想い出は風のように
想い出かき集めてみたかった
砂浜を一気に駆け出した
一瞬、背中越しのキミを
抜けそうな気がした
ときどきの追い風がそうさせた気がした
想い出にするのは、まだ早いよと
もうひとつの風が教えてくれた
立ち止まらないように
ふだん、わたしを応援してくれる風が
そう教えてくれた
キミらしい恋は、この夏に
できなかったかもしれないけど
そのぶん、二人で語れたから
わたしにとっては良かったと
「それだけでいいのかい?」
見知らぬ風がそう語った
どちらの方向からか
わたしの視界からは見えないところから
「想い出にするのは、まだ早くないかい?」
見知らぬ風が
また現れて、そう言った
わたしはなんとなくうなづきかけた
想い出はいくつあってもいいんだ・・
わたしは、その風に答えた
さっき、駆け出した砂浜にて
キミを追い越せそうな気がしたのは
追い風ではなくて、
この夏の想い出がそうさせた
そんなふうに思えたから