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西郷さんがツンを連れて予定変更をするようです

 ルシアナの闘気弾の威力を見せてもらうために、晩飯前に孤児院の裏に行った。

 皮手袋しか持っていなかったので、俺の硬革の手袋を渡す。

 当然ロレナより威力がある。闘気打は熟練度10なので万が一接近戦になっても頼りになる。

 アリアドナさんは棒術の使い手で、武器は150センチくらいの黒樫の杖だった。バトルスタッフかな。

 打撃力は両手持ちのメイスより低いが、知力が上がるし取り回しが楽。

 この二人お得な買い物だった。


 晩飯を食べながら二人の話を聞いた。

ルシアナはツンと同じ猟師の子で、両親はその場にはいないはずの魔獣に殺された。それもツンと同じだと言われたが、俺はあえてツンにその辺は聞いていなかった。

 アリアドナさんは王都の神殿の神官の娘で、親元で甘く育たないようにとここで修行していた。

 狩りに行って直接子供達の役に立ちたいと願っていたが、両親から預かっている子と見られていて危険な事はさせてもらえなかった。

 ハンドキャノンの完成で状況の変化を感じた神殿主様が、同行の許可を出してくれたそうだ。


 テーブルの上は擬似食べ放題状態だった。どうせ一皿2、3ギムなんだし。ちょっとの間に随分気が大きくなってしまった。

 部屋は二人部屋と一人部屋。二人で一つのベッドに寝るのは慣れてるそうだ。神殿の若い神官用の部屋に孤児院から好きな子が通って来てもいいんだって。母なる神は寛大なり。


 その夜、初めてツンから両親の話を聞いた。二人は荒地の奥の森にニワトリを獲りに行って、草原にしかいないはずのジャッカロープに殺されたのだ。

 珍しくツンが抱きついたまま呟いた。


「ウサギ、獲りたい」


 絶対獲りに行こうな。



 次の日からは「獲れるだけ獲る」に作戦を変更した。

 コカマキリの鎌は諸刃で、斬り下げ斬り上げの連撃を両手でやる「二連撃×2」なんてやっかいな技を持っているが、当らなければどうと言うことはない。

 威力のあるルシアナの闘気弾が加わったので、半分は一発で止めがさせた。俺の熟練度が3に上がると、全部一発になった。

 90匹獲ったら帰る。入れるたびにどうなってるんだろうと思うアイテムバッグ。獲物は逆さに振っても落ちないものは一つだけど、縛ったり袋に入れてもだめ。

 亜空間に感応石のような魔導的擬似珪素生物がいて判断しているらしい。使えりゃいいんだ使えりゃ。


 やって来るカマキリに追われる様にバッタが来る事もある。バッタの見た目は外骨格で二本足の女だった。結構不気味なんだが、俺以外は旨そうにしか見えないようだ。

 バッタ獲って帰ると神殿でも喜ばれてその日の晩飯と朝飯のスープの味が良くなる。

 まあね、外骨格だし。カニだって蜘蛛の近類らしいし。ほんとか?


 熟練度を上げるには次の数値の50倍の回数を使わないといけない。

 1から2は100回でいいが9から10は500回。

 やはり、スライムの洞窟で無限に再生するスライムを、ドロップするスライムジュース飲みながら虐殺するのが一番の近道のようだ。


「あわてなくともよぉ、毎日90匹獲ってりゃ、一月足らずでいけるじゃねえか」


 カマキリを売るたびに黒ジャガが俺が他所に行くのをいやがる。ちなみにこの世界の一ヶ月は40日。

 カマキリが減れば当然バッタが増え、カマキリの不意打ちに耐えられる十分な防具を揃えたパーティーなら、草原に入って猟が出来る。そのレベルならバリスタがあればバッタもカマキリも楽に獲れた。

 中堅クラスが稼げて、ギルドの実入りは増えるわ、俺達の評判は良くなるわ、いいこと尽くめ。だけどね。


「熟練度の事もあるけど、海が見たいんですよ」

「青臭え事言ってんじゃねえよ」

「17歳十分青臭いでしょ」

「おめえの中身下手すりゃ俺より上だろうが」

「証拠がないし」


 嫌われるよりずっといいけど。

 ギルドの職員だけでなく、冒険者も止めようとして近くの狩場の情報をくれる。

 まだ俺のハンドキャノンを見ないとバリスタは習得出来ない。他所に行ったら引き止められるに決まっている。


 孤児院の出身者で何人かバリスタが使えるようになって、定期的にエリンギを獲って来ている。

 カマキリも減って、俺達が北門付近に張り付いている必要もない。

 海よりまず近場に行ってみようかと言う事になり、もらった情報から危なくなくて少し旨そうな物が獲れるところを探した。

「南門から東に行ったとこの森で栗が採れるみたいだけど、リス出ないのか」

「あそこリスいないよ」


 猟師の子のツンが答えた。


「この世界、栗とリスはセットじゃないのか」

「小さいリスはクリ食べるけど、魔獣化したら肉ばかり。あそこにいるのはネズミ」

「危険度リスとたいして変わらないんじゃないのか」

「元々リスおっきい、ネズミちっちゃい」


 そう言えばシマリス以外のリスって結構でかいんだった。


 ネズミの危険度を支部長に確かめると、おめえらなら獲れるだろうと嫌そうに言われた。

 そのまま海を見に行ってしまう可能性は否定できない。

 南門まで歩いて行くと半日以上かかる。バスなら30ギム。

 午前中に一稼ぎしてからバスに乗り、あっち側の神殿に泊まる事にした。


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