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エピソード9 援助 <NaoKo Part>

金曜日、深夜24時過ぎ。


坂道の途中に有る児童公園の前に、大きな黒いピックアップ・トラックが停まっている。


私は、202号室のベランダから車の前で話をする お兄ちゃんと「京華」の姿を眺めていた。


お兄ちゃんと「京華」が幼馴染のトモダチだったなんて。

しかも、BLな美少年だと思っていた「京華」が、実は女の人だったなんて。


直ぐにでもこの秘密を誰かに暴露したい気持ちで一杯だったが、…生憎あいにく私には友達が居ない。


私は、ちょっと お兄ちゃんが羨ましくなった。



直子:「お腹空いたよ〜」


お兄ちゃんは、話し込んじゃってナカナカ戻ってきそうにも無い。

私は部屋に戻ると、夕食の準備がすっかり整ったちゃぶ台の前で寝っ転がった。



かさかさ と音をたてて、「何か」が部屋の中を歩き回っている、

影のヒトが現れ始めてる、



…「夜の分」を貰わなきゃ。


ベランダから覗くと、既に「京華」の車は無く、お兄ちゃんの姿も見当たらない。



…部屋に戻ったのかな?


私は降りて行って、管理人室の戸を叩く。

ドアノブが回せない。 鍵がかかっている?



…まさか、寝ちゃったのかな?


ベランダの方に回ってガラス戸から中を覗く、

お兄ちゃんの姿は 見当たらない。


私はそっと、部屋の中に忍び込む。



…全く無用心だなぁ


お風呂場から、ガタゴトと音がしている。



…お風呂はいってるのかな?


何で、今 お風呂?

直ぐに 直子の部屋に 晩ご飯食べに来る約束なのに…



…もしかして、色々綺麗にして…それから、、、


思わず妄想が口から漏れてしまう…



…お布団で待ってよ。


先刻さっき、「京華」が下着姿で入っていた布団。

…もう一度 直子の匂いにマーキングし直すのだ、


うつらうつらする、

…ああ、何だか眠い、 こんな時間だから当然と言えば当然。


お兄ちゃん誘拐騒動から始まって、



…そうだ、あの野良猫女と 一体「何」をやったのか厳しく問いたださなきゃ!



見上げた天井に、影のヒトがくっ付いている。

長い髪の毛、

ぎょろぎょろした目玉、



…見ちゃ駄目だ、見ちゃ駄目だ、


部屋の隅には、裸で丸坊主の影のヒト。

大きな口を開けて、

声を出さないで 何か叫んでる、


影のヒトの数が増えてきている、



…お兄ちゃん、早くしてよ。


私は風呂場の前迄 忍び足する…

どうやら、ドアに鍵は掛かっていない、



…お兄ちゃんがナカナカ出て来ないのが いけないんだからね、


シャワーの音、

そっとドアを開けてみる。



其処には首の無い男!

が、首の切断面にシャワーの水流を当てている!


お兄ちゃんは…居ない。



…お兄ちゃん、何処に行ったの?

…まさか、またあの女のとこ?


振り返ると、

直ぐ背後に、太った女の 影のヒト! が立っている。

目が、真っ白に腐っている、



影の人の数が多すぎる、

こんな狭い部屋に、6人、いや8人は居る、



…何か、おかしい、


何時の間にか 電気が消えている?



…違う! 私が影に包まれているんだ。


うみの底に居るみたいに くらい。

動悸が激しくなる、



…落ち着け、


何時の間にか! 足が床から浮いている?



…もしかして! 私、また魂が抜けてるの?


いつの間に、いや 何時から、私は魂の状態で徘徊はいかいしていたのだろう。


見ると、お兄ちゃんの布団には、誰も寝ていない、

だとすると、私の本体は 肉体は一体何処に有るんだ??

私はパニックに陥る、


入って来た筈のベランダへ抜けるガラス戸には…鍵がかかっている。



…私、窓を開けないでこの部屋に入って来たんだ、

…此処に来る前から魂だったって事?


落ち着け、


私の周りには、満員電車の様に 影のヒトが 集まって来ている。



…早く、この部屋から出ないと、


ふと、がさがさ 音を立てている自分の手を見る。


黒い手? 何コレ??

鋭いとげだらけの…外骨格の鉤爪かぎづめ??


