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エピソード9 援助 <NaoTo Part>

金曜日、真夜中23時過ぎの児童公園。


坂道の途中に有る この児童公園の前に、デロデロと下腹に響くエキゾーストノートを垂れ流しながら、真っ黒な小型トラックが停車する。


やがて、右側のドアが開いて 僕が地上に降り立つ。

地面迄が…やたらに遠い。



直人:「でかいね、無駄に。」

美少年?:「そうだろう! 全長6560mm、全幅2017mm、まさにヘビーデューティとは この事だよな。」


コレ又 黒尽くめの世紀末ファッションに身を包んだ美少年? が左側の運転席からタラップを使って地上へと降り立つ。



美少年?:「今年モデルから385HP、850ポンドフィートに引き上げられたんだぜ! この6.7L ディーゼルターボは マックスペイロード(最大積載量)2880ポンド、マックストウ(最大牽引重量)18250ポンドを弾き出すんだ!」


何だか、目をキラキラ輝かせながら、本当に嬉しそう…



美少年?:「カミンズだぜ、カミンズ!」


美少年?:「そもそもディーゼルターボなんてモノは出力・トルク出そうと思えば幾らでも出せるんだ。 それを受けとめられるアクスルとトランスミッションの技術が追いついてこその性能アップって訳なのさ! 分かるかなぁ〜」


…いや よく分かんないよ、悪いけど。



直人:「ディーゼルなんだ。 今時珍しい…」


美少年:「何 馬鹿な事言ってんだ? 俺はガソリンなんてエンジンとは認めないね。 あれは単なるモーターだ。 まあ、唯一「HEMI」だけは ガソリンだけどエンジンと認めてやっても良い。」


直人:「なんか世界中の自動車会社の人に謝った方が良いんじゃないか?」


美少年?は 巨大なフロントフェンダーを拳で叩いて その頑丈さを確かめる。 


…何だか満足げ、



直人:「大体、850ポンドフィートってどれ位のもんか見当もつかないんだけど、一体何を引っ張るつもりなの?」


美少年?:「家だって、船だって、何だって引っ張ってやらあ!」


直人:「いや、日本の道じゃ狭くてそんな物引っ張って走れないって。」

美少年?:「心配すんな、バスが走れる所なら何処だって走れるさ。」


今度は、僕の手を引っ張って車の後ろに連れて行く…



美少年?:「ほら、このリアビュー見てくれよ、実に色っぽいだろう? ただ単にいかついだけじゃない、…この大きく膨らんだリアフェンダーのセクシーなヒップラインが堪らないんだ。」


美少年?は、何だか 本当にうっとりした表情を見せる…



直人:「後ろのタイヤ2個ずつ付いてるんだ。」


美少年?:「デュアル・リア・ホイールって呼んでくれ! 知ってたか? タイヤの数は多い方が偉いんだぜ!」


直人:「偉いって? …何が偉いの?」



美少年?:「コレこそ まさにカー・オブ・ザ・カー! こいつのカーゴの中でなら、俺はどんな風に陵辱されたって構わない!」


…美少年?が、お気に入りのリアフェンダーに頬ずりする、



直人:「100歩譲って、お前のトラックへの愛情と 車社会に対する偏見は受け入れたとしよう… でも、何で お前運転できるんだ? いつの間に免許とったの? ていうか、お前、僕より若かった筈だろう?」


美少年?:「若い? たった3日違いじゃないか。 それに、免許?なんて物は 運転に自信が無い奴が運転しても良いかお役所にお伺い立てる為に取るもんだろうが。 はなっから天才的なドライビング・テクニックを持ってる俺様には無用の長物って事さ。」


直人:「いや、それ大きな誤解してるぞ…。」



真夜中に大声で騒いでいる僕らを聞きつけて、辺りの住人が騒ぎ始める。 まあ、普通に不良少年がたむろって居ると見えなくも無い、というかそれ以外には見えない。



直人:「おい、お前の所為せいで何だかみんな起きちゃったじゃないか。」

美少年?:「お前、いつも俺の所為にすんのな。」

直人:「お前、人目につくと不味いんじゃ無かったのか?」



美少年?:「うっ、…そうだ。 どうしよう直人、」

直人:「取り敢えず 僕んに来るか。」


いきなりシオラシクなる不良少年…



美少年?:「おお、そうする。 何か飲み物有るか?」

直人:「乳酸菌飲料か、水道水なら有るぞ。」


美少年?:「シュールだな…」




直子:「お兄ちゃん!」


…何故だか、妹が 坂道を駆け下りて来る、



直子:「誘拐されたって?」

仁美:「直人、大丈夫だったの?」


仁美迄…なんで?



