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エピソード11 言葉 <NaoKo Part>

私は、どうして

お兄ちゃんを求めたのだろう。



狂った子、けがれた子の 心の底の方で、相変わらず私は存在し続けていた。



私の人生は、それほど悪くなかった、

うん、きっとそう。

だって、お兄ちゃんが居てくれたから、



お兄ちゃんはどんな時でも私の元に帰ってきてくれた、

穢れた私を慰め、

壊れた私を綺麗にしてくれた。



他に、欲しいものなんて無かったんだ、

だから、私は幸せだったと思う。



でも、お兄ちゃんは、

お兄ちゃんは それで良かったのだろうか、



全てを犠牲にして私をいつくしんでくれた、

それなのに 私は、お兄ちゃんに何もしてあげられなかった。



今、お兄ちゃんの腕の中で静かに安らいでいく私に、何が返せるだろうか、



せめて、ただ一言だけでも、



すでに眠りにつく事を受け入れたもう一人の私の底の方から、

もう一度だけ、私の心を届けたい。



あなたのお陰で、私は安らぎを得る事が出来ました、

あなたのお陰で、私は生きている事を許されたの、

この思いを、もう一度あなたの元へ届けたい。



だから私は っくに忘れてしまった「言葉」を手繰たぐり寄せる、

ああ、あなたは こんな私の為に泣いてくれている、

私が去っていく事を悲しんでくれている、

私は、もう一度だけ あなたに…会いたい。



直子:「お兄ちゃん」



言霊ことだまが、道標みちしるべを示す。

私の魂は、戻るべき場所を 思い出す。



随分長い間、私は 旅をしていたみたいだ。



さあ、還ろう、

魂の、唯一の帰還場所へと…



















…私は、ぼんやりとする意識の中で、目を覚ました。

…優しく私を抱く 愛しい人の腕の中で、目を開ける。



直人:「おかえり、直子。」


…ゆっくりと、周りを見回す。

…見覚えのある狭いバスルーム、懐かしい男の人の微笑み。



直子:「お兄ちゃん、なんで泣いてるの?」


…私は…生まれたままの姿で、その人の腕に抱かれていた。

…少しずつ、肉体の感覚が蘇る。



直子:「お兄ちゃん、私?」


…お兄ちゃんがもう一度私を抱きしめる。


…お兄ちゃんの指先には、鮮血の滴る深い切り傷。

…私は、口の中に残る血の匂いを思い出す。



直人: 「還って来てくれて、本当によかった。」







…清潔な服に着替えて、布団に横たわる。

…疲れ切ったように、私の身体は自由が利かないままだった。



直子:「私は、夢を見ていたの?」


黒髪:「夢では有りません。」


静かな、綺麗な、不思議な声、心の奥底に響く声、何故だか懐かしい声。




6畳間には、何時の間にか 二人の女の人が立って居た。


一人は、巫女装束に身を包んだ 長身で長い黒髪のグラマーな女性。 まるで西洋のアンティーク人形の様な美貌に可憐と色香が同居している。


もう一人は、何故だかメイド服を来た 小柄で大きな瞳の金髪美少女?




