西郷さんがツンを連れて七面鳥撃ちに行くようです
アリアドナさんが焼きグリをお土産にしたいと言ったので、南門でバスを降りた。
当然ロレナがクリ拾いに行きたがる。これはもうしょうがない。クリ入れの袋を借りに神殿に行くと、困った魔獣が出たのでギルドに行ってくれと言われた。
出て来た南門の支部長は、婦長と呼びたくなる雰囲気のおばさんだった。
「七面鳥がね、魔法を使うのよ」
「変異種ですか?」
「奥の魔獣の魄呑んだのが時々いるの。でもね、今度のは音の矢を使うのよ。そんなの棲んでないんだけど。多分、落ちてきた上位の鳥のだと思うわ」
上空の濃い霊気の流れに乗って飛んでいる鳥が、たまに流れから外れて失神し、落ちる。ワイヴァーンさえ落ちる事があると言う。
音の矢は射程が30メートルあり、先に見つけても気付かれたら終わる。頭や心臓を狙い撃ちされたら、まず助からない。
クリ拾いに行った者が、ネズミを獲っているのを見ただけでまだ被害は出ていないが、怖くてクリ拾いに行けない。
俺達なら射程外から始末出来るんじゃないかと言う話だった。
場所は俺達が遭遇した所に近い。七面鳥が来やすい何かもあるようだ。
アウトレンジからの七面鳥撃ち。何か、いやな予感がするのはなぜだろう。
森の中では木がじゃまなので、長射程はさほど有利ではない。しかも俺達は動きながら攻撃できない。魔法は動きながらでも撃てる。
報奨金は1万ギムだが、カニ3匹でおつりが来る。
俺が断れば、かなり上の冒険者でないと倒せない。クリのために行政は動いてくれない。
だが、男気とかで仲間の命を危険には晒せない。俺達は獲物を獲る猟師で、敵に立ち向かう兵士じゃない。
今日倒さないといけない訳でもないので、1日考えさせてもらう。敵を獲物に変える工夫が必要だ。
こないだ戦った時は、随分上手くやった。
「七面鳥って動体視力いいのか?」
「だから、判らない事聞かないでよ」
「動いてるものをつい見ちゃう習性があるかなって話」
「逃げると追いかけて来るとは言われてるわね」
「追いかけてこない魔獣の方が珍しいだろ」
俺目掛けて飛んで来て俺に撃たれたのに、木に登ったツンとルシアナを交互に見た。
動くものを追う習性があるなら、無傷で倒せる工夫が出来る。
どんな色が見えるのか判らないが、おそらく二人の髪の色、茶系統は見えるはずだ。
1メートルくらいの紐を付けた茶色い袋を、18用意した。
ギルドに依頼を引き受けに行くと、変種の可能性もあるので血抜きだけして、捌かずに獲った状態で持って来て欲しいと言われた。
翌日早く森に出かけ、先に七面鳥の生息地域に行く。
ツンが見つけて袋を投げると、七面鳥をは袋に飛び掛る。そこに一斉射撃。
羽毛が中途半端に毟れてかなり痛々しい死に様である。
アイテムバッグに突っ込むと、逆さに振ると落ちる羽毛が飛び散った。50グラム以下の物は入らないように調整してある。
ほぼクレー射撃でまったく危険はない。午前中だけで7羽獲れた。袋も四つ撃ってしまったが、ツンとルシアナに三つ持たせる。
休憩してから、栗林に向った。
簡単にそいつは見つかった。
ネズミがクリを食べに来る。それを七面鳥が狙う。茶色の袋はネズミな訳だ。
ばれないように散開し、ツンが袋を投げ、そいつが、飛ばない!
音の矢で打ち落とされた。
「横着すんじゃねえ!」
わざと怒鳴って対物ライフルを発射、リタとロレナは黙って撃ち込む。ツンとルシアナは木を駆け上がる。
3発を跳んで避けられた。更にツンとルシアナの攻撃も躱される。
「敏捷性が!」
アリアドナさんが撃った水の矢は音の矢で相殺された。
「ロード!」
ハンドキャノンに切り替えて頭付近に弾をばら撒く。熟練度で威力が上がっているのに、当っても効かない。
「リタ! ロレナ! 攻撃は上に任せろ!」
撃たせない、近付かせない、下の四人で弾幕を張り、上から狙撃する。
5発当ってようやく倒れた。
「どうなってんだ、これ。やっぱ、変異種か?」
「鳥同士で、余程魄との相性が良かったのでしょうか」
アリアドナさんが石突で小突きながら言う。
上位の鳥がなんだったのか、そいつには今の俺達では傷も付けられないだろう。なんだか、負けた気がする。
角ウサギを狩れるようになるのはいつの日か。
原因を探るために周囲を霊気の濃い方に歩いていくと、崖に開いた、立って入れそうな大きさの穴から七面鳥が出て来た。
一斉射撃で瞬殺した。さらに安全のために洞窟内に斉射する。
洞窟の中を覗くと、かなり明るい。入ってみると天井に穴が開いていた。
上を歩いていてこの穴に落ちるアホ鳥がいる訳だ。
この程度の崖なら飛び上がればよさそうなもんだが、歩いて戻ろうとするんだな。
ギルドに七面鳥を提出し、原因の報告をし、支部長立会いで砂嚢を開けた。
砂嚢に小室が出来ていて、ペリドットの様な透明な緑色の星入りの珠が入っていた。
単に飲み込んで内壁に触れているだけではなかったのが、異常な強さの元だったようだ。
買取の代金と報奨金1万ギムをもらい、珠は売らないでアリアドナさんのものにした。
中々手に入らない物なのだが、がっつかないと向こうからやって来る。
「では、藍カマキリを獲りに行こうか」
北門に帰ろうとしたがロレナに止められる。
「クリ拾ってからね」
「焼きグリ売ってるから」
「蒸かしたのも食べたいの」
思い出の味とかじゃなくて、ただクリが好きなだけだった。両親はロレナの好物だから買ってやっていたのだ。