美少年?:「お兄ちゃん? 誘拐? 一体、何の事だ?」

直人:「お前が無理矢理 僕を車に引き摺り込んだからじゃない?」


巨大なボンネットグリルにもたれ掛かる美少年?の姿を見て、仁美と直子が硬直する。



仁美:「この人…まさか、リバイアサンの「京華」?」





人気ヘビーメタルバンド「リバイアサン」のリードギター「京華」。

ボーカル「直樹」とのBL疑惑の所為せいも有って、一部の中高生女子の間ではカリスマ的「受け」担当として絶大な人気を誇っていた。


美少女と見まごう?迄の清楚な顔立ち、比較的小柄な体躯に攻撃的な表情と立ち居振る舞い。 時折見せるドジっ子な仕草も相まって、ギャップ感満載の「生意気だけど可愛い弟」ポジションを確固たるモノとしている。



直子:「なんで、お兄ちゃんが「京華」と一緒に居るの?」

美少年?:「直人、コイツ お前の妹?」


…直子が、美少年?に 見つめられて赤くなっている。



直人:「ああ、手を出すなよ。」

仁美:「あの? 本物の「京華」さんですか?」


…仁美が、僕と美少年?の間に割って入る、



美少年?:「んで、コイツは誰?」

直人:「お前、相変わらず口が汚いな。…友達の森口さん、この子にも手出したら駄目だよ。」


…仁美も、赤くなる。



美少年?:「出さねえよ。 俺は女には興味ないって。」

直子:「やっぱり、…BLって噂は本当なんですか?」


…妹の顔は ワクワクになっている。



直人:「取り敢えず、近所迷惑だから…うちに入ろうよ。」





101号室、

管理人室を そこそこ適当に片付けた だけの6畳一間に4人で押し掛ける。



美少年?:「ここがお前の家か、シュールだな…」


直子:「お兄ちゃん、お兄ちゃんと「京華」さんは、一体どういう関係なんですか?」


直子が、何故か 敬語になっている。

何故か 正座してるし…



直人:「紹介するよ。 この人は 田中幸子、僕の幼馴染だ。」

幸子:「宜しく!」


仁美:「田中…」

直子:「幸子?」


仁美×直子:「女…の人なの?」


珍しく息の合った二人が見つめ合う。



仁美:「だって、「京華」って男? だよね…」

直子:「双子の兄妹とか?」


直人:「正真正銘の「京華」だよ、女だけど…」

僕は、苦笑い…



幸子:「それより、直人、喉乾いた。」

直人:「お前、車運転しながらずっと喋ってるからだよ…」


「京華」もとい幸子は、勝手に冷蔵庫を開けて、中味を物色する。

…入ってるのは 主に管理人さんの物だけど、



幸子:「おっ、ビールあんじゃん、もーらい!」

直人:「お前、未成年の癖にお酒は不味いだろう。」

幸子:「相変わらずだなぁ直人は、硬いのはアソコだけにしとけよ。」


二人のいたいけな少女は、金魚の様に目を見開いて「京華」の一挙手一投足を凝視している。 ほっぺたは、夢見る女の子の様に赤く染まっている。



直人:「少女の夢を壊す様な事を言うなよ…」


幸子は炭酸飲料の缶を開けると、コクコク一気飲みする。




幸子:「布団…敷いてあるじゃんか!」


一体何を考えたのか、幸子はおもむろに服を脱ぎ始める。



直子:「何で? 脱ぐんですか?」

幸子:「服のまま寝たら、しわになるじゃないか。」


脱いだ服を綺麗に畳んで、下着姿で布団に潜り込む。



幸子:「ちょっと、寝かせてくれ…」


直子と仁美は、芸能人から目が離せない…



仁美:「本当に女の子なんだ。」

直子:「直子よりおっぱい大きかった。」


直子:「って、お兄ちゃん! 幼馴染で女の子で、下着姿見られても平気って…もしかして「京華」さんと 昔付き合ってたとか??」



幸子:「誰がこんな奴と付き合うかよ。」

幸子:「気色悪い。」


布団の中から「京華」が顔だけ覗かせてブーブー ブータレル。



直人:「お前、相変わらず口が悪いな〜」


直子:「お兄ちゃん、この人 本気で寝ちゃいそうだよ。」

直人:「困ったな、僕の寝る所が無い…。」


直子:「それじゃ、仕方が無いから 私の布団で一緒に寝ようか。」


何だか、急に直子が艶かしい声で挑発する?

…金曜日の夜だから??



仁美:「アンタ達…そう言う関係だったの?」


直子:「そうよ、いつも二人で一緒の布団で寝てるんだから。」

直人:「二回だけだよ〜」


…何で、こんな会話になってるんだ?



