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エピソード8 障害 <NaoTo Part>

清々(すがすが)しい朝。 しかも金曜日。

身体が軽い、昨日迄の 陰陰滅滅いんいんめつめつ な気分が まるで嘘の様!


何か良い事が起きそうな予感!


そう、僕は前向きな性格だけが取り柄の、17歳 健康男子なのだ!



直人:「お早うございます。」

礼子:「お早う、いつも早いね。」


築26年のきしむ 外階段を駆け上がる。



直人:「管理人室、最高です!」

礼子:「そう、それは良かった。」


乳酸菌飲料を取り込む 美人の管理人さんに元気よく挨拶する。



礼子:「すっきりした顔してるね〜」



そして爽やかに 202号室のドアを叩く。


直人:「直子、お早う!」

直子:「おはよ、…お兄ちゃん。」


現れた妹は…どことなく元気が無い。



直子:「昨日は、ごめんなさい…。」


いや、見るからに元気が無い。

…目の下にくま? が出来てる。



直人:「もしかして、眠れなかったの?」

直子:「ちょっとね、…色々考え事しちゃった。」



直人:「あのさ、朝の分なんだけど…。」

直子:「ウン、」


朝の分と言うのは、直子を影のヒトから遠ざける為の「退魔エキス」の事だ。 大体8時間位しか持たないので 朝、昼、晩、と一日に3回接種する。


ちなみに内容は僕の唾液だえきだったりする。



直人:「考えたんだけど、やっぱりキスは不味まずいだろ。 …二人とも 変な気分になっちゃう。」


直子:「ううぅ…そうだね。」


僕は 管理人室においてあったショットグラスを取り出して見せる。



直人:「此処に入れるから、それを飲む…って言うのでどうかな。」

直子:「ウン、…分かった、そうする。」


僕はショットグラスにチロチロと唾液を溜めていく…



直子:「なんかお薬みたいだね。」


妹は 少し泡立った透明な唾液を、じっと見つめている。



直人:「ちゃんと歯は磨いたよ。」

直子:「えへへ、そういう意味じゃないけど、…ちょっと寂しいかなって思って。 お兄ちゃんのキス好きだから…」


妹は照れながらグラスを受け取り、 ゆっくりと傾けて それを口に含む。 


目を閉じて クチュクチュと味を確かめる?