金髪:「お久しぶりですね、と言っても 覚えてないかな? 私は5年前に貴方のブレスレッドに御呪おまじないをした、加茂理夜です。」


黒髪:「初めまして、加茂理夜の助手を勤めます、富士本と申します。 直人さんの依頼で、貴方のもう一つのペルソナを昇華させて頂きました。」







富士本さんの説明は次の様なモノだった。


黒蝗は私の必要によって生み出された人格、

封印しても 時が経てば解放され 、再び憑依を繰り返す。

ならば、退けるのではなく、黒蝗を、恭順させ、お兄ちゃんの支配下に置く。


お兄ちゃんを信頼させ、お兄ちゃんに従いたくなるように仕向ける。


人は、自分の聞きたい事しか聞かない。

だから先ずは、黒蝗が聞きたがっている言葉で語らなければ、コミュニケーションは始まらない。


黒蝗が理解してもらいたがっている事を理解してあげる。

黒蝗の苦しみを理解してあげる。



富士本:「私は直人さんと黒蝗とを対話させる為に、直子さんのシャーマンの能力を利用して、幻覚によるコミュニケーションを行いました。」





イメトレ、シャドーボクシング、

まるで其処に相手が居るように、イメージし、対応する。 この相手ならどう考えるだろう、どう動くだろう、予測し、想像する。

脱魂だつこんはイマジネーションの一つの形態。


演舞、

時には実在するはずの無いキャラクターであっても、詳細明確にイメージし、その通りに振舞う。 このキャラクターならどう考えるだろう、どう動くだろう、予測し、実行する。

憑依ひょういも又 イマジネーションのもう一つの形態。


かつて言葉を持たなかった人間は、こうしたイマジネーションによって群れのリーダーの意志を汲み取り、群れの中での役割を全うする為の意思決定を行ってきた…らしい。




現代の人間でも、知らず知らずに同じ様な事をやっていたりする。


例えば、その筋の人は その場に居るだけで相手を威圧する事が出来る。 見ているだけで萌~ってなる女の子も同じかも知れない。


つまりその人の持つ雰囲気、匂い、仕草、立ち居振る舞い、外見、そう言ったもので 相手の意識に影響を与える事は可能。


遠い町の灯りに懐かしい安らぎを覚えたり、黄昏の夕日に恵も知れぬ寂しさを感じたり、暖かな春の風に勇気を奮い立たせたり、と言うのも同じ。


ほんの少し 心のスイッチに触れる事で、遺伝子に刻み込まれたはるか昔の記憶が呼び戻され 想起されるイメージが深く意識に働きかける。





長い歴史の中で、人々は言語によるコミュニケーション手段を確立し、幻覚によるコミュニケーションを淘汰させ、失わせてきた…らしい。


でも、言葉を持った現在の人間であっても、状況はそれ程大きく変わったわけではない。


相手が発した言葉をどう受け止めるか、租借、理解するかは、受け取り側が独自に決定している。




シャーマンと呼ばれる人間達は、変性意識状態を操る事によってイマジネーション能力を通常の人間よりも高める事が出来る。


シャーマンの能力を持つ私は、同様な能力を有する富士本さんとお互いの考えている事をイメージしあう事でコミュニケーションが成立する…らしい。


会話の内容を誘導するのが、お兄ちゃんの温もりと、慈しみの雰囲気、そして加茂さんが使ったお香と 企業秘密のデバイス?



富士本:「直子さんは、私を通じて直人さんとイメージで語り合ったんです。

…それが、貴方には「夢」として感じられたのだと思います。」


加茂:「分かってもらいたかった事は、全部伝えられたのですか?」



直子:「はい、お兄ちゃんは、私が欲しい物を全部くれました、

…私は、穢れていても、壊れていても、しあわせでした。」



直人:「直子は、そのままで 幸せになって良いんだよ。」


お兄ちゃんが、私の顔を見て 又泣いてる…、



直子:「お兄ちゃん、この好き過ぎる感情の責任は取って下さいね。」


私は、少しはにかんで 頬を染める…、




富士本:「直人さんも必死だったんですよ、

…時としてイメージは人を殺す事もあります。 直子さんが、イメージの中で直人さんにした行いは、直人さんには現実の痛みとして感じられた筈です。」


富士本:「イメージの中で もしも貴方が 息を引き取る間際 直人さんに声をかけなかったら、直人さんの心に残る傷は、今とは違うものになっていたかも知れません。」




加茂:「さて、これで全部片付いた訳じゃないのです。

…根本的な問題を解決しておかないと、何時いつ又 不安に襲われるかも知れないです。」




加茂:「…お母さんに、会いに行くのですよ。」


登場人物のおさらい

朝比奈直子:主人公

春日夜直人:お兄ちゃん

加茂理夜:金髪の美少女? 永遠の発展途上体型、陰陽師

富士本佳枝:黒髪のグラマー、巫女

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