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転生のホムンクルス-最強勇者は魔法が存在する現代日本に転生しました-  作者: エア


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第88話『二つの肉体と、残された魂』

国立魔法大学の広場には、戦闘の痕跡と、破壊された総譜演算装置が散乱していた。ジンが再接続させた世界接続子のおかげで、空は通常の夜明けの色に戻っていたが、空気はまだ濃い魔力の残滓を帯びていた。


ジンは、自らの演算機を拾い上げ、損傷した総譜回路をチェックしながら、二人のアレクの元へゆっくりと歩み寄った。


ホムンクルスのアレクは、胸から血を流しながらも、完全に意識を保っていた。彼の隣には、血に濡れた勇者アレックス・ホークの元の肉体が、静かに倒れ伏している。魔王の邪悪な魔力は完全に排出され、その肉体には、勇者の魂の『核』と、レンの『根源の和音』が残されていた。


「ジン……終わったな」ホムンクルスのアレクは、弱々しく笑った。


「ああ、終わった」ジンは頷いた。彼はまず、倒れているレンの元へ駆け寄り、脈を確認した。


「レンは、極度の魔力消耗と疲労だ。命に別状はない。さすがは俺の妹だ。アンカーの役割を完璧に果たした」


ジンは立ち上がり、ホムンクルスのアレクの傷口を見た。彼の肉体の修復が始まっているが、その魔力の流れは以前よりもさらに不安定になっていた。


「お前の魂の『核』は、元の肉体へ定着した。使命は果たしたぞ。ホムンクルスの肉体に残ったのは、レンとの絆を主軸とする『自我』だけだ」


ジンは、アレクの元の肉体を見つめた。


「あとは、『選択』だ。お前の『自我』を、元の肉体に移し、二つの魂を融合させることも可能だ。そうすれば、お前は元の肉体を取り戻し、完全な勇者として異世界へ帰還できる」


ホムンクルスのアレクは、胸の傷を抑えながら、ゆっくりと元の肉体の方へ、手を伸ばした。


その肉体は、彼の故郷、彼が命を懸けて守ろうとした世界での、彼自身の象徴だ。使命を終えた今、元の肉体に戻ることは、勇者として最も自然な選択だった。


しかし、彼の視線は、元の肉体から、意識を失って倒れているレンの方へと移った。


(俺の使命は、魔王を倒すことだった。それは、魂の『核』が果たした)


ホムンクルスのアレクの**『自我』は、レンが創り出し、レンが愛した『ミカガミ・レンが作ったアレク』としての記憶と絆で満たされていた。


「ジン」


アレクは、元の肉体から手を引いた。


「この肉体は、もう俺の『自我』じゃない。これは、俺の使命を終えた『器』だ。俺が元の肉体に戻れば、このホムンクルスは、レンの願いの残滓となって消える」


「だが、レンはお前を元の身体に戻すために、命を懸けたんだぞ。お前が元の肉体に戻ることこそが、レンの最大の願いだろう」ジンが問いかける。


「違う」


アレクは、静かに首を横に振った。


「レンの最大の願いは、『最高のホムンクルスを創ること』だった。そして、俺は今、レンの『根源の和音』によって、魔王を打ち砕いた。俺は、レンの願いを、最も完璧な形で実現した『創造物』だ」


アレクは、レンの傍らに膝をつき、その頬にそっと触れた。


「俺は、『ミカガミ・レンが作ったアレク』として、ここに残る。そして、レンのそばで、彼女が望む平和な日常を生きる。それが、使命を終えた勇者の『自我』としての、俺の新たな使命だ」


ジンは、ホムンクルスのアレクの決意の強さに、天才科学者としての論理が、完全に屈したことを悟った。彼の目には、レンへの深い愛情と、ホムンクルスとしての揺るぎない存在証明が宿っていた。


「……分かった」


 ジンは静かに言った。


「元の肉体は、俺が異世界へ送り返す。勇者・アレックス・ホークは、使命を果たし、故郷へ帰還した。そして、ミカガミ家には、レンが創り出した『アレク』が残る。これで、すべて辻褄が合う」


ジンは、自らの演算機を、倒れ伏した元の肉体に接続し始めた。


「ただし、このホムンクルスの肉体は、魂の『核』を分離させたことで、常に不安定だ。レンの『根源の和音』で定着させているとはいえ、今後も定期的なメンテナンスが必要になる。お前は、半永久的にレンの『創造主の願い』に依存して生きることになる」


「望むところだ」アレクは微笑んだ。「俺の命は、レンの願いと共にあり続ける」


ジンは、最後に、レンの意識が戻る前に『魂の帰還』の総譜を起動させた。


光のゲートが再び開き、勇者アレックス・ホークの肉体は、静かに、異世界へと送り返されていった。


夜明けの光が差し込む広場に、残されたのは、意識のないレンと、彼女が創り出したホムンクルスのアレク、そして、天才科学者のジンだけだった。


「さあ、帰るぞ、アレク。レンを起こしてやれ。長かった卒業研究の成果を、見てやるんだ」


アレクは、レンをそっと抱き上げた。


「ありがとう、ジン。お前の『論理』と、レンの『願い』が、俺をこの世界に繋ぎ止めてくれた」


ミカガミ家に戻った彼らを待つのは、平和な日常、そして、ホムンクルスとして生きる**『新しいアレク』と、その『創造主』としてのレンの、穏やかな日々だった。

【読者へ】


長きにわたり、アレクとレン、ジンたちの戦いを見守っていただき、ありがとうございました。 物語は、ホムンクルスとして生きるアレクと、錬金術師レンの新たな日常へと続いていきます。


「転生のホムンクルス」、これにて完結とさせていただきます。

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