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第11話、精霊契約

 


「はぁ、もう色々と驚き過ぎて疲れたわ。」

「そうですね、もう深夜の1時ですから寝ましょう。一応部屋はあるから2人はそこで寝ていいよ。」

「はい、分かりました。」


 なんか2人ともかなり窶れたような。

 っていうか数時間前まで大賢者3日間くらい寝てなかったか?

 まぁ、寝れるなら良いけど。

 そして、グローテルさんは2人で寝かせようとしていたが、ラフテルさんが異議を唱えた。


「ちょっと待って!もしかして2人は一緒に寝る気?」

「レインは私の婚約者なのですから当たり前です。」

「駄目駄目!王族が未婚の女性とそんな事して良いの?」

「いや、して良いの?って精霊界に行った時は2人で寝てましたよ。」

 

 俺がそう言うと大賢者が固まった。

 地球の王族や皇族なら色々とうるさそうだが、スフィアナ王家では全く普通なんだよな。

 って言うより、そんな事言われた事が無い。

 寝室は1人だし、中から鍵をかけるタイプの扉で、更に結界もはる為、中の音が外に聞こえる事は無く、外から開ける事も出来ない。

 トイレも中にある為、部屋から外に出る必要性が無い。

 城はある時間以降は防犯システムが作動し、廊下に出てしまったらベルが鳴り響き保安隊員が銃を持って飛んでくる為、部屋から出られない。

 精霊界にある精霊城もそんな感じらしく夜になるとティリファが空間転移で俺の部屋に直で転移してきて夜遅くまで話していた。

 バレようが無いから気づいたら朝ベットの隣にティリファが居た事もしばしばある。

 別に今更一緒に寝る事に抵抗は無い。


「・・・精霊界って、行った事あるの?」

「え、えぇ、何度か・・・良い所ですよ。」

「ちょっと待って。・・・・はぁ、普通はね。精霊界は行けないのよ?」

「はい?行けないってどう言う事ですか?」


 いや、何回も精霊界には行った事もある。

 精霊界は神界と地上界のちょうど間にある精霊の空間であり、自然豊かな場所でもある。

 地上では珍しい草花などが咲き誇っており、希少動物などもチラホラいた。

 俺はティリファと一緒に遊ぶと言ったら城の庭か精霊界かのどちらかであり、精霊界に行けるのは普通だと思っていたが、違うの?


「精霊界は空気中の魔力量が多過ぎて、普通の人が行くと一瞬で魔力中毒になるのよ。更に精霊界は精霊とじゃないと行けないから、過去に行った人は・・・」

「いや、毎回色んな精霊に魔力軽減の魔法をかけてもらっているから問題無いですよ。魔法撃っても直ぐに魔力が回復しますから練習場所には丁度良い所ですよ。」


 多分、学園で魔術の成績が良かったのも周りの被害や魔力切れを気にする必要無く精霊界で練習出来たからだと思う。

 更に暇な始祖精霊や特化精霊などが協力してくれて色々な精霊魔法や通常魔法などを撃ちまくった記憶がある。

 その教えてくれた始祖精霊が、後に城の書庫で滅多に人前に姿を現さないと書かれていて、嘘だと思った事もある。

 でも、今の話を聞いたら納得かも。


「・・・師匠、確か魔力低減って始祖精霊のみが使える唯一無二の精霊魔法じゃなかったですか?」

「そもそもの話、精霊界に入るには精霊女王の許可がいるはず。許可貰えないと入れてくれないから、始祖精霊が協力してくれるのも頷ける話ね。」

「そうですね、しかしよく精霊女王が認めましたね。」

「ん〜、最初は勝手に行ってたけど、お母様に報告しなさいって言われたから言ってるだけ。そもそも私とレインの婚約はお母様と認めてるから拒否する理由は無いのよね。」


 確かに最初に精霊界に行ったのはティリファに連れられて転移魔法で行った時だ。

 あの時はいきなり自室から自然豊かな場所に転移して非常に驚いた記憶がある。

 それを何回か繰り返していると精霊女王(当時はそんな凄い精霊だとは全く思ってなかった)にバレて一緒に怒られた。

 その後は精霊女王や他の始祖精霊などに行ってから行く事にしたけど、行く回数が変わる事は無かった。

 そして、大賢者ラフテルと賢者グローテルはティリファの話を聞いて絶句していた。

 あれ?


