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第17話、レステア紛争.第一陣攻撃開始!

 


 精霊歴4025年4月5日、レステア島レステラート市郊外、スフィアナ連邦国陸軍レステラート駐屯地。

 レステア島の最南端に位置するレステラート市は沖縄県で言う那覇市規模の都市である。

 民間のレステラート空港があり地方裁判所やレステア国税局などの国の機関なども置かれており、そんな都市の唯一の軍事施設がレステラート駐屯地である。

 そんなレステラート駐屯地の周りが木々で覆われた場所に突如ぽっかりと空いた場所に普通に生活していたら見慣れない車輌が止まっていた。

 その車輌の周りでは陸上迷彩服を着た軍人達が慌ただしく動き回っており、空から発見されにくいように陸上迷彩のネットがかけられていた。

 見る人が見ればその車輌がミサイル発射機のように見えるが、実際にその車輌はミサイル発射機であった。

 LMMG-4(Long-range Multi-purpose Magic Guidance bullet-4 type:長距離多用途魔導誘導弾4型)と名付けられたそのミサイルは簡単に言うと対艦ミサイルである。

「魔法の世界にミサイルなんて!」と言う人が居るかもしれないが、魔法と魔法をぶつけ合って戦うのは100年程前に終わっており、現在は魔法と科学技術が融合した新しい学問である魔導工学を応用した兵器が軍の主力である。

 今や目視圏外からの攻撃など、視界に入らずに終わる戦争が常識となっている為、一般的に視界内でしか攻撃出来ない魔術師が幾らいてもアウトレンジ攻撃をくらえば終わりなのである。

 と言っても魔法が役に立たない訳ではない。

 魔導工学は魔力を使う事を基本としている為、装備を動かすにも魔力が必要なのである。

 平時は専用の施設から供給されるが、戦時では兵士の魔力を供給して使う事も普通にある。

 そもそも兵士が持っている魔導銃は地球の小銃とは違い火薬により発射される仕組みでは無く、射撃者の魔力を使いそれを火薬として銃弾を発射するのである。

 当然ながら、火薬式の銃がない訳では無いが、コスト•携行する弾薬量•銃の寿命などの観点から、どの国も試作止まりであり開発して配備している国家は1ヶ国も存在しない。

 そんなこんなで、スフィアナ連邦国とレムリア帝国との戦争原因となったレムリア帝国海軍艦隊はこのレステア島から南西方面に900km地点をレステア島に向かって現在も航行中である。

 LMMG-4の最大射程は800km程であるが、700km地点で発射する予定である。

 地球の対艦ミサイルが150〜200km程度の射程なのを考えるとLMMG-4は十分に長距離対艦ミサイルと言える。

 見た目は日本の12式地対艦ミサイルと同じ発射機であり、射撃システムも地球の対艦ミサイルと似通っている。

 ミサイル発射機には6発が搭載されており、地球の対艦ミサイルの3倍程の射程だが、大きさは同じなのを見ると地球のジェットエンジンよりも魔導ジェットエンジンの方が効率が良いみたいだ。

 そして、LMMG-4の発射準備をしている場所から離れた場所にあるレステラート駐屯地内地下にある臨時部隊指揮所では陸海空軍の各部隊の隊長達が集まり作戦の最終調整を行なっていた。

 当然ながら海軍基地や空軍基地にもこういう地下司令所はあるが、レステラート駐屯地の地下指揮所が一番警備が厳重で装備も充実なのだ。


「起点をここ、レステラート市庁舎として敵艦隊が700km以内に入った時点でLMMG-4による第一次ミサイル攻撃を行う。第一次攻撃の結果次第では第二次攻撃に移るが、基本的には一次攻撃であとは空軍に任せる。」


