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西郷さんがツンを連れて資金稼ぎをするようです

 神殿主様が妙だったのは、スライムの洞窟が安全なのと危険なのがあるからだった。

 危険な方は湖の西の山麓にあり、論外。

 安全なスライムの洞窟は南の港町イツムナの近くにあるが、港では漁師でないと稼げないので生活費を持って行く必要があった。

 結局エリンギ狩りで資金を貯めるしかなかった。金が用意出来た頃には熟練度が上がっていそうな。

 神殿に行くと、年下だけどさん付けしてしまうアリアドナさんが、仲間になりたそうにこっちを見ていたりする。若い神官や神官見習いはみんなそうなんだけど。


 エリンギはいくら獲ってもいなくならないが、移動はする。俺達を見ても逃げないが、行動範囲からは少なくなってきた。

 ここで「もうちょっと奥へ行く」を選択すると危ないので、「ギルドに行く」を選択した。

 なぜか受付に支部長がいる。


「冒険者なんて半年1年顔見せねえのも珍しくねえが、なんでかおめえらは随分久しぶりな気がするぜ」

「それは、こちらもです。なんでですかね」

「そんな話をしに来た訳じゃねえだろ」

「(自分で振っといて、とは言えない)エリンギが少なくなって。何か、仕事がないかと思って」

「獲り過ぎだろ。バイトに来てるのが毎日何十匹も獲ってるって言ってたぞ」

「子供の言う事真に受けないでください。平均15匹くらいですよ。いなくいなる数じゃないはず」

「まあな、なんとなく集団で移動する事は割りとあるんだ。少しすると戻って来るだろうから、ここに来たのは正解よ。おめえ、個人技5連発だってな。それもガキ共が騒いでやがった」

「ええ、今熟練度2でエリンギなら2発で倒せます」

「ならコカマ3発でいけるだろう。街道の掃除やってみるか?」


 カマキリは集団でいることはないので、誘き寄せても3匹以上が一度に来るのはまれだと言われた。

 危なければ霊気の薄い荒地に逃げてしまえばいい。

 野外用小型コンロと金網、ビール漬けのバッタの干物セット100ギムを買う。

 コンロの燃料は何かの油だった。野外用なので、カマキリに蹴倒されても安全、らしい。


 北門から森の入り口までと同じ距離を歩いて、干物を焙ってみた。

 それほど待たずに、枯れ葉色の肌の女が草原から顔を出した。

 背丈はツンと同じくらいか。胸元に引き付けた両腕が、どうみてもカマキリの鎌だ。

 三人が闘気弾を撃ち、怒って飛んで向ってくるのを俺が落とす。

 草原から出た下半身は、まったくカマキリだった。上半身も遠目なら人間に見えるが、近くで見ると外骨格の質感や関節が人形のようだ。

 アイテムバッグに入れる前に肛門を十字に切る。それからゆっくり押し込むと、肛門から血が噴出す。

 アイテムバッグは生物は振っても落ちない塊を1個とみなす。それを利用して血抜きが出来る。腸の内容物も出せる。


 ツンに見張らせておけば不意打ちを食らう恐れもないので、エリンギに比べて格段高い攻撃力もまったく問題なかった。

 5匹獲って少し北に移動する。2匹来てしまったが3発ずつで倒せた。

 これ以上北に行くと危なそうなのでその場で様子を見たが、午前中だけで13匹獲れた。

 荒地で休憩する。ドライソーセージは3本。もっと欲しい子は自分で買おう。


 休憩後は12匹獲って止める事にした。

 2匹で来られるよりアイテムバッグに入れている最中に来られるのが困る。アイテムバッグは他人に出し入れの許可は出来るが、買った本人が装備していないとギルドでしか出し入れ出来ない。

 もう一人倒せるのが欲しい。熟練度が上がれば三人とも倒せるようになるんだけど。


 カマキリは食料じゃないのでギルドに売りに行と、心配顔の支部長が出てくる。


「このままカマキリ獲っててもいいんじゃねえの。おめえの熟練度上がりゃ一発で倒せるようになるだろ。それまでにゃ装備も揃うだろうし、ツンがいりゃ、草っぱらに入っていっても危なくねえだろ。バッタも獲れら」

「そうなんですけど、港も行ってみたいんですよね」


 支部長が俺によその街に行かれたくないのは判るが、港に行きたいのは四人共だった。毎日同じ所を歩き同じ敵を倒すのに飽きて来ていた。街道や外壁周りは森より単調だ。

 こう言う時が危ないのも判っているが。


 神殿に帰ると、アリアドナさんが思いつめた顔で待っていた。後ろに彼女より少し上背のある、俺と同じ膝下まであるTシャツ風を着た猫耳のスレンダーな女の子が立っている。

 瞳は地球では見た事がないライトグリーン。虹彩は当然楕円形。肩の少し下までの長さの髪は頭頂部が焦げ茶で周囲は栗毛。耳の先に黒っぽい飾り毛がある。山猫?


「あの、わたし達も連れて行って頂けないでしょうか。経験値を分けて頂きいたいのです。この子はルシアナです」


 ツンが「ルシアナ姉ちゃん」と呟き、本人が「ルシアナです」と頭を下げた。

 流石の俺でも覚えた。


「そりゃかまいませんけど。そちらは、年は?」

「15です。イツムナで働いていたのですが、ハンドキャノンを教えてもらいたくて来ました」

「もうすぐあっちに行くつもりだったんだけど。なんか、バス代がもったいないな。闘気弾の熟練度は?」

「8です。スライムの洞窟で上げました」

「やっぱりそこで上げるのがいいのか。行きたくはあるが。森のちょっと奥に行くとしたら危険な敵は?」

「ニワトリとリス?」


 ルシアナが答えてアリアドナを見る。この二人、どうみてもそっち。


「リスは、ハンドキャノンの威力では無理だと思います」


 話を聞くと体長2、3メートルの凶暴なムササビのようだ。飛び回る尻尾の長いヒグマか。打撃半減毛皮装甲にオーラバリア装備。どう考えても無理。

 ルシアナがいれば俺抜きでカマキリが倒せそうなので二人を同行者ではなくパーティーメンバーにして、とりあえず明日はカマキリ狩りをすることにした。1人200ギム以上は確保できるだろう。


 しかし、6人中百合2組ってどうなの? ツンがいてくれりゃいいけどさ。俺が浮気しなきゃ安定してるか。

 

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