…そして、コクコクと飲み下す。



直子:「大丈夫みたい、ありがと。」


…何だかこそばゆい気分、








直子:「朝ごはん食べてく?」

直人:「作ったの?」


どうやら直子は朝のブラッシングの途中だったらしい、

買ったばかりのドライヤーが出しっぱなしになっている。



直子:「うん 昨日、目刺めざし買ったのがある。」

直人:「食べていこうかな。」

直子:「今焼くね、」


電気コンロにフライパンをセットして、

…縄からほどいた目刺しを その上に並べていく。



直人:「直子、なんか元気無いね。」

直子:「お兄ちゃんは 元気出過ぎだよ。 もしかしてそんなに私と一緒の部屋が苦痛だったの?」


…ちょっと膨れっ面で僕を睨む。



直人:「いや、そう言う訳じゃないよ。 でも直子と一緒だと緊張するって言うか、恥ずかしくて色々…、やっぱり一人になりたい時も有るんだよ。」


…目刺しを菜箸でひっくり返しながら、



直子:「一人になって何するのよ? どうせエッチな事でしょう…」

直人:「いや、それも必要な事だと思う…よ。」


…お揃いの茶碗にご飯をヨソル。



直子:「私が居たって良いじゃない。 なんならお手伝いしてあげるのに。」

直人:「そんな事したら、また昨日みたいになっちゃうだろ、」

直子:「ぶー、」


…唇をとんがらせて眉間にしわを寄せる、



直人:「かく、寝る時くらいは部屋が違ってた方が落ち着くよ。」

直子:「良かったね! 私は、寂しかったよ。…て言うか寝られない。」

直子:「こんなになっちゃったのは全部お兄ちゃんがいけないんだからね、…責任とってよ。」


直人:「どうすりゃ良いんだよ。」

直子:「知らない。 教えない。」


直子:「何だか、私一人で悩んでて 馬鹿みたい。 …お兄ちゃん、嫌い!」



折りたたみ式のちゃぶ台に並ぶ白いご飯とお味噌汁、

…そして、一つのお皿に3匹の目刺しが並ぶ。


一匹目はあっという間に片付く。



直人:「どうして4匹焼かなかったの?」

直子:「縁起悪いでしょ! ジャンケンよ!」


…僕がグーで、直子がパー。



直人:「頭 頂戴。」

直子:「はい、あーん。」



直子には申し訳ないと思うが、

僕は、本当に 一週間ぶりにぐっすりと眠った。






妹と一緒の登校。

自然と皆の注目が集まる。 何しろ、直子は今や時のヒトである。


…可愛い妹を持つのは悪い気分ではない。



教師:「春日夜、ちょっと良いか…」


担任の鈴木に呼び止められる。



直子:「じゃあ、お昼休みにね。」

直人:「ああ、体育館の入り口で待ち合わせしよう。」




僕は、職員室の隅の会議席に座らされる。



鈴木:「今、お前と朝比奈さんの事が問題になってる。

…昨日、保健室で校医の下柿本先生が お前たちが「不適切な関係」になっていると言う「告白」を聞いたと言っている。」


鈴木:「下柿本先生は こう言う色恋沙汰に異常に厳しいんだ。 実は数年前に、色恋沙汰で心に深い傷を負った女子生徒がいてな、先生もつらい思いをしたらしい。 まあ俺が赴任してくる前の話らしいがな、」


鈴木:「今日、お前達の保護者に話をしに行くと言っている。」


何だか、面倒くさい事になっている…



鈴木:「編入の時は それぞれ別の申請だったから気付かなかったのだけど、お前たちの住所は同じになっているんだな。 …1年の田中先生から、お前たちの両親の事情は聞いた。」


鈴木:「通常、お前達の様な境遇の生徒は、より管理の行き届いた「施設」で暮らすのが一般的なんだ。 色々家庭の事情はあるんだろうが、問題が起きる可能性がある事を知って、そのまま見逃す訳には行かない。 …と言うのが教職員会議での結論だ。」


鈴木:「君達は従妹同士なんだろう。 仲がいいのは良いが、学校内での行き過ぎた振る舞いは自重してもらわないと困る。 合わせて、学校外での素行に付いてもチェックすると言うのが今回の目的だ。」


