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第14話

スフィア大陸から南に3000km程の場所にあるレステア諸島は地球の沖縄諸島と同じような形成•面積であり、主要島のレステア島の面積は約1400㎢と沖縄本島の1200㎢より大きい。

 逆に、人口は約80万人と沖縄本島の約120万人より少ない。

 その為、行政区分はスフィア大陸から南に1200km程、レステア島から北に1800km程の中間地点にあるローデシア島という2万8000㎢の面積と1500万人程の人口を有するローデシア州の一部である。

 そんなスフィア連邦国最南端に位置するレステア島を含むレステア諸島は現在も戦争中であるレムリア帝国の最前線に位置しており、軍事的な要所でもある。

 レステア諸島からレムリア大陸までの距離は約4500km程離れており、レムリア帝国はレステア諸島の領有権を主張している。

 その為、スフィアナ連邦国軍はレステア諸島に約2万5000名程の軍隊を配備しており、後方のローデシア島を含めるとその兵力は15万人程にもなる。

 そもそもスフィアナ連邦国軍の総兵力は100万人もおらず、人口は日本の約2倍程だが、面積比率で言うと日本の自衛隊より遥かに少ない。

 そんな軍隊が15万人も配備されているのがこの諸島の軍事的重要度を物語っている。

 レステア諸島には2ヶ所の主要空軍基地を始め、4ヶ所の陸軍基地と12ヶ所の陸軍駐屯地、1ヶ所の海軍基地とその他多数のレーダーサイトが配置されている。

 規模で言うと1個戦闘飛行団(2個飛行隊48機)と1個師団•旅団(1万2000•7000名)1個地方艦隊(8隻)である。

 レムリア帝国とは5年前の休戦協定により休戦中だが、講和条約が結ばれた訳ではない為、現在も戦争中である。

 その為、警戒態勢は未だ解除されておらず、デフコンレベルは5段階で2であり平時態勢であるものの要警戒であった。

 デフコンレベルとは軍の警戒態勢を表している指標であり、1〜5までの5段階ある。

 デフコンレベル1と2がいわゆる平時態勢、3と4が警戒態勢で5が戦時態勢である。

 ちなみに5年前の休戦協定以前はレステア諸島ではデフコンレベル4であった。

 そんなレステア諸島だが、現在は一応平時態勢という事もあってかなりの観光客がレステア諸島を訪れている。

 レステア諸島は日本で言うハワイや沖縄みたいな気候である為、南国の海を求めてスフィアナ大陸の自国民だけでは無くリディーラ大陸の他国の観光客も訪れている。

 そもそも、レムリア帝国との戦争中でも距離の問題で海から渡ってくるしか方法が無くそんなレムリア帝国海軍艦艇をスフィアナ連邦国軍が捉えるのは容易だった為、島が攻撃された事がここ百数十年間無い。

 そもそも宇宙開発を行い人工衛星を打ち上げ、宇宙から監視しているスフィアナ連邦国とは違いレムリア帝国は未だ人工衛星を保有していない。

 最も、レムリア帝国に人工衛星を保有させる訳にはいかない為、スフィアナ連邦国やその他のNATO諸国が撃ち落としているのだが、宇宙条約が存在しないこの世界ではそれも可能であった。

 NATO内では宇宙の平和利用を推進しているが、レムリア帝国はNATO諸国と戦争中な為、NATO諸国の敵であるレムリア帝国の宇宙開発を阻止•妨害する事は認められていた。

 これまで十数基のロケットを打ち上げだが、全て撃ち落とされており失敗している為、予算の無駄とレムリア帝国内で非難され、最近は打ち上げすら行っていないようであった。

 その為、レムリア帝国は宇宙からの監視はおろか近代戦争を遂行する上で必要不可欠なGPSすら使用出来ていない為、スフィアナ連邦国に勝てる筈もない。

 更に宇宙開発が出来ない事により帝国内での経済や技術開発にも影響が出ており、そもそも交流が無い為、専門家の間ではレムリア帝国とHSTO諸国の間では10年から分野によっては30年程の技術格差があると言われている。

 そんなレステア諸島の南部にあるフォルテ空軍基地には1個戦闘飛行隊と1個警戒飛行隊が配備されていた。

 そして今、第302警戒飛行隊に所属するE-4早期警戒管制機が滑走路を使い飛び立とうとしていた。

 E-4早期警戒警戒機はスフィアナ連邦空軍を始めNATO各国空軍に採用されているベストセラー早期警戒機である(モデル名:E-767)

