苦笑いした。

 どうしたんだ?


「えっと、幾らになったんですか?」

「・・・・・2億。」


 マコモの言葉に目が点になる俺。

 あまりにも現実離れした金額にサァッと気を失いそうになった。

 一瞬、聞き間違えかな?と思ったが、次のマコモの言葉で現実に帰ってきた。


「はい?」

「2億エルだ・・・・」

「2億!?、え?、ちょっとなんでそんな額になったんですか?」


 2億エル、つまり日本円だと約20億円である。

 当然ながら魔石や精霊石などの鉱石を打って得られる収入では無い。

 王族である俺は、他の人より金銭感覚が多少狂ってる事は自覚していたが、20億円を普通だと感じる程狂ってはいない。

 というより、父や兄や姉は俺に甘々だったが母は厳しかった為、父達のストッパーになっていた。

 ちなみにこの国の平均年収は60万エル(約600万円)程な為、日本の450万円よりは多いが、そこまでハッキリとした差は無い。

 ちなみに国民負担率は35%の為、日本の31%やアメリカの27%より多いが、デンマークやフランスの46%程では無い。

 ちなみに国民負担率とは収入のうち、どのくらいの比率で租税と社会保障で出て行くかを表している数値である。

 OECD加盟国だと最高はフランスの46.2%、最低はメキシコの16.2%である。

 確かに、幾ら凄い工房でも20億円持っている工房は無いよな。

 この世界にも銀行があり、国民一人1つ以上はそれぞれ口座を持っている。

 ちなみに預金の移動は日本と同じく、スマホで一瞬である。

 そして、何故こんなに高額なんだと、驚いている俺にマコモは訳を話し始めた。


「理由はこの2つの精霊石だ。こんな大きさの精霊石を見るのも久しぶりだ、触媒も悪くない。」

「えぇ、相当な大きなの精霊石だね。」

「そうだ。こっちが4500万エル、こっちが3700万エルだ。」


 そもそもの話、魔石と精霊石の違いは込められている中身の違いである。

 通常魔力が込められた物が魔石、精霊魔力が込められたのが精霊石である。

 その魔力を込めるのは簡単では無いらしく、触媒である結晶体に均一に魔力を入れる必要があり、魔石なら紫、精霊石なら各属性毎の色になる。

 その為、同じ大きさの鉱石でもその均一具合いにより、価格が数桁変わる事も珍しくは無い。

 俺も学園の授業でやらなかったら無理だったと思う。

 学園ではEランクからSランクまでの5段階ある中でEもしくはDランクの品質なら出来るくらいまでやらされる。

 というか、出来ないと単位が貰えない。

 しかしまさか、この30cm程の精霊石が4500万エル(4億5000万円)と3700万エル(約3億7000万円)もするとは思わなかった。

 まだ、これレベルの精霊石が十数個、これ以上の精霊石が数個、無限倉庫に入ってるんだけどなぁ。

 言わない方が良いね。


「妥当だね。でもうちだからこの値段だけどオークションに出したら6000万、下手すると8000万エルはいくかもしれないわね。」

「え?そんなに・・・・」

「あぁ、貴族や金持ちなどは鑑賞用としても欲しいだろうな。精霊石の愛好家は少なくないからな。」


 まぁ、確かに見た目は綺麗だし宝石みたいだしな。

 家(王城)の廊下とか色んな場所に飾られていたし、欲しい人はいくはでもいるだろう。

 地球で言う金のようなものかな?

 でも、この世界では金は錬金術師が幾らでも鉄を金に変えたりしてるから、地球程、金に価値無いんだよなぁ。

 ちなみに俺も錬金術師の才能があるのか無事出来ました。

 でも、他の人みたいな量は出来なかったからまぁ、職業としては無理かな。

 あくまでも、一応才能はありますよ、って事なのかな?

 まぁ、つまり精霊石は資産だ。


「なるほど、でも、その2つを除いても1億1000万ほどあるんですね。」

「あぁ、そうだな。ランクだとSランクかAランク品しか無かったけど、どうせ、あんたが全部込めたんだろうな。王子なのが勿体ないくらいだ。」

「いやらそれは精霊に手伝って貰ったからで・・・」


 ちなみに言っておくけど、家の奴はパクってないよ。

 あくまで9年間の学園生活で錬成した奴だけだからね。

 家の奴は数億エルするような高い奴ばかりに決まっているじゃないか。

 価格を聞くまででも無いよ。

 ってゆうか、怖すぎて聞けないだけなんだけどね。

 まぁ、そんな訳で、精霊を盾に逃げようとしたら、もの凄い勢いで反撃された。


「そんなの精霊に手伝って貰ったからSランク品がポンポン出て来るわけ無いだろ!それか、余程高位の精霊に手伝って貰ったか、だな。」

「いえ、普通の精霊だと思います・・・・多分。」

「はぁ、その最後の多分が怖いな。まぁ、精霊は隠蔽しようとしたら上手だからな。・・・でもおそらくお前さんの能力だろうな。」


 多分だけどティリファは普通の精霊だと思うよ、多分だけど。

 そもそも精霊は火•水•風•土•光•闇の6大属性を司る通常精霊と、雷や音などの5大属性以外の属性を司る特化精霊、そして始まりの精霊とも呼ばれている始祖精霊の3種類の精霊が存在する。