「・・・ちょっと待って。お母様って大精霊?」

「はい?ティリファは精霊女王の娘ですよ。」

「・・・・・・はっ!!!???」

「え?ちょっと待って。精霊女王の娘?」

「ええ、そうよ。」


 あれ、言ってなかった?

 ティリファが精霊王女だと分かって接していると思ってたけど、違うみたい。

 グローテルさんは精霊と人間のハーフだから分かると思ってた。

 そこまで詳しい事は分からないと、後で知った。


「レイン、精霊王女と婚約してるの!?」

「何を今更。」

「そりゃあ、精霊界に入るのも自由だ。」

「ちょっと、これは国家機密になるのも頷けますよ、師匠。」

「・・・分かった。ベットは大きいから2人で寝て良いよ。」

「ありがとうございます!」


 なんか、さっきまでの事が嘘みたいに納得したけど、まぁいいか。

 いや、精霊王女と婚約しているから国家機密になっているんですよ。

 別に普通の精霊と婚約しても国家機密にはならないと思う。

 だって王位継承権4位だからね。

 スフィアナ王家は男女どちらが王になっても良いから兄が1人と姉が2人いるから僕は4位になるんだよねぇ。

 だから、帝王学の勉強も兄や姉に比べたら少ないし、結構自由度が高いんだよ。


「では、お休み。今日は色々驚く事があって疲れた。」

「私もです、師匠。レイン君達もお休み。」

「はい、お休みなさい。」


 そう言って大賢者ラフテルは俺が解除した扉を通って昼寝部屋に、グローテルさんは別の部屋にそれぞれ入って行った。

 どうやら僕達の部屋はその奥らしい。

 そう思ってるとティリファが手を繋いできた。


「じゃあ、行こっかレイン。抱き枕の件、覚えているよね?」

「はいはい。覚えてますよ。」


 そして部屋に付いて扉を開けた。

 すると、そこには20畳くらいの広々とした部屋が広がっていた。

 ダブルサイズのベットと座椅子みたいな椅子が2つ置かれ、間に木で出来たテーブルが置かれていた。

 奥側の壁は3分の2程がガラス(?)張りで地上400mで見晴らしが非常に良かった。

 塔は円柱形な為、場所によっては別の塔が見えるのだが、この部屋からは海が一望でき、オーシャンビューだった。

 部屋の調度品などを見ると2人用の部屋みたいだ。

 とりあえず、荷物を置いて夜も遅いし寝る事にした。

 2人揃って寝るのは久しぶりだが、俺は先程の約束通り一晩中ティリファの抱き枕になったのだ。

 暑い。





 翌日、昨日の事はなんだったんだ?と思う程アッサリと大賢者は起きていた。

 ティリファも寝ぼけ眼だが一応起きている?