 元々民間機だった機体を改装した為、機内スペースに余裕があり航続距離が長いのが特徴である。

 そんなE-4は誘導路から滑走路に到着すると翼下に取り付けられている左右1基づつの計2基の魔導タービンエンジンを回し始めた。

 魔導タービンエンジンとは地球には無いこの世界特有のエンジンである。

 石油が無いこの世界では石油の代わりに魔石と呼ばれる資源が重要な鉱物資源となっている。

 ほぼ全ての魔導具に備え付けられ、魔導タービンエンジンはこの魔石内に貯蔵されている魔力を用いて推進力に変えている。

 言ってしまえば地球で言う電池であるが、電池より用途が広く、燃焼効率も地球のガスタービンエンジンより2倍程良い。

 ちなみに魔導レシプロエンジンも地球のレシプロエンジン•ピストン機関より3倍程燃焼効率が良い。

 そんな魔導タービンエンジンが取り付けられているE-4早期警戒管制機は2450mある滑走路の半分程使って離陸した。

 離陸してから2時間後、E-4は予定通りの進路を飛行して警戒態勢に入った。

 そしてレーダー要員の1人が30分毎の定時報告をしてきた。


「現在、魔導レーダーに不審なエコー()は見当たりません。」

『こちら機長、了解。引き続き警戒に当たれ。』

「レーダー担当、了解。」


 E-4には現在、操縦担当2名とレーダー担当8名、補助要員2名の計12名の要員が搭乗していた。

 そしてこのE-4早期警戒管制機は元が旅客機な為、レーダー関連装置やその他色々な機材を搭載してもかなりスペースが余っている。

 その為、機内でも各担当場所間は機内無線で連絡するのである。

 そして、7時間にも渡る警戒監視活動は尋常無く退屈で暇なのである。


「はぁ・・・・暇だ。」

「お前暇ってな。暇なのは平和な証拠だぞ?もしレムリアの戦闘機や艦隊が現れてみろ。こんな鈍足な機体はミサイルで一瞬で海に叩き落されるぞ!」

「・・・この機体に備え付けられているレーダー、探知半径700kmありますから大丈夫でしょう。」

「艦艇の防空レーダーでもこの機体の探知範囲外からの探知は不可能でしょう。そもそも高度が違いますから。」


 戦時なら早期警戒管制機を護衛する為に、常に2機〜3機程の戦闘機が張り付いている筈である。

 しかし今は平時であり、そもそも戦闘機の航続距離と元旅客機の航続距離が違いすぎる為、今は無防備な状態である。

 確かに上司の言う通り戦闘機が来たら抵抗出来ずにミサイルの餌食になるだろう。


「一応、付近に海軍さんの第8警戒艦隊が居ますし。」

「はぁ、お前ら・・・もういい、ちょっとコーヒーを頼む。」

「はい、レナさんは何飲みますか?」

「私?私は緑茶で良いわ。」

「緑茶好きだねぇ〜、俺は紅茶派だけど。フリッツさんはどうします?」

「俺もコーヒーで良いよ。まぁ、休憩は必要だ。何せ7時間の警戒監視だからな。」


 第8警戒艦隊は地方艦隊に属する小規模艦隊である。

 レステア諸島の海軍基地所属であり、地方艦隊は3隻の駆逐艦からなる地方巡航艦隊と3隻の沿岸域戦闘艦艇からなる地方隊から成り立っている。

 ちなみに、この3隻の駆逐艦は海上自衛隊みたいに護衛艦隊のお下がり艦艇では無く、地方艦隊用に建造された2000t〜3000t級の小型駆逐艦である。

 ちなみに沿岸域戦闘艦艇は1000t〜2000t級であり、外洋航海には向いていない。

 小型駆逐艦はヘリコプターの着艦が可能(常備機は無し)だが沿岸域戦闘艦艇はヘリコプターの着艦は考慮されておらず軍用ドローンしか不可能である。


「・・・レムリアの奴らも諦めて講和条約結べばいいのになぁ。」

「レムリア帝国は帝国主義ですから国内の不満を国外に向けないと国が維持出来ないでしょう。その吐け口としてウチとの戦争ですから。」

「その戦争に負けてたら本末転倒だと思うけどな。」

「5年前の講和交渉も大変だったようですしね。」


 5年前の講和条約は話の擦り合わせから締結に至るまで2年程掛かった。

 担当した外務省職員が「もう二度とレムリア帝国とは交渉したく無い」と言うほど酷い交渉だったようで、外務省は少しでも長く停戦期間が長くなるのをどの中央省庁よりも望んでいた。


