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不眠症と過眠症

 「おまたせ!」

ベンチに腰掛け、ウトウトしている1人の少女、否、少年に声をかける。

「あ、おつかれ。帰ろっか。」

すっと立ち上がるように見えて数歩進むとフラッとする。眠いんだなーと思い手を差し出す。

なんの抵抗もなく手を繋ぎ歩き始める。

少し前にこれを目撃されて騒がれたことはあったが今じゃなんともない。これが普通なんだと周りも認識してくれている。

「奏くーん。今日俺ん家きてよ。」

「別にいいよ。でも今日私の家だと思って夕飯の支度半分終わらせて来てるんだよね。」

「え、ジャーいく。」

わたし達は同じマンションに住んでいる。私が中学に入学するすこし前に引っ越してきた。そこは高級マンションの類。一階は使用人室と管理人室と広いエントランス。

2階から9階までは普通に部屋がある。1フロア2部屋なのだが。

10階は室内プール。そのうえは屋上テラス。

ちなみに私の家は9階。奏ちゃんの家は真下の8階。両親共働きの私達は夕飯はいつも一緒に食べている。

「奏くんさ、好きな子とかいるの?」

「最近話題なくなるとすぐそれだね。気になるの?」

ニヨニヨとした顔で奏ちゃんをのぞき込む。

「別に。そういう話は周りでよく聞くから、なんとなく。」

「いつもそれだねーていうか眠そうだねー」

「眠いもん。」

「家ついたら寝てていいから。」

こくんと頷くのが小さい子供みたいでとても可愛い。そんな彼の手を引き少し早めに歩く。

今日の夕飯は豚の角煮なんです。


 家に着くなりシファーに寝転がる奏ちゃん。いつものことだ。すぐ眠くなって寝てしまう。寝るのは授業中もだ。いつでもどこでも寝れてしまう。

「夕飯の支度するから先お風呂入る?」

「寝るー」

「はいはい。起こしたらちゃんと起きてね。」

返事はない多分寝ているのだろう。

構わず自室に戻り、制服から部屋着に着替えて料理をスタート。と言っても既に煮込んではいたのだが火をつけて温める程度に更に煮込む。

私は自分で不眠症とは思わないが周りに良く言われる。入眠障害と早朝覚醒が同時に起こってるらしい。確かに寝付けずに午前2時まで起きているクセして朝は5時起きなんてのはザラにある。そのため苦手な運動も適度にはしてるし。何が問題なのだろう。

それに比べて奏ちゃんは過眠症。夜も11時から日付変わる前までには寝ているのにいつも寝坊する。授業中も寝ているし、帰ってからもこうして寝ていることがほとんどだ。こんなに寝てて幸せなんだろうなーとかたまに思ったりもする。

ソファーの背もたれに腰を軽くかける形で奏ちゃんを見下ろしてた。スースーと可愛い寝息をたてて幸せそうにねむる。

どんな夢を見てるのかな。すごくにやけてる。

『ご飯が炊けました』

炊飯器の音声が静かな部屋に響く。

2人ぶんより少し多いご飯。白くてホクホク。早く食べたいものだ。炊きたてのご飯をほぐしながら1人にやける。

弱火にかけてある圧力鍋をあけるといいにおいは立ち込める。少し大きめのお皿に盛り付け完成。キッチン横の机に運ぶ。そのあとに取り皿、箸、ご飯のを盛り付けたお茶碗を運ぶ。一通り運び終わったらリビングのソファーで寝ている奏ちゃんを起こす。