 陸軍の将校がタブレットで付近の画像を指して説明をする。

 陸軍将校が画面をタッチして選択画面から選択すると、レステア島の最南端にミサイルの記号が4つ現れLMMG-4の射程圏である円形が表示された。


「あぁ、4機のB-6戦略爆撃機による巡航ミサイルの波状攻撃を行う。」

「海軍の作戦は中止となったと聞いたが?」


 波状攻撃とは複数の部隊が間をずらして同じ目標を連続的に攻撃する事であり、押しては引く波のように次から次へと攻撃を繰り返す。

 今回の場合は4機のB-6戦略爆撃機が巡航ミサイルをずらして敵艦隊を攻撃する予定である。

 そして空軍の将校が作戦を話していると、本来の作戦から外された海軍の将校が質問した。

 本来の作戦ならこの波状攻撃に海軍の潜水艦による魚雷攻撃が加わる筈だった。


「あぁ、本省からある情報筋の情報で、別の艦隊が来てるらしい。だから海軍はその別働隊の発見の殲滅を任せる。」

「別働隊ね、航宙軍も衛星や無人機による捜索を行うわ。」

「なるほど、分かった・・・しかし、ある情報筋ねぇ・・・」

「ある情報筋という事は・・・まぁ、分かった。」


 この場合のある情報筋は一つしかない。

 スフィアナ連邦国にも諜報機関は存在するが、別に非公式ではない為、わざわざ隠す必要は無い。

 ある情報筋とは、つまり精霊からの情報という事である。

 ()()()に精霊は他の種族に比べて特別な存在な為、人間の行う事に干渉する事は無い。

 ただ、レムリア帝国は精霊に関して否定的であり、人族至上主義国家である為、精霊にとっても都合が悪い。

 その為、協力する事がしばしばある。

 その時に精霊が提供してくれる情報の提供元は決まってある情報筋と呼ばれるのである。

 そしてそのような事は上級将校しか知らないが、此処に居る3人は全員、その上級将校だった。


「作戦を伝えたところで、本島以南の避難状況を教えて欲しい。」

「あぁ、避難は9割がた完了している。民間機や空軍の輸送機、民間フェリーや漁船、全てを動員している。」

「有事避難命令補償法の適用が発表されたから余計だ。」


 基本的に避難勧告は州が、避難命令は国が発令する事ができる。

 そして有事避難命令補償法とは国が避難命令を発令し、その後自然災害が戦争などにより企業や個人などの資産が損傷した場合に国がその7割を補償する法律である。

 今回はレステア島以南の島々に避難命令が発令されている。

 既に2日前に避難命令が発令されている為、9割がたの住民は避難済みである。


「既に空軍の戦闘機と敵艦隊の艦載機による戦闘が行われている。武装は全て対空ミサイル。重い対艦ミサイルは一切積んでいない。」

「敵戦闘機の被害予測は?」


 基本的に空対艦ミサイルの重さは500kg程あり機内に入らずに翼下に搭載しなければならない程大きい。

 しかし空対空ミサイルなら100〜150kg程で機内のウェポンベイに搭載可能であり、機体の性能にも直結する。

 その為、対艦攻撃に出た戦闘機は攻撃に失敗すると機体に残っている対艦ミサイルを放棄して、機体を軽くしてから帰投する程である。


「どうやら敵の戦闘機はVTOL機らしい。今のところ15〜20機程度は潰しているか、戦闘不能になっているそうだ。」

「VTOL機か?STOL機じゃ無いのか・・・」


 本来なら余程小さい空母でも無い限り、戦闘機の性能を犠牲にするVTOL機では無いSTOL機を搭載するのが基本である。

 しかし地球世界の日本やイギリスの場合は空母の大きさと滑走路の長さが短い離島でも運用可能なようにVTOL機を採用すると言う理由もある。

 ただ、軍事的には日本やイギリスのような海洋国家というよりアメリカや中国のような大陸国家の方に似ているレムリア帝国はこれまでVTOL機の開発はSTOL機に比べて開発していなかった筈である。


「あぁ、どうやら占領を目的とした編成みたいだな。」

「STOL機でも十分だろうに・・・」


 VTOL機は侵攻など行わずに自国周辺の防衛のみを行う国で採用されるが、侵攻を行う国でも、占領地の飛行場の滑走路が破壊された場合でも使用可能なVTOL機を採用する例もあった。

 レムリア帝国はこの国のうちの1ヶ国であった。

 ちなみにスフィアナ連邦国ではVTOL機の開発は行われておらず、他国から購入している。

 そして、そうこう作戦について話していると空軍基地から連絡が入った。


「あぁ、俺だ。なるほど。分かった、監視を続けてくれ。」

「どうした?」

「監視中のE-4から敵艦隊が750km圏内に入ったそうだ。」


 航空機の無人化が現在進んでいるが、流石に通信量などの観点から早期警戒管制機の無人化は現状不可能であった。

 その為、現在安全圏内で敵艦隊の監視任務についていた。

 そして、700km圏内に敵艦隊が入れば4基のLMMG-4発射機からミサイルが発射される予定だった。

 現在の艦隊は15ktで航行しており、このままだと後約2時間弱で射程圏内に入る予定だった。


「後2時間か・・・」

「・・・空軍のB-6もいつでも出撃出来る体制を整えています。」

「現在、海軍は3個巡航艦隊を6個に分けて付近海域の警戒を行なっています。」


 戦争が始まった時にたまたま近くにいた第4巡航艦隊と第8巡航艦隊、そして近隣の基地から緊急出航した第2打撃群所属の第12巡航艦隊がレステア諸島沖海域に居た。

 4隻で構成されている巡航艦隊はそれを2隻づつに分けて潜水艦と合わせて付近海域の警戒に当たらせていた。

 これは別働隊の捜索という理由もあるが、そちらの方は空軍の無人偵察機などのドローンが行なっていた。

 そして2時間も経たないうちに、本省(防衛総省)の合同参謀本部から敵艦隊への攻撃命令が正式に下された。

 陸軍将校は本部からの命令があった後、対艦ミサイル攻撃陣地の現場指揮所に連絡を入れる為に無線機を持って強い口調で命令した。


「経った今、本省から正式に攻撃命令が下された。これより攻撃に移れ!」


 すると、現場部隊からとみられる返答が無線越しに聞こえてきた。


『こちら射撃部隊。了解!』


 了承の返答が聞こえた1分後、各将校が持つタブレットの地図のミサイル発射機のマークから敵艦隊の方へと赤線が伸び、その後直ぐにミサイルのマークが発射機より放たれた。

 すると、その発射した時、空軍将校が別の無線機を持って命令した。

 無線機越しに聞こえる起動音がらどうやら相手は航空機内に居るのようだ。


「こちら司令部、経った今第一陣の攻撃が始まった。上空に待機している部隊、攻撃は約10分後に行え!」

『こちら爆撃機部隊、了解!』


 こうしてスフィアナ連邦国軍部隊はレムリア帝国海軍艦隊に対して先手を打つ事となった。

 第一陣でレムリア帝国海軍艦隊25隻を相手するのはスフィアナ連邦国陸軍第5多用途ミサイル連隊のLMMG-4と航空宇宙軍航空総隊隷下第4002戦術航空隊のB-6戦略爆撃機から放たれる超音速のミサイルだ。



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