私は、恐怖の余り マントのような羽を膨らませる



…落ち着け、


窓ガラスに映った私の姿を確認する。


其処には、私の期待を嘲笑うかの様に、最も見たく無かったモノが居て、無表情な目で じっとりと 私の不安を覗き込んでいる。



…やっぱり…黒蝗くろいいなご


私の姿は、何時の間にか黒蝗になっている。

いや、正確には私は今 魂の状態の筈だから…



…私の魂の正体が「黒蝗」だって言う事なの??


カタカタと 私は恐怖に牙を鳴らす。



…嘘だ、なんかの間違いだ、こんな事有り得ない、

…身体に、戻らなきゃ、


いいのか?

今の私は黒蝗なんだぞ、私の本体に黒蝗を戻すなんて、有り得ない!


大体、私の肉体は何処に有るんだ?



…202号室!


急いで部屋を出ようとするが、身体が思う様に動かない、進まない、


玄関のドアにも、ベランダの窓にも 鍵がかかっている。

魂の私には、鍵を開ける事が出来ない。



…どうしよう、どうすれば戻れるの?


落ち着け、

入って来れた、と言う事は 出れる筈。

風呂場のドアは開けられた、と言う事は 玄関のドアも開けられる筈。

そもそも、私、ガラスを通り抜けて此処に入って来た筈!


見ると、足下に何かが転がっている、


紐? 糸? 腸?

いや、イメージ的には へそ

黒蝗の下腹の産卵管から、長い臍の緒が伸びて、何処かに通じている。



…この先に、きっと肉体が居る筈、


お兄ちゃんの声が聞こえる。

どこか遠く、水の中から聞いているようなくぐもった声


私の肉体が聞いている声が、直接私の頭の中に聞こえて来る、



直人:『どうしたんだ、直子』


私?の肉体と話してる?



…違う、それは 私じゃない。


私は此処に居る。 お兄ちゃんの部屋に居る。



直人:『寝るなら、ちゃんと布団に入りな…』


お兄ちゃんの居場所は、やっぱり私の部屋だ。

202号室、其処に 私の肉体も有る。



直人:『あっ、そうか「夜の分」忘れてたね、』


途端に、何だか恥ずかしくなる。 客観的に見て、お兄ちゃんから唾液を貰ってる妹って、やっぱり変態だよね…


でも、一体誰が、私に成りすましているの?



どこか遠く、水の中から聞いているようなくぐもった声がする、


私は、下腹から垂れている 臍の緒の様なモノを掴んで…

…引っ張る。



私の手は、黒くて鋭い鉤爪かぎづめ、臍の緒は、私が鉤爪でつかむ度に切り裂けて、…体液の様なモノがにじみ出す。


大丈夫だろうか、

もしかして切れたら、二度と肉体に戻れなくなってしまったりしないだろうか。


でも、そんな事を気にしていられない様な 胸騒ぎがする。



…早く、戻らなきゃ、


もしかして、私と黒蝗の魂が入れ替わっているのだとしたら、

お兄ちゃんが危ない?


私は、力一杯 臍の緒を引っ張る、

ゆらゆらと宙に浮いた格好で、臍の緒をたぐり寄せる。


臍の緒は、ベランダのガラスを貫通している。

思った通り、私の 黒蝗の身体も、同じ様にガラスを貫通する。


気がつくと、私は自分の部屋の中に居た。



…いつの間に?


まるでビデオの早回しの様に、どうやって此処迄辿り着いたかの行程がすっ飛ばされている。


でも、そんな事どうでも良い。




臍の緒の先を確かめる。

やっぱり、それは 私の肉体に繋がっている。

私の肉体の両脚の間、子宮から伸びた魂の臍の緒が、

…黒蝗の産卵管に、繋がっている。


私は、一体 何者なの?

混乱する、恐怖する、



お兄ちゃんは、私の肉体に覆い被さっている。

お兄ちゃんと私の肉体が、抱き合って、キスしている。


舌を絡め合い、

唾液を交換し合っている。



…違う、それは、私じゃないの。


なのに、私の黒蝗の口の中にも、消化液があふれ出して来る。

ダラダラと、牙の隙間を伝って、みっともなく垂れる。



やがて 私の肉体が、私に気付く。

黒蝗の身体になった私の方を見ている。


怯えた様な顔をして、不吉なモノを見る様な顔をして 私を見ている。



…貴方は一体何者なの!


私の身体が、お兄ちゃんの首筋を舌で舐め上げている。

二人が抱き合うのを 黒蝗になった私に見せつけて、

勝ち誇った様に、ニヤニヤ笑っている。


私の事を、見て、蔑む様に笑っている。



私の身体は、パジャマをめくり上げて、真っ白な素肌の胸をさらす。



…やだ、何を、するつもり?


