表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/24

エピソード7 代替 <NaoKo Part>

何か変、


どうしてあんな事を言っちゃったんだろう。

二人が本当の兄妹だ なんて事、

それなのに堪らなく好きだ なんて事、


絶対に お兄ちゃんには話さないって 心に決めてた筈なのに。

…私、きっと どうかしてたんだ。




変になったのは、お兄ちゃんの血を舐めた後だ。

全身の力が抜けて、頭が真っ白になって、何もかもがどうでも良くなって、


気がついたら隠しておいた事をペラペラ喋ってた。





急に我に返って恥ずかしくなった私は 呆然とするお兄ちゃんを置き去りにしたまま 一人学校を飛び出して来てしまった。


早退不良女は スーパー「イチカワ」で晩ご飯の買い物を済ませた後、スカイコーポ中川への急な坂道を上っていく。


途中の児童公園の桜は、すっかり若々しい葉桜へと姿を代えていた。



…私も、あんな風に生まれ変われれば良いのにな。





アパートの前で管理人さんに呼び止められる。



礼子:「直子ちゃん、ちょっと お茶していかない?」


101号室



礼子:「昨日は、その ごめんなさいね。」

直子:「こちらこそ、お恥ずかしい所をお見せしてしまいました。 …スミマセン。」



礼子:「お兄さんと、上手く行ってないのかな、もしかして。」

直子:「いいえ、悪いのは私なんです。 一人で勝手に不安になって、」


直子:「時々、わーってなっちゃって、言わなくても良い事を言っちゃったりするんです。 私、子供なんですかね。」


管理人さんが、紅茶を入れてくれる。 …良い薫り、



直子:「そう言えば 礼子さんは、私のママと友達だったんですよね。」

礼子:「そうね、今でもそうだと思っているわ。」



直子:「どっちのママと、友達だったんですか。」

礼子:「直美が私の親友。 貴方を生んでくれたお母さん。」



礼子:「いいもの見せてあげるわ。」


引っ張り出してきたのは 古い写真、

ふざけあっている二人の女性、



礼子:「大学時代の私と、これが直美。 もう20年近く前の写真ね、 …凄い髪型、というか化粧酷い…。 この頃は流行ってたのよ、こう言うの。」


直子:「へえ…」


礼子:「こうしてみると、やっぱり貴方って直美に似てるわね。」



はじめて見る、ママの顔。

私なんかより ずっと溌剌はつらつとしていて、ずっと綺麗。



直子:「やっぱり、私とお兄ちゃんは血のつながった兄妹なんですね。」

直子:「実の兄の事が好きになっちゃうのって、変ですよね。」


あの時、私は 本当の兄妹でも構わない、結ばれたい、結婚は無理でも、交わりたい。 本気でそう思ってしまっていた。



今は、やっぱりチョット怖い。

好きなだけじゃ上手く行かない事が有るのを私は知っている。

誰にも祝ってもらえない「好き」は不幸を呼び寄せる。


私を生んでくれたママ。

みんなから疎まれ、嫌われ、忌まれ、

多分、それで私達の前から姿を消した。


私を育ててくれたママ。

悲しい、辛い、悔しい 思いをして、

多分、それで重い病気になった。



私が生まれた事で、私の二人のママは不幸になった。

私は お兄ちゃんを不幸になんてしたく無い。




礼子:「実の兄妹って言っても 生まれてから 今迄一度も会った事無かったんだものね。 突然引き合わされて 突然一緒に暮らし始めれば、一人の男性として意識しちゃっても仕方ないと思うわ。」