すんなりおきてくれるのはいいんだけど数分魂だけいないで動くので何はなしても通じない。

「今日は豚のかく煮だよ。それではいただきます。」

「いただきます。」

静かな部屋に食器の音しか聞こえない。ボーっとしている人をジーっと見つめる。

「何?何か付いてる?」

こてんと首をかしげる。やっぱり癖なんだなーって思ってしまう。

「別に。なんでそんなに寝れるのかなーって。」

「こっちからすればなんでそんなに寝れないのかが不思議だよ。」

これおいしいね。といい口にお肉を頬張る。

目がさえてきたのか。さっきより意識がはっきりしてきてる。

「寝たいね。」

そうつぶやくと私はハッとした。

「今夜、僕と寝ない?」

怪訝そうな目でこちらを見ながらご飯を食べている。

「ちょっ、ツッコンでよ!」

「意味深」

「ちがっ、つっこみ違いだよ!待ってほんとにごめんって。」

更に冷ややかな目でこちらを見ながらまたお肉を口に運ぶ。

「奏ちゃん。ちゃんと青梗菜も食べないと。大根もおいしいよ。」

はいはいと奏ちゃんの取り皿に青梗菜と大根をのせる。

「自分がすべったからって野菜押し付けないでよ。俺が野菜嫌いなの知っててやってるでしょ。」

「いつも言ってるけど、そんなんだから身長伸びないんだよ。」

食べますといいしぶしぶ青梗菜を口に入れていく。

なんかウサギみたいだな。なんて思っても口には出さない。絶対に。


「泊まって行こうかな…今日金曜日だし。」

夕飯の片付けまで終えて私はお風呂に入ろうとしていた時だった。今までテレビに夢中だったのにいきなりこちらを振り返ったと思ったらこれだ。じゆうきまますぎるだろ。お前は猫か!

「いんじゃないかなーお風呂どうする?あ、一緒に入る?」

と笑うと笑顔でそうしようかなとかいい始めるから驚き。

「ジョークだよ。とりあえずはやく風呂入ってこいよ」

わかったとだけ告げてお風呂に入る。


お風呂ってなんでこんなに幸せなのだろう。思わず歌い出す。

決まって歌うのは恋愛ソング。とくに意味はないけど、こういう歌は歌いやすい。

るんるんで歌いながらお風呂からでる。髪と身体を拭きいつものようにタオル巻く。ドライヤーでみじかい髪を乾かして脱衣所を後にする。


「出たよー」

呑気にリビングにいる奏ちゃんに声をかける。寝ていたのだろう。寝ぼけたこえでうんとだけつぶやく。

「奏くん、いつも言ってるけどさ。」

「タオルだけででてくんな、でしょ?別にいいじゃん。私の家何だから。」

「はいはい。後なんでいつも恋愛ソング歌うの?」

「歌いやすいからだよ。服用いしておくからさっさと入ってきな。」

ん。とだけつぶやき脱衣所に消える姿を見送る。自室に戻り自分の寝間着用ジャージに着替える。

ウォークインクローゼットの隅にある奏ちゃん用の箱を開け、下着とTシャツを取り出す。

いたずら心でロンTでズボンなし。もともとこのロングTシャツは私のものだったので、奏ちゃんには大きく。これは萌えるシュチュエーション期待ですね!

洋服を脱衣所に持っていく。

「服ここに置くからねー」


いつも顔を真っ赤にして出てくるのに今日はそうでなかった。

少し長い髪をガシガシとタオルで拭きながら出てきた。

「お前、いつもいつも…。」

「面白くなーい。ま、いいや。部屋行こー」

見ていたテレビを消して部屋へ向かう。私の後ろをため息をつきながら奏ちゃんがついてくる。

部屋に入るとすぐにクローゼットを開ける奏ちゃん。割と広いクローゼットから私は折りたたみ式ベットを取り出した。

そのあいだにズボンを履き、人のベットに腰をかけてるやつがいた。

「手伝ってよ。」

「え、やだよ。こんなにか弱そうなやつにやらせないでしょ。」

「どこがよ。女子にやらせるのもどうかと思うんだけど?」

はぁとまたため息をつきながら手伝い始める。お前が使うんだからお前がやれよな。

「もうねるー疲れたーおやすみー」

出し終わったばかりのベットにダイブ。そのまま頭まで布団を1度被ってから顔を出す。

「はい、おやすみ。」

それから数分後スースーと寝息が聞こえてきた。いくら寝てもねむい奏ちゃんは寝るのがすごくはやい。

時計を見るとまだ9時少し前。

カバンをあさり英語のノートと教科書を出す。予習しておこうと思った。あ、数学宿題ある気がする。


数時間後。宿題、予習、復習をいつものように終わらせ、そろそろ寝ないとと思い始めた。

「もう、12時…」

机から折りたたみベッドに移動し、奏ちゃんを踏まないように腰をおろした。

「寝顔、やっぱり可愛い。」

ニヤついてしまうのは仕方ないと思う。このモチモチほっぺ。長いまつ毛。ほんとに綺麗な顔。

いくら触っても起きないなんて、どんだけ爆睡してるんだか。

「さ、寝るか。」

電気を消して机とは折りたたみベッドを挟んで反対側にある自分のベッドに向かう。踏まないようにゆっくりと。

布団に潜り寝ようとするが寝られない。

いつものことだ。しょうがない。

目をつぶり何か眠くなるような事を考える。でもいくら考えてもそんなものは浮かばず。出てくるのは奏ちゃん。

自分、どんだけ好きなんだよ。

そのうちうとうとしはじめ、気がついたら朝が来ていた。

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