放課後(2)
俺は本当にこれでいいのだろうか。
奏ちゃんと呼ばれ、可愛いともてはやされ、しまいには姫と呼ばれる。
これでもれっきとした男である。
「奏ちゃんシュート!」
ボールをサッカーゴールに向け思いっきりける。
「奏ちゃんナイスシュート!!」
ゴールキーパーの指をかすりネットへ突き抜けたボール。
部活内の練習試合とはいえ、みんな手を抜かずにやっている。
そんな中怪我人分を埋めるため呼ばれた俺。運動はどこかの王子とは比べものにならないほどある。
しかしその王子に勉学は敵わない。
「姫っ!下がって下がって!!」
「はーい。」
走りながらも考えるのは王子の事。
姫と王子の差はなんなんだ?性別的に逆だろ?
確かに王子はイケメンだけども。男である俺も羨ましいレベルのイケメンだけど。
モンモンと考えながら試合終了までプレイを続けた。
「奏ちゃん。何考えてたの?」
話しかけてきたのは小林。タオルとドリンクを俺に渡して地面に座り込む。
俺を見上げてニヤッと笑う。
「当ててやろうか?王子のことだろ。」
「え?な、なんで…」
「俺の感。まぁ座れ。」
小林は座っているすぐ横の地面をポンポンと軽く叩く。
横にストンと座ると小林より小さい。
「小林は大きいよな。羨ましいよ。」
はははっと笑う。
「俺はそんなにでかくねーよ。お前が少し小さめなだけだ。」
頭をくしゃくしゃとされる。
「や、やめてよ!俺だって男なんだよ?男が男の頭なでても誰も得しないって!」
「いや、一部のお姉様方には得なんだよ。」
こいつはなにを真顔で言っているのだろうか。
「まあ、王子は女子にしちゃでけーだけで、本人も気にしてると思うぞ?」
「いや、奏くんは自分が女の子にモテることを楽しんでるような人だよ?それはない。」
あーと空を仰ぐ小林を横目に地面に小石を投げつけた。
「しょうがないと割り切ればそれでいんだけどさ。あ、そろそろ帰るわ。奏くん待たせちゃう。」
「そっか、今日はありがとな!」
奏ちゃんを見送る小林はなんであいつあのしゃべり方で一人称が俺なのか。まずなんであいつは男なのかが気になった。
『部活終わった。今から着替えるから。』
それだけのメッセージを奏くんにいれて着替え始める。
着替えは割と早いほうなのですぐに部室をでることができた。
『迎えに行く』
既読のつかないメッセージを閉じ、特別校舎に向かった。