第39話『一騎打ち』
夜の路地裏に、冷たい風が吹き抜けた。
アレクたちは肩で息をしながらも立ち上がり、目の前の二人を凝視する。
一方に立つのは、ミカガミ・ジン。
静かな眼差しと、鍛え上げられた無駄のない構え。
そして対するは――黒刃のヴァイス。
漆黒の鎧に包まれ、感情の欠片も見せぬ銀髪の剣士。
「……任務更新。新たな排除対象――ミカガミ・ジン」
無機質な声が響く。
ジンは眼鏡の奥の瞳を細め、低く答える。
「妹を泣かせた報いだ。……覚悟してもらう」
次の瞬間、二人の姿が掻き消えた。
ギィン――ッ!
夜の静寂を切り裂く金属音。
ジンの刀とヴァイスの黒刃が交差し、激しい火花を散らした。
アレクは目で追うことさえ困難だった。
「は、速ぇ……!」
カズマが息を呑む。
ユウタは冷静に解析する。
「次元が違う……彼らは一手で致命を取れる領域にいる」
レンは唇を噛み、震える声で呟いた。
「お兄ちゃん……」
ヴァイスの刃が闇を裂き、ジンの頬をかすめた。
わずかな血が飛ぶ。
だがジンの目は微動だにしない。
「……無駄がない。まるで機械のようだ」
ジンは低く分析する。
「だが機械には、必ず綻びがある」
ヴァイスは感情なく告げる。
「評価。危険度S。――排除を優先」
黒刃が振り下ろされ、地面が抉れる。
破片が飛び散り、アレクたちは思わず身をかがめた。
アレクは叫びそうになるのを必死に堪えた。
(クソッ……助けに入りてぇ! でも俺じゃ足手まといになる!)
ミユが拳を握りしめる。
「……信じよう。今は、ジンさんを」
レンも涙を滲ませながら頷いた。
「お兄ちゃん……負けないで」
ジンは一歩踏み込み、刃を水平に構えた。
「水鏡流――《月影》」
月光のような軌跡が闇を裂く。
ヴァイスは瞬時に黒刃を合わせたが――
ギィィンッ!!
火花が散り、黒刃に亀裂が走った。
ヴァイスの無機質な瞳が初めて揺らぐ。
「……想定外」
ジンの声が低く響く。
「ここで終われ」
次の瞬間、ジンの刃がヴァイスの鎧を深々と斬り裂いた。
黒い瘴気が噴き出し、ヴァイスの身体が後退する。
だが、ヴァイスは崩れ落ちることなく、冷静に後退した。
「損傷、致命的ではない。……次回に持ち越す」
赤黒い札が宙に舞い、ヴァイスの身体を覆う。
そのまま影に溶けるように姿を消した。
路地に残ったのは、荒い息を吐くジンの背中だけだった。
「……お、お兄ちゃん!」
レンが駆け寄り、ジンの袖を掴む。
ジンは小さく頷いた。
「大丈夫だ……かすり傷程度だ」
アレクは唇を噛みながらも、真っ直ぐにジンの背中を見つめた。
「……すげぇな、ジン。やっぱりあんた、本物の剣士だ」
ジンは振り返らずに答える。
「忘れるな。あいつはまだ生きている。……次は、全員で生き残れ」
その言葉は重く、しかし確かな希望を残した。
ジンの本職は、錬金術師ですが、魔法や刀も扱えます。まさに万能型!




