ラブレター?
思い付きで書きました。
『ずっと好きでした。』
目の前に飛び込んできた文字に、僕はただそこに立ち尽くすことしかできなかった。
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ここは、僕が通う高校の玄関だ。下駄箱エリアと呼べば伝わりやすいだろう。青色のタイルに、年季の入った木製の下駄箱。何もかもいつも通りの光景でそれに何処かホッとしつつも、僕は自分の番号が書かれている下駄箱に手を掛け……るつもりだった。
一瞬、いや十瞬ほど目が腕が足が、もう全てが固まった。あるいは時が固まっていたのかもしれない。漸く動けるようになった僕は、ゆっくりと下駄箱に挟まっていた大きな“それ”を引っこ抜いた。
“それ”は紛れもなく“それ”だった。いや、もう断定してもいいのだろうけれど…。幻覚かじゃないかと疑う程に、“それ”がこの場には相応しくない。どうしようか、先生に届けるべきだろうかと悩んでいたその時だった。
“それ”の一隅に、恐らく黒のマーカーペンで書かれた一文。綺麗な文字で書かれたそれを見て、僕はまた身体が硬直した。
『ずっと好きでした。』
…告白。
それは全国の男子生徒諸君が思い描いてやまないもの。ある人は此方から仕掛けるものだと考えるのに対し、ある人は彼方から待つものだと考えるだろう。ちなみに、僕は後者だ。
身体は相も変わらず動きはしない。それなのに、心臓の動きだけは活発になっていく。ばくばく、と鼓動を打ち、思考は既にフルバースト寸前だった。僕は、いま誰かの純粋な好意を真っ直ぐにぶつけられている。それが途轍もなく気持ちが良い。天国にも登りそうな勢いとはこのことか。
そんな喜びに打ち震えている僕を正気に戻したのは、同じく下駄箱エリアから帰宅しようとする下級生(女子)の、僕と僕の持った“それ”を見る怪訝そうな目だった。その途端、さっきまであんなに熱かった僕の心臓と頭は急激に冷え込んだ。
そうだった…。確かに、告白を受けたのは受けた。それは紛れもなく事実だろう。だが、問題は別のところにある。
普通、このような場合は便箋が最も使用されると聞く(噂)。便箋が無く、他のものが代用されるとしても紙類からは外れることはないだろう。しかし、これは。
何故、何故…。
「何故、大根なんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
大根(葉っぱ付き)に直接書かれた告白文。それの差出人とは?!
完
読んで頂き有難うございます。作者の頭は正常です。