「レムリアの戦闘機は未だに主力が第4世代だぞ?我が国は第5世代に移行しているっていうのに。」

「今開発中の最新鋭機は第6世代らしいですね。」

「・・・そもそもレムリアからここまで4500km程あるんだろ?どうしても空母に積まないと持ってこれないからな。」

「空母の艦載機ですと陸上機より性能が落ちるみたいですね。」

「そもそもレムリアの艦艇建造技術では4万tクラスの艦艇が限界だそうだからVTOL機でもない限り20〜30機が限度だろう。」


 当然ながら艦載機は陸上機と比べ搭載弾薬の制限や足回りの強化、翼の折り畳みなどの制限が多く、その分性能は下がる。

 同型機でも艦載機型は性能が落ちるのが普通である。

 レムリア帝国は艦艇は数多く建造しているが、建造技術が未熟で大型艦艇を建造するドックが無い為、大型艦艇は建造出来ない。

 一方のスフィアナ連邦国は6万t級の空母を6隻保有しており、6年に1隻建造して1隻退役している為1隻辺りの寿命は36年となる。

 小型艦艇なら長いが、空母などの大型艦艇としては短い艦寿命と言える。

 例にアメリカの原子力空母なら(通常動力だが)燃料棒の交換が25年に1回でそれに合わせて50年程であった。

 理由としては常に最新鋭の空母を配備する事と、搭載している魔導タービン推進機関の寿命が35年から40年だからである。


「VTOL機でも30機程が限度ですね、そもそもVTOL機では整備の問題や航続距離の問題がありますから、ないでしょう。」

「艦艇建造能力だけの問題だけではないと思うんだがなぁ。」

「そうですね、レムリア帝国は空母より先に高性能な防空駆逐艦の建造が急務だと思うんですが。」

「そんなレムリア帝国は今空母を10隻程持ってるらしいぞ。」

「見栄えが良いですからね。」


 VTOL(短距離離着陸型)機は離着陸するのにカタパルトや滑走路が必要無い為、狭いスペースでも運用が可能である。

 強襲揚陸艦などに搭載されていたが、地球世界ではイギリスの【クイーン•エリザベス級】が空母艦載機を艦載機用のF-35Cでは無く、短距離離着陸型のB型を導入した。

 イギリスの場合はカタパルト技術が無かったのと、多目的艦にしたかった為、必要に応じて艦載機を減らせるようにしたかったからである。

 その為、単純に戦闘用ならVTOL機よりSTOL機の方が性能や航続距離の観点から見ても有利である。

 ちなみにスフィアナ連邦国の空母は全てSTOL機である。

 ちなみにVTOL機は地球より開発されているが、これはNATOの中小国家が2.5万〜4万tの空母を保有しているからである。

 ちなみにこれらの建造を行なっているのは建造経験が豊富にあるスフィアナ連邦国である。


「張りぼての可能性が大だな。」

「そもそもレムリアって陸軍国家だろ?そんな数十年で海軍に関する知識は手に入らないと思うが。」

「そこはゴリ押しと尊い犠牲で賄っているんでしょう。」


 そもそもレムリア帝国とスフィアナ連邦国や他のNATO諸国は全く交流は無く、互いに大使館すら置いていない。

 これはもし有事の際にレムリア帝国に派遣した大使館職員の安全が保障出来ないからである。

 第二次大戦の日本とアメリカでさえも双方大使館を閉鎖しておらず大使館職員も無事だったのだが(後に双方帰国させたが)、それすらも出来ない程の国だと言う事である。


「まぁ、人工衛星が無い時点でNATO軍に勝つのは無理だと思うけどな。」

「宇宙技術に30年の差がありますからね。そもそもロケットが次々と撃ち落とされてますから、主に我が国に・・・」

「衛星で直接攻撃しないだけマシだろ?」

「宇宙協定で決められてますからね。」

「NATO諸国共同運用で打ち上げる予定らしいが・・・」

「それが一番最善の策でしょう。」


 レムリア帝国の宇宙開発をNATO諸国が阻止しているのは広く知られている話で、あんな国に宇宙開発して欲しく無いと言うのが諸国民の思いである。

 地球で言う宇宙の軍事利用を禁じた宇宙条約はこの世界には存在しないが、NATO内に宇宙の平和利用を記した宇宙協定が存在し、MATO全加盟国が署名している。

 その為、現在宇宙から地上を攻撃出来る兵器の計画が存在するが、それはNATO軍が運用する予定である。

 ちなみにこのNATO軍は各国の指揮命令系統から完全に独立した軍隊であり、NATOの安全保障理事会でのみ運用する事が認められており、その予算は各国のGDPの0.1%である。

 レムリア帝国の場合はNATO軍を派遣する程の事では無いとされており、現在は無政府状態が続くナスヴァルナ大陸の警戒•監視に派遣されて

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