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転生のホムンクルス-最強勇者は魔法が存在する現代日本に転生しました-  作者: エア


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第49話『決戦・ヴァイスとの激突』

 祭囃子の音色が響き渡る広場。

 色とりどりの提灯が揺れ、太鼓の連打が夜空に轟く――はずだった。


 しかし今、そこに鳴り響くのは恐怖と悲鳴だった。


 櫓の上に立つ黒刃のヴァイス。

 月光を浴びる銀髪、無機質に光る赤い瞳、そして漆黒の鎧。

 その全てが「人」ではなく「呪具に操られた刃」であることを告げていた。


「命令。対象――アレックス・ホーク。切断」


 抑揚のない声が夜気を震わせ、群衆の背筋を凍らせる。

 だが人々の多くは“正体”を見ていない。彼らにはただ、櫓の上に黒い影が立ち尽くしているようにしか映らないのだ。

 見えているのは、異能を持つ者、そして呪具に触れた者だけ。


 アレクは杖を構え、群衆を背に一歩踏み出す。

 「狙いは俺だろ? だったら正面から来いよ!」


 勇者の魂を宿すホムンクルス。

 小さな身体に、異世界で幾度も死線を越えた記憶が燃えていた。



 ヴァイスが飛んだ。

 風を裂くような音が響き、刃が一瞬にしてアレクの頬を掠めた。

 熱い血がにじむ。


(……速ぇ! けど――追える!)


 アレクは即座に体を沈め、杖の石突きを打ち上げた。

 ガァン! 金属と金属が衝突し、櫓の柱が揺れる。

 観客席から悲鳴が上がった。


 「アレク君っ!」

 レンが鈴を握りしめ、必死に立ち上がる。

 澄んだ音色が鳴り、広場を包み込む不浄の霧を少しずつ削り取っていく。


 ジンは冷静に結界を広げながら妹に声を飛ばす。

 「動揺するな! 音を絶やせば一気に呑み込まれる!」

 「わ、わかってる!」

 レンの声は震えていたが、鈴を振る手は止まらなかった。



 一方、ミユは記録帳を開き、札の反応を読み取っていた。

 「……第三の札がまだ残ってる! ここだけじゃない、街全体から呪力が流れ込んでる!」

 「特定しろ!」ジンの眼鏡の奥が光る。「アレクが時間を稼いでいる間に、根を断つ!」


 ミユは唇を噛みながらページに走り書きを続ける。

 恐怖で足は震えていた。だが、アレクの背中を思い出すと、逃げ出すわけにはいかなかった。



 その頃。

 倉庫街から広場へ向かう路地で、カズマとユウタは仮面兵の群れに行く手を阻まれていた。


 「チッ、数が多すぎだろ!」

 カズマは木刀を振り回し、迫る人形の頭を次々に叩き割る。

 しかし仮面の奥から赤黒い光が溢れ、壊したはずの影が再び立ち上がる。


 ユウタは冷静に札を剥ぎ取りながら言った。

 「頭を潰すだけじゃ駄目だ。首の後ろの札を抜け!」

 「わかってる! でも動きが速ぇ!」


 カズマが叫ぶと同時に、仮面兵の一体が異常な速度で踏み込んできた。

 赤い光が仮面から漏れ、動きはまるで人間のようだ。


 「……試作型か」ユウタが低く呟く。

 「やるしかねぇだろ!」カズマが吠え、木刀を思い切り振り抜いた。


 バキィッ!

 札が剥がれ、仮面兵は崩れ落ちる。


 二人は肩で息をしながら視線を交わす。

 「急ぐぞ。アレクが一人でヴァイスを相手にしてる!」

 「言われなくても!」

 二人は駆け出し、夜の広場へ向かった。



 櫓の上。

 アレクとヴァイスの攻防はさらに激しさを増していた。


 ヴァイスの剣は嵐のように振り下ろされる。

 斬撃の余波だけで屋台の幌が裂け、石畳に深い溝が刻まれた。


 アレクは必死に跳び、転がり、杖を叩きつける。

 しかしヴァイスは一切の感情を見せず、機械のように攻撃を繰り返す。


 (くそっ……当たっても響いてねぇ! でも絶対に倒れる相手じゃねぇ!)


 その時、鎧の紋様が赤く光った。

 ――ユウタの言葉を思い出す。

 (攻撃の直前、一瞬だけ呼吸する……!)


 アレクは体を沈め、ぎりぎりで斬撃を躱した。

 刃が櫓の柱を斬り裂き、木片が飛び散る。

 「うおおおおっ!」

 渾身の一撃を胸に叩き込む。

 ヴァイスはわずかに揺らいだ――しかし、すぐに体勢を立て直す。


 「対象の抵抗――確認。排除続行」


 感情の欠片もない声が、アレクの鼓膜を打つ。



 その時。

 遠くから、レンの鈴の音が響いた。


 ちりん、と澄んだ音色。

 アレクの胸に灯がともる。


 (そうだ……俺は一人じゃねぇ。レンがいる、ミユがいる、カズマもユウタも、そしてジンも!)


 アレクは血まみれの顔で笑った。

 「ヴァイス! 俺は負けねぇ! 仲間は絶対に渡さねぇ!」


 勇者の魂が叫びと共に燃え上がる。

 赤い瞳がぎらりと輝き、ホムンクルスの身体を超えて力が滲み出す。


 ヴァイスが再び刃を振り下ろす。

 アレクは渾身の力で杖を振り上げた。


 ――ガァン!

 火花が散り、衝撃波が広場を揺らす。


 押し返す。

 小さな体で、大人の騎士を押し返す。

 不可能を可能にする――それが勇者アレックス・ホークだった。



 「アレク!」

 カズマとユウタが広場に飛び込んできた。

 「遅れて悪い!」

 「ここは俺たちに任せろ!」


 二人は影の群れを切り裂き、ヴァイスの足場を制圧していく。

 仲間が加わったことで、広場の空気が一変した。


 「アレク! ヴァイスを仕留めろ! お前にしかできない!」

 「任せろ!」


 アレクは跳んだ。

 杖を高く掲げ、燃える瞳でヴァイスを見据える。


 「これで……終わりだぁぁぁっ!!」


 だがその瞬間。

 ヴァイスの体が影に溶けるように薄れた。


 「任務――中断」

 冷たい声を残し、姿が霧散する。



 静まり返る広場。

 残されたのは崩れた櫓と、倒れ込むアレクだった。


 「アレク君!」レンが駆け寄り、抱きとめる。

 「大丈夫……?」ミユも涙ぐんで覗き込む。


 「へっ……擦り傷だ。まだまだやれるさ」

 アレクは血まみれの笑みを浮かべた。


 だがその瞳には、悔しさと決意が宿っていた。

 「必ず倒す。ヴァイスも……あの呪具商人も!」


 夜空に花火が打ち上がる。

 鮮烈な光が広場を染め上げ、戦いの幕間を照らした。


 ――だが戦いは、これからが本番だった。

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