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僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です

浮気した夫と愛人、魔道具で人生ごと暴かれて破滅しました

掲載日:2026/03/17


「ナタリー? あんな女、金になるから置いてるだけだ」


――その言葉を、私はあとで“映像”として見ることになる。


私、ベルフラワー・プラチアーナは、新米領主だ。


この土地は痩せている。

作物は育たず、民は貧しい。


――けれど。


「領主様、今年はすげぇ出来ですぜ!」


畑の前で笑うキーラ。

その隣で、呆れたようにため息をつくナタリー。


「まったく……無礼なんだから」


この二人は夫婦で、そしてとても仲がいい。


「いいのよナタリー。私はまだまだ新米なんだから」


私はそう笑って、土に手を触れる。


――土属性魔法。


土地を耕し、栄養を巡らせる。


それだけで、この痩せた大地は、少しずつ息を吹き返していった。


収穫量は年々増え、領地は目に見えて豊かになっていった。


キーラとナタリーにも子供が生まれた。

小さな命が、笑っている。


――いい領地になってきた。


そう思う一方で。


私は相変わらず、執務よりも魔法の研究に夢中だった。


「……魔道具、作ってみようかしら」


それは、純粋な好奇心だった。


ある日、何気なく使った探知魔法。


――反応があった。


場所は、キーラとナタリーの家の敷地の一角。


掘り出してみると、そこには質の良い魔石が眠っていた。


「……すごいわ」


魔石はまだまだ地中に眠っている。


いわば魔石鉱だ。


敷地の一角から出てきた以上、この利益はあの夫婦に与えるべきだろう。


――だからこそ、誰かに狙われてもおかしくはないが。


これだけあれば、あの夫婦の人生は大きく変わる。


もっと豊かに――


私は、何の疑いもなくそう思った。


それからしばらくして。


「領主様……相談が、あるんです」


ナタリーが、訪ねてきた。


その顔は、明らかにやつれていた。


「キーラが……浮気しているみたいで」


――空気が、止まった。


話を聞けば、豊かになったことで余裕ができ、キーラは別の村で女を囲っているらしい。


「……そう」


胸の奥が、少しだけ冷えた。


私はすぐにキーラを呼び出した。


「な、なんで領主様が……!?」


狼狽えるキーラ。


その隣には、例の女――愛人がいた。


ナタリーを一瞥し、鼻で笑う。


「……あなたが妻?」


その一言で、理解した。


――これは、ただの浮気じゃない。


その女は、ナタリーではなく“この家が生み出す価値”を見ていた。


「キーラ」


私が名前を呼ぶと、彼は顔色を変えた。


「ナタリーに、何か言うことは?」


「そ、それは……その……!」


最終的に、彼は平謝りした。


「もう関係は切る! 本当だ!」


ナタリーは、涙を流しながらうなずいた。


「……まだ、好きなんです」


けれど。


去り際。


愛人は、私を睨んでいた。


――あの目は、ただの敗者の目じゃない。


私は、ナタリーを呼び止めた。


「これを持っていきなさい」


手渡したのは、試作の魔道具。


「……領主様、これは?」


「未来を“視る”ためのものよ」


正確には、少し違う。


「あなたの選択が、どんな結果を招くか……それを示してくれる」


ナタリーは戸惑いながらも、それを受け取った。


「もしかしたら――」


私は静かに言う。


「それが、あなたを救うかもしれない」


半年後。


領地の空気は、どこか重かった。


噂が流れていたのだ。


――キーラが、また女を囲っている

――しかも、前より酷い形で


ナタリーは、耐えていた。


子供のために。


家庭のために。


けれど。


ナタリーの目の下には、うっすらと隈ができていた。


それでも彼女は、笑おうとしていた。


「……もう、無理です」


彼女は、魔道具を起動した。


その瞬間。


空間に“映像”が浮かび上がる。


キーラと愛人の会話。


「ナタリー? あんな女、金になるから置いてるだけだ」


「魔石も、全部こっちのものになるわよ」


「領主もチョロいよなぁ」


――すべて、記録されていた。


それだけじゃない。


未来の分岐すら映る。


そこに映っていたのは――


痩せ細ったナタリーと、泣きじゃくる子供。


家は失われ、抱きしめるものすらない。


「ごめんね……ごめんね……」


何度もそう繰り返しながら、彼女は地面に崩れ落ちていた。


――そして、その未来を作ったのは、目の前の男だった。


村人たちが集まり、ざわめきが広がる。


「……最低だな」


「子供まで巻き込むのかよ」


キーラの顔が青ざめる。


「ち、違う! これは捏造だ!」


だが。


魔道具は“真実”しか映さない。


ナタリーは静かに言った。


「……もう、遅いです」


キーラは崩れ落ちた。


愛人は逃げようとするが、村人に止められる。


すべてを失ったのは――彼らだった。


その様子を、私は遠くから見ていた。


「……うまくいったわね」


あの魔道具は未完成の試作品。


1回しか使えない欠陥品なのだ。


だが。


“真実を暴く”という一点においては、完成していた。


――魔法は、人を救うこともあれば。


――破滅させることもある。


私は、静かに目を閉じた。


――そしてまた一つ、この領地から“歪み”が消えた。




このお話に登場したベルフラワー・プラチアーナは、シリーズ本編第二作目「僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です2」の第3部おまけ、に詳しいです。


彼女の活躍が気になる方は是非お読みください。

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