直子:「どうして、パパ達は そんな事させたんでしょうか。」

礼子:「さあ、私にも分からない。」



礼子:「きっと貴方達は急激に接近しすぎて混乱してるんだと思う。 少し冷静になる為にも お兄さんと距離をとるのも良いかも知れないわね。」


礼子:「直人君にはこの管理人室を使ってもらう事にしましょうか。」

礼子:「家賃とかは気にしなくていいよ。 私、貴方達のお母さん代わり… 気分的には、お姉さんの代わり位に思ってるんだから、遠慮しないでね。」



直子:「はい。」



ほんの一週間前まで、私はお兄ちゃんと会った事もなかった。

…なのに今、お兄ちゃんが居ない生活なんて考えられない。


自然と涙がこぼれそうになる。

でも、きっと礼子さんが言ってる事が正しい。








時計は22時30分を回っている、

私はお兄ちゃんの布団で包まりながら、パジャマの匂いを嗅いでいる。



お兄ちゃんの帰りが遅い、


何してるんだろう…

あの女と、イチャイチャしてるんだろうか…



また、勝手に 涙が流れてくる。


お兄ちゃんを放したくない…

私だけのものにしたい…



不安な気持ちは 影のヒト を活性化させる。


うっすらと、影のヒトが動き回る姿が見え始めている。

風呂場から、ぶつぶつ囁く声が聞こえてくる 。

部屋の灯りが、次第に灰色の闇に包まれていく。



ブレスレッドの効力を失った今、私はお兄ちゃん無しでは まともな生活も送れない。


私は再び、影の中に引き摺り込まれていた。


そう、私はもともと影の中に棲んでいた。

お兄ちゃんに出会って、初めて影の無い世界を知った。

それはとても心地よかった。 眩しかった。 温かかった。



でも、私には陰の中に棲まなければならない理由があった筈、


…私は穢れていなければならない

…私は壊れていなければならない



お兄ちゃんだけが、私を完全にする事が出来る

だから私はお兄ちゃんが欲しい

だから私はおにいちゃんを手に入れてはいけない







扉:「カチャリ」


ようやく、お兄ちゃんが帰って来る。



直子:「お帰り。」

直人:「ただ今。」


私はパジャマを抱きしめたまま 玄関迄迎えにいく。



直人:「今、礼子さんから話を聞いた。 僕、管理人室に移るよ。」


お兄ちゃんは 後ろを向いたまま、靴を揃えながら返事する。



直子:「お兄ちゃん。」

直人:「何…。」


お兄ちゃんは私から目を逸らしたまま部屋の奥へ、

私はお兄ちゃんに引っ付いて歩く。



直子:「ごめんなさい。」

直人:「直子は、…何も悪い事なんかしてないよ。」


振り向いてくれたお兄ちゃんの顔は、それでも何だかつらそうだ。



直子:「…ママの事。 傷ついた?」

直人:「…直子は、嘘はついてないんだろう。」


私はこっくりと頷く。



直人:「だったら、何も謝る事なんて無いさ。話してくれてありがとうね。」


お兄ちゃんは笑ってくれる。 でも…元気が無い。



直子:「お兄ちゃん、直子の事、嫌いになった?」

直人:「嫌いになる訳 無いよ。」


きっと、私 泣きそうな顔してる。



直子:「血がつながった兄妹でも、優しくしてくれる?」

直人:「当たり前だよ。」


私は、何時の間にかお兄ちゃんのシャツを摘んでる。



直子:「抱っこして。」

直人:「何で?」


だって、…不安で溜まらないんだもの、

直子:「だって、…お兄ちゃん、直子の事 抱っこしたい、キスしたいって言ったじゃない。」


私は、無理矢理お兄ちゃんにしがみ付く。

その途端 …温かさと、明るさが、私に蘇って来る。



直子:「キスして、」

直人:「でも…、」


直子:「…夜の分、頂戴。」

直人:「そう言う事なら…、歯を磨いて来る。」


直子:「いいの、そのままで良いから。 お願い。」



私は目を閉じて 、

…お兄ちゃんが唇を重ねる。


奪う様に舌を絡ませ、

…次第に二人の呼吸は激しくなる。



私の動悸は まるで早鐘はやがねの様、

…これから起きる事をおそれ、期待し、自然と全身が強張る。




そのまま床に崩れ落ち、抱きしめ合い、むさぼり合う。

…お兄ちゃんの掌が、私の胸をまさぐり、

…私の硬く尖った部分が、敏感に異性を感じる。




全てが済んでしまうまで、意識を何処かへ避難させられれば良いのに、

いなごの羽音が 頭の中を響き渡る。




私は、お兄ちゃんの唇を噛み千切り! 零れ出した赤い血液を舐める! 吸う!

…何も考えられない、

…既に身体の自由は奪われている。




ガラスに映った私の姿は、雄を求める雌の様に両手両脚で男を抱え込み、艶かしく蠕動ぜんどうしている。

…黒い蝗が、私の背中にしがみついている。



直子:「いやあ…」






私の絶望の呻きに お兄ちゃんが我に返る!


直人:「直子、ゴメン…」



私は、虚ろな目で天井を見上げ、弛緩しかんした手足を 無様に痙攣させ続けている。

吸血の絶頂を越えて、やがて緩緩ゆるゆると冷静さを取り戻す。

トロトロと鼻血が流れ出て、何時の間にか口元を濡らしていた。



既に黒蝗の姿は見当たらない、

…あれは、見間違いだったのだろうか?






お兄ちゃんが、優しく私の頬に触れてくれる。

タオルで、私の鼻血を拭ってくれる。



直子:「お兄ちゃん、ゴメンなさい。 …痛かった?」


お兄ちゃんの唇は、赤く腫れて血を滴らせていた。



直人:「ちょっと、びっくりした。」


直人:「やっぱり、一緒に居るのは ちょっと危険だな。

…きっと、僕、我慢できなくなる。」


お兄ちゃんが照れくさそうに笑う。



直子:「…私も、我慢できないかも、」


私も、つられて笑う。



直人:「僕、…やっぱり管理人室で寝るよ。」


直子:「うん、分かった …また明日ね。」

直人:「また明日。」



お兄ちゃんが 部屋を出て行った後 、私はゆっくりと身体を起こす。

お兄ちゃんエキスを充填された私は、すっかり温かさと鮮やかさで包み込まれていた。

幸い、鼻血は直ぐに止まった様だった。




直子:「あっ、」

気づかないうちに、ちょっと失禁している…

登場人物のおさらい

朝比奈直子:主人公

春日夜直人:兄

中川礼子:管理人、春日夜直美の親友

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