お兄ちゃんが、私の胸に顔を刷り寄せる。

私の匂いを 胸一杯に嗅ぐ。


黒蝗の私の胸の奥が…溜まらなく切なくなる。



…お兄ちゃん、私は此処にいるの!

…それは、私じゃない!

…私以外に、そんな事 しないで!



黒蝗の私は、おにいちゃんに手を伸ばす。

鋭い鉤爪が、お兄ちゃんの柔らかい指の肉をえぐる…



直人:『あいた、』



お兄ちゃんの指から、血があふれ出す。



…ゴメン、でも、どうして?


お兄ちゃんは、不思議そうに その指から流れ落ちる血液を見ている。


私の身体が、愛おしそうに、その指を 唇にたぐり寄せる。

そして、しゃぶる、吸い付く、


私の口の中に、お兄ちゃんの血液の味が充満する。

私の身体の中に入り込んでくる「命の熱」を、黒蝗の私の下腹にも同時に感じる、



…怖い、怖い、怖い、怖い、


私の肉体は、ニヤニヤしながら、口の周りを真っ赤な血でべとべとにする。



…一体、どうなってるの?  助けて、誰か助けて!


私の肉体は つばを塗りつけて、喉の奥深くまで お兄ちゃんの指を飲み込む、


突然 嘔吐が沸き起こり!

私の口の中に、胃液が逆流する。


私の肉体はそれを吐き出しながら、尚も血を吸い続ける。


お兄ちゃんが、私の胸に優しく口づけする。


部屋中が、影のヒトであふれている。

私とお兄ちゃんがもつれ合うのを見ている



…違うよ、お兄ちゃん、それは私じゃない、


私の下半身が、過剰な収縮を繰り返している。

…両脚をなすり付けて、雄の部分を探っている。


私の唇が、お兄ちゃんの柔らかな、鎖骨の上の肉をなぞる。

…頚動脈を探り当てる。



…やめて、お願い、


私の牙が、薄い、柔らかい肉の奥の、硬い管の感触を感じている。


私の肉体は、朦朧もうろうとした目で…

…首筋の血管を甘噛みしてもてあそぶ。




私は、お兄ちゃんの首を 噛み切ろうとしている。


私はお兄ちゃんの血が欲しい。

全部、飲みたい。



駄目に決まってる! 何とかして、助けないと…


私は手を伸ばして私の身体に触れようとするが、影のヒトたちが邪魔をする。



私が、お兄ちゃんの首筋に歯を立てている…

…咀嚼の為の強力な顎の筋肉が、みりみりと牙を食い込ませて行く。



…だめええええ!!!!



私は!

思いっきり 臍の緒をたぐり寄せた!



…千切れたって、構わない!!


それは、私の肉体へと通じている。











直人:「直子、痛いよ。」


私は、お兄ちゃんの首筋に噛み付いた格好で目を覚ます。



直子:「…はあっ、はあっ、はっ…」


呼吸が…、もの凄い事になっている。

だらだらと涎をたらしながら身体を起こす。


下着も…、もの凄い事になっている。

もろもろ、タレている。


胸は はだけて、

先っぽが…、じんじんする。


お兄ちゃんの首筋には、くっきりと歯形のあと、それと数えきれない程の キスマーク



直人:「お前、もしかして寝ぼけてただろ。」

直子:「……」


私は、今更ながら はだけた衣服を直し、あられも無く開きっぱなしの両脚を固く閉じる。


少し冷静になって、どんどん恥ずかしくなって来る。



直子:「お、お兄ちゃんの、…エッチ、」


私、ガン泣きしている…



直人:「あっ、ええっ? えええええ??」

直人:「だって、直子が…、えええっ???」


お兄ちゃん、混乱している、変に焦っている。


ゴメンね、

お兄ちゃんは全然悪く無いよ…







私は、自分の身に起こっていた事を、全部 お兄ちゃんに告白した。


また、魂が抜けていた事。

そして、黒蝗の事。


私は、どうして 黒蝗になっていたのだろう。

どうして、黒蝗の私は、私と繋がっていたのだろう。


もうちょっとで、私の肉体は、お兄ちゃんを傷つける処だった。

あれは、あの時私の肉体を乗っ取っていたのは、一体なんだったのだろう。


全ては私が寝ぼけてやった事なのだろうか?

それとも、何か邪悪なモノが、私には取り憑いているのだろうか?




何時迄も泣き止まない私を、お兄ちゃんが優しく抱きしめてくれる。

登場人物のおさらい

朝比奈直子:主人公

春日夜直人:被害者

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