 そしてトーストとベーコン、スクランブルエッグとコンスープの朝食を食べている時、ふとラフテルさんに言われた。


「そう言えば貴方が来た事、精霊術の塔の大賢者に伝えたわよ。」


 精霊術の塔は精霊に関する事を研究している塔である。

 研究特性上、魔導工学とは深い繋がりがあり、頻繁に情報共有しているみたいだ。

 ちなみに俺は精霊術の塔と魔導工学の塔の2つの塔に誘われていたのだが、魔導工学の塔に来た。

 何故か?当然精霊王女と婚約していると彼等が見逃すはずが無かった。

 ちなみに精霊術の塔の大賢者はラフテルさんより研究者らしい。


「また面倒な事になりそうですね。」

「こればっかりはねぇ。あぁ、彼女の事は精霊王女だと言わない方が良いよ。」

「そうですね。」


 まぁ、精霊に関する事を研究しているならその精霊の王女なんて彼等にしてみれば立派な研究対象だ。

 最も、彼等に協力している精霊は沢山いるので、論理的に問題のある事はしないと思うが、婚約者としてなんか嫌だ。

 幸い、精霊は隠匿が上手な為、こちらから言わなければ問題ないだろう。


「でも師匠。彼等に伝えたなら直ぐにでも来るのでは?」

「さぁ?でもなんか今、忙しいみたいで君の事を伝えても反応が薄かったなぁ。」

「凄い発見でもあったのでは?」

「多分ね。」


 ふ〜ん、かなりしつこく誘って来たが、それより重要ななにかがあったんだろう。

 まぁ、構ってこないならいいや。

 そして朝食を食べ終わり団欒室でソファーに座ってのんびりしていると、突然ティリファが俺に聞いて来た。


「そう言えばレインって本当に私と契約出来ないんですか?」

「うん、残念だけど。精霊魔力が180しか無かったからね。なんで?」

「いえ、レインを見ているとかなりの魔力量がありそうなんですよ。」

「一回やってみたら?無理なら弾かれるし。」

「そうですね、レイン、やりましょう!」

「う、うん。良いけど、なんでそんなに元気なの?」


 いや、ティリファと契約するには精霊魔力が1000程必要だから、180の俺だと弾かれるのは目に見えてるよ。

 いや、俺もティリファと契約したいけど。

 まぁ、やるだけやってみるか。

 そして今、俺とティリファは向かい合って座っている。

 なんか、地味に緊張するなぁ。


「レインは契約のやり方を知っていますか?」

「いや、知らない。」

「そうですか、では私が行うので指示に従って下さいね。」

「分かった。」


 学園で精霊との契約方法を学ぶのは神事の後だから、神事が終わって直ぐに退学した俺はやり方を知らない。

 その為、ティリファの言われるがままにする事にした。


「では、まず眼を閉じて下さい。その後魔力をパスするので。」

「うん、それでこの後どうする・・・うむっ!」


 ティリファの言われた通りに眼を閉じると手を握られた感触が伝わり、その後直ぐ、唇に当たる生暖かい感触があった。

 余りの驚きにこの時、手を伝ってティリファの魔力が流れて来たのだが、全く気が付かなかった。

 否、気づける精神状態に無かったという方が正しい。

 この時に流れる魔力は流される人にとっては非常にくすぐったい感触らしいのだが、それすらも分からなかった。

そして。


「はぁ、あれ?契約が・・・成立しました。」

「・・・え?ほんとだ。ティリファと契約出来てる。なんで?」

「普通に考えればレイン君の精霊魔力量が彼女との契約に必要な精霊魔力量より多かったという事なんだろうけど・・・おかしいね。」

「いや、貴方。なに、ちゃっかりとレイン君とキスしているんですか?手を繋いでいるので魔力のパスは出来るでしょう。」

「いいじゃないの別に。」


 何故か俺とティリファとの契約は成立した。

 俺は暫くキスの事で呆然としていたが、当の本人は契約の成立に喜んでいた。

 精霊と契約すると、その精霊が使える精霊魔法が使えるようになり、双方に魔力のパスが開き、契約者が精霊の魔力を使えるようになる。

 契約を解除する事は可能だが、解除した相手とは二度と契約する事は出来ない。

 そして俺は15歳にして初めて契約する精霊が出来た。

 相手は精霊女王の娘であり、始祖精霊と呼ばれて尚且つ俺の婚約者であるティリファだった。

 これで転移魔法が使えるようになったのだが、まだ俺は再起動出来てなく、ようやく今になって再起動出来た。


「契約、出来たんだね。」

「やっぱり、神事に使った神器が壊れていたのかな?」

「そうですよね、普通に考えれば精霊魔力が高いはずのスフィアナ王家の一族であるレイン君が精霊魔力が低い訳ないんですからね。」

「そうなると、彼の数値が幾つになるか気になるな。」


 神事で精霊魔力値180と表示され、その魔力量では絶対に契約出来ない始祖精霊と契約出来た。

 つまり、これは神器が壊れている事を意味していた。

 そして退学しなくても良かった事を。


「精霊適正があったんだから、王家に戻れるんじゃない?」

「いえ、もう既に王家では僕は行方不明で話が進んでいると思います。今更戻ったところで混乱するだけです。このままここに居ます。」

「私はレインに着いて行くよ。」

「ありがとう、ティリファ。」


 そして、俺はこの塔に居る事を決めた。

 そしてその頃、王家や学園では神事の間違いが発覚して大騒ぎ(上層部が)になっていた。

 後に、この事がキッカケで国の上層部は大騒ぎになるのだが、それは後の話。



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