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転生のホムンクルス-最強勇者は魔法が存在する現代日本に転生しました-  作者: エア


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第48話『夜が落ちた』

 夜が落ちた。

 昼間の喧噪はそのまま熱を増し、広場はひしめき合う人の波で埋め尽くされていた。

 屋台の灯りは赤や橙に揺れ、焼きそばのソース、綿飴の甘い匂い、香ばしい串焼きの匂いが空気を満たしている。子どもたちが手に花火を持ち、打ち上げ前の高揚感に胸を弾ませていた。


 だが、アレクたちには――その賑わいの下に、かすかな「異音」が混ざり込んでいるのがわかった。


 レンが鈴を握り、胸に押し当てる。

 「……揺れてる。橋が、鳴り方を変えてる」

 ミユは記録帳をめくり、震える指で結び目の位置を確かめた。

 「第二節と第三節が同時に……! これ、狙って揺らされてる」

 ユウタの表情は冷ややかだったが、声には緊張が滲んでいた。

 「敵は三点同時の切断を仕掛けてきている。――ヴァイスが動いている」


 その名を出した瞬間、アレクの胸の奥に熱が走った。

 (来たな……。今度こそ真正面から)

 小さな拳を握りしめ、群衆の間を縫うように前に進む。



 駅前広場の櫓の上。

 太鼓の連打が響き渡り、祭りの主囃子が始まる直前だった。

 その太鼓の響きに混じって、金属が擦れるような嫌な音が忍び込む。

 ――橋の揺れが、そこに集まっていた。


 「アレク君!」

 レンの声が震える。

 見上げた櫓の上、そこに銀色の光が走った。

 群衆の誰もが気づかぬ速さで、漆黒の鎧を纏った影――黒刃のヴァイスが、太鼓の横に立っていた。


 赤く光る瞳。抜きかけの刃。

 それだけで、広場全体の空気が凍りついたように感じられる。


 「……やっぱりお前か」

 アレクは唇の端を上げ、杖を強く握った。

 「舞台は整った。――ここで決着をつけようぜ!」


 ヴァイスは表情を持たない。だが、ほんの僅かに首を傾けた。

 「命令。対象――アレックス・ホーク、切断」

 その声は冷たく、機械のようだった。



 同時に、別の路地でも異変が起きていた。

 カズマとユウタが担当していた倉庫街方面。

 突如、壁という壁に黒い紙が貼り付けられ、赤い紋様が脈打ち始める。


 「うおっ、こりゃ派手だな!」

 カズマが木刀を肩に構え、駆け出した。

 ユウタが冷静に札を剥がしながら叫ぶ。

 「時間稼ぎだ! 本命は広場――アレクたちだ!」


 二人は札を剥ぎ取りながら、急ぎ広場へ向かった。



 神社の境内では、レンとミユが必死に橋を支えていた。

 レンが鈴を振るたび、仮面を被った影が次々と溶け落ちて消えていく。

 だが――影は際限なく湧き出す。


 「ミユちゃん、耐えて!」

 「わかってる……! でも、これじゃキリがない!」


 その時、ジンが合図を送りながら境内へ駆け込んだ。

 眼鏡の奥の瞳が冷たく光り、鏡の板を振りかざす。

 「ここは俺が抑える。レン、橋を鳴らし続けろ!」

 「でもお兄ちゃん――」

 「今は問答無用だ!」


 ジンの板が一閃し、仮面の影がまとめて弾かれた。



 そして広場。

 アレクは人の波の中で小さな体を前へ押し出した。

 「レンの音がある。ジンの鏡がある。カズマとユウタもすぐ来る。……俺は俺でやるだけだ!」


 ヴァイスが静かに刃を抜いた。

 銀色の曲線が夜の灯りを反射し、広場の太鼓の音に重なる。


 アレクの赤い瞳がぎらりと光った。

 小さな身体に宿る異世界の勇者の魂――。

 その力を、今こそ振るう時だった。


 「さあ――本気で来い!」


 刹那、広場に響いたのは、太鼓の重低音か、それとも刃の交錯する金属音か。

 誰にもわからなかった。



 祭りは、ついに「決戦の舞台」として幕を開けた。

 人々の笑い声と、夜空の下での激しい戦いが、奇妙に重なり合っていく――。

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