 通常精霊は更に下位精霊•中位精霊•上位精霊•大精霊の4段階に分かれており、上に行けば行くほど数は少なく大精霊は各属性で1体だけである。

 その為、名前はあるが知られてない為、何々属性の大精霊などと呼ばれている。

 一方の6大属性以外を司る特化精霊は各属性につき1体のみであり、その1体が大精霊並みの力を持っている。

 例えば静寂の精霊スティネールや植物の精霊バジュンテール、漆黒の精霊ダークネア、気配の精霊スティンなどである。

 最後の始祖精霊は元々神か神に準ずる存在だったのが、この世界の管理の為にわざと力を落として精霊になった存在である。

 その為、他の通常精霊や特化精霊とは違い、これまでに人間と契約した事は過去に一回も無い。

 特化精霊と始祖精霊の属性が被っている事も多々あるが、始祖精霊の力は特化精霊とは比較にならない程の影響力を持っている。

 その為、始祖精霊は人里離れた森の中や地下神殿などに住んでいる。

 ちなみに、精霊王は区分上は始祖精霊である。


「さて、良品の鉱石も手に入れた事だし、とりあえずの鉱石の心配は無いな。」

「倒れないでね。この前みたいに工房で寝落ちしてたら嫌よ。」

「はいはい。あぁ、そうだ。お前さんのスタンガン、点検したけど異常は無かったぞ。」


 そう言って預けていたスタンガンを折り畳まれた状態で返してもらう。

 折り畳んでおくと、大きさはスマホと同じくらいなのでとても楽なのである。

 まぁ、点検と言ってスタンザーガンを渡されてから試射ぐらいしかした事無いから、これで異常があったら問題だけどね。


「そうですか、ありがとうございます。」

「お金に関してはフィーナに任せた。じゃあな。」

「あ、ありがとございました。」


 そう言って足早に部屋を後にする。

 魔石や精霊石の入った籠を持って行ったから、恐らく金庫付きの倉庫か、工房に持っていくんだろう。


「はぁ、全くあの人は・・・・それじゃあ支払いについて説明するよ。」

「は、はい。」


 ぶちぶち言いながらも何処かフィーナさんは嬉しそうだった。

 そしてこの後、代金についての説明を受けた。

 簡単に言うと2億エルという大金は今は無いから、最初に前金の5000万エルを振り込んで、明日銀行に行って借りてくるから、数日後に残りの1億5000万エルを振り込むとの事だった。

 そんなに簡単に借りれるのか?と思うが、マコモはこの国有数の魔道具師であり、その信用は相当なものだ。

 更にSランクやAランクの魔石や精霊石ともなればオークションに出せば、借りた金の倍にもなる為、利子を取れる銀行からしてみれば是非是非なのであろう。

 ちなみに、この国は各州毎に1つだけ銀行があり、どの銀行の口座でも何処に行っても引き出せるらしい。

 独占禁止法が無いのか?と思うが自由競争にして銀行が潰れる方が問題みたいだ。

 それに各州から出たら駄目みたいなので、それなりに整合性は保たれているのだろう。

 最も、各州の銀行産業を独占する代わりに地方自治体(州•市町村)に融資をしたり、利子が決まってたりと色々と制約もあるみたいだ。

 そして、その後にフィーナさんが作ってくれた夕食をご馳走になり、店を出た時は夜の8時頃だった。

 鉄道はまだ運行していると思うが、無理していく事じゃ無いので、今日は宿を取って泊まる事にした。

 そして目に止まったのは精霊の安らぎという名前の宿屋だった。

 確かに外観は植物がたくさん生えており、計算されてデザインされている感じがした。

 少し高そうだが、まぁお金は沢山あった。


「すみませ〜ん、お部屋は空いていますか?」

「はいは〜い、いらっしゃいませ、空いてますよ。1泊素泊まり800エル、朝食付きなら850、夕食付きなら950だよ。一番いい部屋ならプラス500だね。」


 声をかけると出てきたのは見た目は20代くらいのエルフの女性である。

 フィーナさんもそうだが、エルフはある程度成長すると、成長が止まる為20歳の見た目と200歳の見た目が殆ど同じである。

 その為、見た目に騙されてはいけない。


「じゃあ、普通の部屋で1泊朝食付きでお願いします。」

「はいよ〜、850エルね。」


 850エル、8500円か。

 首都の宿だと考えると、安い方かな?

 そう思い100エル札8枚と50エル硬貨1枚をわたした。

 ちなみにお札も硬貨も日本円と大して変わらないが、絵柄が日本円より豊かで、日本円だと肖像画だが、スフィアナエルは自然の風景画が印刷されている。


「はい、確かに。お客さんの部屋は3階の302号室ね、はいこれ鍵。」

「ありがとうございます。」


 そう言って部屋の鍵を貰い部屋へと向かった。

 階段は木をふんだんに使った螺旋階段であり、ログハウス風に感じた。

 そして、オートロックの部屋に入った。

 すると、そこは至る所に植物がプランターに入った状態で飾られ、非常に心地よい部屋だった。

 恐らく、ここの従業員の誰かが、木属性の中精霊と契約しているのか、非常によく手入れされていた。

 そして風呂に入るのが面倒になった為、清浄化魔法の『クリーン』をかけて、綺麗にした後、そのままベットに倒れこんだ。

 そして、そのまま疲れていたのか寝てしまった。








静寂の精霊のスティネールは英語のStillnessから

植物の精霊のバジュンテールも同じく英語のVegetationから

漆黒の精霊ダークネアは暗闇の英語であるDarknessから

気配の精霊スティンも英語のSignから取りました。

他にも特化精霊は沢山居ますが、英語から名付けたいと思います。



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