#2:現状確認
学校のチャイムが鳴る。
六限目が終わりたいていの奴は部活か友人との会話のため教室を出て行っている時間だろう。
そんな中僕と光貴は六限目をさぼり普段使われない緊急階段の踊り場でジュースを片手に話ていた。
「じゃぁ、要するに雨音はその異世界に行く未来から帰ってきたってことか?」
「まぁ、そういうことだな。」
そういうと光貴は考え込むように少し下を向くとつま先をリズミカルにトントンと階段にあてる。そのしぐさがとても懐かしく思えて思わず笑ってしまうが光貴は気づかずに考えている。そしてしばらくすると光貴は顔をあげ言った。
「まぁ雨音が嘘をついてるってことは今朝のことからもないだろうしな。その前に二週間後どうなるのかを教えてくれないか?」
「あぁ。そうだな、、、まず俺たちを含め約120人が三校から世界に召喚される。」
そういうと光貴は少し首をかしげて聞いてくる。
「世界?」
「もっと言うと神どもなんだが。まぁそれは後回しだ。召喚された三校の召喚者ははそれぞれ別々の三国に召喚され、それぞれの国で魔王を倒す英雄にされる。そこからはよくラノベにある通り魔王を倒す旅っていうか国巡りだな。拒否はいちよう生産職だけできたな。それ以外は強制。」
「ん?なんでその三校なんだ?たまたまか?」
「いや、うちのクラスに川端真司っているだろ?」
「あぁあいつがどうしたんだ?」
「あいつがいわゆる勇者で、今回の中心人物なんだが。あいつの近しい人物。または仲のいい人物がよばれる。まぁそれだけじゃなくてその呼ばれた奴と同じ空間にいた奴らも呼ばれるが。」
「へぇ、じゃぁ俺らはその日教室に行かなけりゃ、呼ばれないってことか?」
そう光貴が聞くが僕は首を振る。まぁ、そう考えるのが当たり前なんだが。残念ながら違うんだよな。
「いいや。ほかの学校の奴らならそうなんだが、俺らの場合は違う。俺らはどこにいても呼ばれるんだ。」
「なんでわかるんだ?」
「その日三人休んだ奴らがいたんだが、そいつらも呼ばれてたからな。」
そういうと光貴はまた少し考えこんで一つうなずくと顔をあげる。
「なるほど。大体分かった。けど一つわからんことがあるんだが聞いていいか?」
「いいぞ。」
「じゃぁ、今朝のあれは何だったんだ?」
「あぁ、それを言うのを忘れてたな。光貴は俺らより150年ぐらい先に呼ばれてたんだ。」
「それはどうして?」
「しらん。」
そういうと光貴はポカーンとした顔をして突然噴出した。
「そんなことをどや顔で言うなよ。」
「知らんことは知らんからな。と、言うより150年ってところは引っかからないんだな。」
「そんなん今どきのラノベで売るほどあるだろ?例えば向こうとこちらでは時間の流れが違う、、、とか。」
「あぁ確かにな。でも説明をしなくちゃいけなくなくて楽だったな。」
「ん?説明できるのか?というより時間の流れが違う、、という感じじゃないのか?」
「あぁ、、なんて言うか、そもそもこの世界とあちらの世界はかかわりがないんだよ。」
「ん?う~ん?よし。今はまだその説明をしなくていい。絶対わからんだろうからな!」
「光貴もそんなことどや顔で言うなよ。」
そう僕が言うと光貴はそうだなと言って笑った。
あぁ、この日々が懐かしい。そう僕は思うと同時に一つ光貴に嘘をついたことを思う。
本当はなぜ光貴が先に召喚されかけたかを僕は知っている。けどそれを周りを大切にする光貴に伝えるということは僕にはできなかった。
光貴を呼んだのが未来のクラスメイト達だったなんて。ましてやその理由が、贄にするためだなんて。
でも大丈夫。今回なら僕が助けられる。未来で僕を助けて死んでいった人たちも。僕のせいで死んだ人たちも。きっと今度こそ。
そんなことを考えていると下の階からかつかつと一定の足音がする。
「ん。誰か来たな。」
光貴がそう言うのを聞いて時計を見ると四時半になろうかというぐらい。
「じゃぁそろそろ帰るか。」
「さぼったんだから担任に見つからないようにな。」
そして僕たちは階段から校舎内に戻った。戻る瞬間ちらりと階段のほうをみるとクラスの鎌田さんと秋月さんだった。
「あぁ、鎌田さんと秋月さんだったんだな。」
僕がそういうと光貴はふーんと言ってから突然止まった。
「どうしたんだ光貴。」
「雨音。今、なんて?」
「だから、鎌田さんと秋月さんがいたんだなって。」
「なぁ、足音は一人分じゃなかったか?」
「ん?あぁそうだっけ?」
言われて思い返してみるけれどそもそもそんなことを覚えていない。というか覚えている光貴が異常なんじゃないか?
「そうだとしてなんだよ?」
「いや、もし聞かれていたら後々面倒じゃないか?」
「そんなの信じるやつがいるわけないだろ?どうせ中二病の集まりだと思われるのがせいぜいだろうよ。」
「いや、確かに今はそうだろうがあっちに行った後はどうだ?」
「あー。」
そうだ確かに光貴の言う通り今はいいが転移してからは面倒くさくなっていく。言いふらされでもしたら最悪だ。だが、それで下手に聞いてませんでしたとなれば墓穴を掘るだけだし、どちらが聞いていたかもわからない。それに、二人とも上がってきていて片方の足音が聞こえなかった可能性もある。
「なぁ雨音。」
「ん?なんだ?」
「もし、本当に異世界とやらに行くのならこちらで協力者を作っておいたほうがいいんじゃないのか。」
「それはもちろん考えたが、、、」
僕は前回裏切られて死んだ。その事実は時を戻そうとも僕の中で覆ることはない。もし裏切られたら、という思いがまだあるのだ。
けれど確かに後々面倒になる可能性は少しでもつぶしておきたいし、確か秋月さんは趣味的にめんどうくさかったような気がする。などと悩んでいると光貴がこちらを見てくる。
「、、、なぁ雨音別に無理をしなくてもいいんだぞ?別にあの二人が聞いていたという確証があるわけでもないし俺の聞き間違いかもしれない。それに確かに中二病の集まりとして取られるだけだろうしな。」
それを言う光貴の顔は明らかにこちらを心配しているかのような顔だった。なら、友人として安心させないとな。
「、、、いや、あの二人には話そう。」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫に決まってんだろ。」
そういって笑うと光貴も笑いすぐに真剣な顔になる。
「なら、どうやってあの二人を仲間に入れるかだな、、」
そういって考え込む光貴を見てニヤッと口元をゆがめながら昔何かのアニメで見たことのあるような表情になるように努めつつ僕は自信満々に言った。
「大丈夫俺に策がある。」