鈴木:「今日の午後、君たちの身元引受人になってくれている中川さんと話をしたい。 連絡を取っておいてくれるか。」


…何だか、妙な展開になった。




教室で、


仁美:「鈴木に呼ばれたんだって? 大丈夫だったの。」

直人:「うん、ちょっとね、…僕と直子の事が問題になっていて、先生がうちに話しに来るって。 …悪いけど今日もバイト休んで良いかな?」


昨日、あんな事があったばかりだから…やっぱり照れる。



仁美:「良いけど、…埋め合わせはしなさいよ。」

直人:「埋め合わせって?」



仁美もかなり真っ赤になっている、

…何故だか、鏡辰也がニヤニヤと僕らを眺めている。



仁美:「アンタ、昨日 私の事 中途半端にほったらかしたまんま帰ったでしょう。 …お陰であの後 勉強が 全然手に付かなかったんだからね。」


仁美:「成績下がったらアンタの所為せいだから。」


なんだか、今日は各方面から脅迫される日らしい、

…目覚めは良かったんだけどな。



直人:「僕、そんなに成績よく無いよ。」

仁美:「別に 勉強教えろなんて言ってないわよ。」


仁美:「その代わり、欲求不満解消に協力してくれても良いでしょ。」


仁美、こっそりと僕の耳元に手を当てて囁く、



仁美:「ついでに…アンタの解消も手伝ってあげるから。さ、」


…今度は、僕が真っ赤になる。



直人:「お前の事が、神様の様に見えて来たよ。」

仁美:「ほんと、大袈裟なんだから。」



仁美:「じゃあ、今日の夜来れる時間からで良いからうちに来てよ。」


直人:「今日やんの? 本気なの?」

仁美:「何か、用事有るの?」

直人:「無いけど、緊張するな…」


仁美が何だか嬉しそうに教室を出ていく。



辰也:「式には呼んでくれよ。 歌うたってやるから、」

直人:「そんなんじゃないって!」






下柿本:「部屋を見せてもらえますか。」


2人の教師と、委員会のヒトだと言うもう一名が、スカイコーポ中川を訪ねて来る。



礼子:「直子さんが202号室で、直人さんは101号室です。」


何だか不良物件のあら探しする様な目付きで教師達が部屋の中を観察する。



教師:「狭いな。 こんな所で一人暮らしなんて。」

礼子:「まあ、寮みたいなモノですね。」

教師:「夜中に外から男が入って来ても全然分からないんじゃないか。」



下柿本:「親御さんも居ない、十分な監視も行き届かない。 こんな処で年頃の二人を野放しにしておいて、本当に問題が起こらないとお考えですか?」


礼子:「問題って、何ですか?」

下柿本:「中川さん、何か起こってからでは、取り返しがつかないんですよ。」


校医は 呆れた…という風に 深い溜息をつく。



教師:「最近、学校での二人の行動は、少し羽目を外しすぎているというか、節度が足りないように思えます。 所構わず口付けしたり、人目も気にせずに抱き合ったりという光景を多くの生徒が目撃しています。 周りの生徒に与える影響も計り知れません。」



下柿本:「中川さん、私は長い目で見て、二人を別の施設、別の高校に離れさせた方が、結果として二人の将来の為に良いと考えています。 今の時期が勉強や、情操教育にどれだけ重要かは 大人の貴方になら分かりますよね。 一時の不自由に不平を言ったとしても、後になってみれば 二人もその方が良かったと感謝するに決まっているんです。」


礼子:「決まっているって、何で其処迄 言い切れるんですか? 人それぞれでしょう。 皆がみんな貴方の考えに当てはまるとは言い切れない筈です。」



礼子:「それに、私は二人の父親から二人の事を任されたんです。 二人を一緒に暮らさせると言う事は二人の父親の意思でもあります。」


下柿本:「こんな所に、子供を置き去りにした親の言う事等…まともに取り合わない方が良いに決まっています。」


…どうやら校医の口癖は「決まってます。」らしい、



下柿本:「こんな環境で、とても責任を持って二人の素行を管理出来るとは思えません。 中園さんも、そう思いますよね。」


多少普通の人っぽい委員会の中園女史は、強引すぎる下柿本の言い様に 多少タジタジしている様子だった。



教師:「少なくともどちらか一名、出来れば朝比奈さんをきちんとした寮施設に入れる事。 それが出来ないのであれば、当校への編入の見直しを提議します。 期限は1ヶ月です。」




夕方 18時30分、

散々言いたい事だけ言った後、下柿本一行はスカイコーポ中川を後にした。




礼子:「まあ、「提議します」…っていうのは、決まったって訳じゃないから、そんなに心配しなくても平気だよ。」


僕たちは、玄関側2階の手摺てすりにもたれかかり 黄昏色たそがれいろに染まっていく街の風景を眺めていた。



直人:「何か、色々ご迷惑かけてスミマセン…。」


礼子:「そんなに環境悪いかなぁ、うちのアパート。」

直人:「幽霊は出るみたいですよ…」





烏が一羽、…茜色の空を 森へ帰って行く。

登場人物のおさらい

春日夜直人:主人公

朝比奈直子:妹

中川礼子:美人の管理人さん

森口仁美:友達以上、恋人未満

鏡辰也:前の席の男子、多分友達

鈴木:直人のクラス3Bの担任

下柿本:校医

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