仁美:「二回も、寝たの? 兄妹で?」


仁美が目をぱちくりする。



直子:「お兄ちゃんは私の事愛してるんだから、別に何の問題も無いわ。」


…直子は、何故だか勝ち誇った風、



仁美:「ふーん、そう、直人も大変ね、こんな可愛い イモウトさんと一緒に 添い寝してあげるんじゃ… あんなにタマッテても、しょうが無いよねぇ。」


えっ、…二人だけの秘密って約束は…どうなったのかなぁ?



直子:「あんなに…タマッテ…って、何よ!まるで見て来たかの…」

直子:「はっ! …まさか!」


直子の顔が、一瞬で完熟 に…

僕の顔は、一瞬で蒼白に…



仁美:「まあ、お互い「溜まってる者同志」ストレス解消って言うのも、極普通の流れじゃない? 愛とか良くわかんないけどぉ。」


…今度は、何故か仁美が勝ち誇った風、



直子:「お、お兄ちゃん! 一体どういう事なんですか! ちゃんと説明してよね。 …不純異性交遊よ、不潔よ! 変態よ!」


仁美:「別にぃ、唯の友達だけどぉ、まあ、イモウトさんには ああ言う事はさせられないものねぇ…」


…確実に、今晩はまともに眠れない気がして来た、

厳しく詰問され…、朝迄拷問され…、枯れ果てる迄同じ事を…やらされる?


直子は、明らかにパニクっている…



直子:「わ、私なんか、お兄ちゃんのつば…」


…僕は急いで直子の口を塞ぐ、



直人:「もう、…遅いから、大きな声は止めようね。」

幸子:「オモシレエな、お前の身内…、」


幸子が、布団の中からニヤニヤ笑って見ている。




…携帯電話の着信音。



幸子:「ちぇっ、呼び出しかぁ…」







僕は、幸子を車迄 見送る。



幸子:「それで、…急に呼び出したのは、どういう用件なんだ?」


直人:「金貸してくれないか。」

幸子:「幾ら?」


直人:「150万円。」

幸子:「どっかの詐欺みたいだな。…ヤダよ。」


幸子は、上着の内ポケットから小切手帳チェックを取り出すと、

…慣れた手つきでサインする。



幸子:「貸せなんて水臭いこと言うな、欲しいだけやるよ。」

直人:「悪いな。」


幸子:「その代わり、俺が困った時は助けろよ。」

直人:「お前が困る事なんてあるのか?」


幸子:「時々、…自己嫌悪に陥る。」


ちぎったチェックを僕に差し出す。

…0が、明らかに一個多い、



幸子:「それで、本当に困ってる事はなんだ?」

直人:「…妹を好きになった。」


僕は、あっさりと白状する。

…こいつに隠し事なんて無理な事は、分かっている。



幸子:「なんだ、良かったな。 あのちっこい方か、可愛いじゃん。」

直人:「その、…女として好きなんだ。」


…きっと、僕の顔は 夢見る少女の様に赤い筈、



幸子:「妹が女で良かったじゃないか。

…少なくとも俺の事をそんな目で見ないでくれて ほっとしたよ。」


直人:「お前の事は、…無理だろう。 妹みたいなもんだからな。」

幸子:「ふざけるな、お前が弟だろう。」



直人:「でも、…妹に恋愛感情抱くなんて 変じゃないかな?」

幸子:「そうか? 流行ってるみたいだぞ。」


直人:「良いのかな?」

幸子:「お前って変なとこ真面目だよな。」


…携帯の音、再び



幸子:「やれやれ、五月蝿うるさいな。

…そろそろ行かなきゃ、クロアチアで撮影するんだと。」


黒尽くめのヘヴィメタ美少年?は、巨大なキャビンに…よじ登る。



直人:「大変だな、」

幸子:「別に、たいした事ない。」


直人:「幸子、ありがとな。」

幸子:「名前で呼ぶな。 気持ち悪い。」




イグニッションキーでスターターを回して、

…夜分近所迷惑な 重低音エキゾーストノイズが辺りに響きわたる!。



幸子:「じゃあな、話出来て 楽しかったよ。」

直人:「またな。」



ゆるゆると、黒いヘビーデューティが動き出す。

ヒラヒラと紅葉の様な小さい掌が、運転席の窓から合図を送る。




ホイールスピンのスキール音を上げて、ピックアップトラックが深夜の住宅街を疾走する。


登場人物のおさらい

春日夜直人:主人公

朝比奈直子:イモウト

森口仁美:トモダチ、溜まってるモノ同士

田中幸子:幼馴染、ヘヴィメタバンド「リバイヤサン」のリードギター「京華」

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