表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/21

西郷さんがツンを連れて鴨撃ちに行くようです

  藍カマキリとその生息域の危険性についてギルドに聞きに行ったら、俺だけ支部長の執務室に通された。


「まったくよう、藍カマで水竜漁だって? あのハゲろくなこと教えやがらねえ。藍カマ獲れたとして、水竜に勝てると思うか?」


 黒ジャガが心配してくれているのは判る。しかし、こっちにも思惑やら希望やらはある。


「今勝てると思ってる訳ないでしょ。藍カマは少ないらしいから、獲り溜めておきたいんですよ。藍カマは今の俺達で勝てるんですか?」

「四つ腕のカニの跳び回る奴だと思えばいい。おめえの新しい技、当てさえすりゃ勝てら。今藍カマが獲れりゃ、王様も喜ばあ」


 この世界には、30メートル以下の至近距離で超音速の攻撃を回避出来るのがいる。俺はその事で頭がいっぱいで、この時の黒ジャガの言葉の端を聞き流していた。


「当たれば、いいんですけどね」

「妙に弱気だな」

「七面鳥に避けられたんですよ。水の矢は音の矢で打ち消されました」

「そんな奴だったのか。おめえら無傷だし、向こうからの報告じゃ死体ぼろぼろだったてから、楽勝だと思ってたが」

「七面鳥でもこんなことがあるんですから、変異種のジャッカロープなら何があるか判りません。出来る限りの重装備で行かないと」

「山羊角野郎を殺るのか。おめえなら、話聞いたら仇討たねえはずもねえが」


 ツンの親の仇の個体は、まだ森に居座っていた。

 普通のジャッカロープは鹿角だが、そいつは枝のない山羊かレイヨウのような角を持っていた。


 湖に行くなら獲物はカモだと教えられて、みんなに報告すると獣人二人が特に盛り上がった。

 なぜか、リタが黙っている。嫌な思い出があるなら無理に食べなくてもいいと言うと、絶対食べると気色ばんだ。


 郷士身分の雇い主の息子の15の成人祝いに振舞われたのだそうだ。身近な権力者が一生に一度の祝いで自慢するようなものを常食に出来る。テンションが上がり過ぎて言葉が出なくなっていたのだった。

 この郷士の息子がリタの貴族コンプレックスの元なのだろうけど、うっかりつつかない方がよさそうだ。

 

 出発前にギルドで、林の奥に入らない事、西の川は直ぐに川幅が広くなるので、向こう側に渡って下流に行くとこちらに戻れなくなるなどの諸注意を受ける。

 外壁を少し離れると、草原からコカマが飛び出して襲って来るが、ハンドキャノン1発で倒す。

 カモが獲れ過ぎたらコカマは捨てるしかないね、などと性もない皮算用をしながら湖に着いた。

 スワンボートを一回り小型にしたカモが随分な数浮いていた。

 でかいだけで見た目はまんまカモだ。ほぼ同じ生き物が、かなりいる。


 見ていたら、急に飛び立った。急降下するハヤブサの様に翼を最小限に開き、助走もなしに飛ぶ。

 絵に描いたらキーンて擬音が入るだろう。

 一瞬遅れて水面が盛り上がり、頭の丸い何かが飛び出して、落下して派手な水飛沫を上げる。

 この湖の名産品、ナマズだ。グラム単価は安いが500キロ以上ある。体力はあるが遠距離攻撃がないので、陸に上げてしまえば勝てない相手ではないそうだ。

 

 何度かカモが飛び、水面が盛り上がる。その内の1羽がこちらに飛んできた。一斉に対空砲火。

 50メートル近く向こうに落ちて、かなり大きな音がした。止めをさすために全員岸辺の石の上を小走りで近寄るが、先頭のツンが足を止めた。

 カモに波が被さり、水が引くと鉄灰色のナマコ型の物体が残された。ナマズだ。カモは丸呑みにされたらしく、羽先も見えない。


「食うんじゃねえ!」

 

 対物ライフルを撃つが、皮の上を滑る様に弾かれた。


「ナマズの面に闘気弾て言われてるの。口の中に当てないとだめ」


 そう言われても都合よく口あけてくれないんだよ、ルシアナ。

 アリアドナさんが音の矢を放つが、射程外だ。

 ナマズはふん、みたいな、やけに膨らんだ顔をこちらに向けてから、跳ねて水に戻って行った。

 まだ生きてたのか、口の中だからか、経験値すら入らない。


ツンがナマズのいた辺りを探して、でかい羽を持って来る。カモの風切羽だ。

 羽ペンにするのだが、大きいものは執務室などの机の飾りになる。

 小袋にしまうと、顔を上げたツンが合図した。振り向くと、水色の大振りなカマキリがいた。ミズオオカマキリだ。

 距離約30メートル。目が合い、睨み合いになる。


「ロード」


 対物ライフルだとばらばらになりそうなので、ハンドキャノンで撃った。5連射で倒れる。

 アイテムバッグに入れると、ルシアナがスリスリする。


「これでいい魚獲れるね」


 漁の裏技を詳しく話を聞いたら、漁協に納める10匹はコカマでいい。チュウカマキリなら5匹。後は持っている餌で漁が出来る。

 ミズカマ5匹獲ったところで休憩する。時々ナマズが跳ねるが、あいつらの猟も成功しない。しかしカモもこっちには飛んで来ない。

 猟はそれぞれ獲物に合った獲り方がある。それを教えてくれる者はなく、自分で工夫しなけらばならない。猟師もプロの世界だ。


 射程内でナマズが跳ね、白い腹が見えたので、嫌がらせに撃ったら、跳弾しなかった。腹はめり込むので跳ねないのか? 攻略の糸口が見つかったっぽい。

 逃げたカモが何を勘違いしたのか、俺達に襲い掛かって来た。

 翼から斬撃を飛ばして来たが、射程外だった。俺の攻撃を見て射程も勘違いしたようだ。

 こっちのは全部当る。アリアドナさんの音の矢も当る。

 さっきよりだいぶ近くに落ちたので、騒ぎがでかい。止めをさそうとしたら死んでしまった。

 腹を撃ってやったのがこの地域の担当だったらしく、ナマズに横取りもされなかった。

 何か、カモを怒らせる方法があれば獲れるかもしれない。


 ここまで来れたら拾い物だけで食べて行けると言われているので、無理にカモを狙わず、岸辺を歩いていたら松林があった。松の実を食べる生き物がいるはずだ。

 明日はこっちを探すことにして、松の実を拾って帰った。


 ナマズはいつか、ぶっ殺して食う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