表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生のホムンクルス-最強勇者は魔法が存在する現代日本に転生しました-  作者: エア


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/89

第33話『勇者と黒刃の死闘』

 その日の夕方。

 水鏡屋の居間では、アレクとカズマが宿題のプリントに頭を抱え、ユウタが冷静に二人へ解説をしていた。


 「お前、掛け算の順番逆だろ!」

 「ぐぬぬ……数字のルールなんざ勇者時代には無かった!」

 「アホか、戦術でも順序を間違えたら全滅だぞ」

 「ぐっ……!」


 ドタバタする三人を見て、レンは小さく笑った。

 けれど、ふと時計を見て立ち上がる。


 「私、ちょっと出てくるね」

 「どこ行くんだ?」とアレクが顔を上げる。


 「工房の在庫、確認したら薬草が切れてたの。明日の調合に必要だから、商店街で買ってくる」


 「え、俺も行く!」

 「だめ。アレク君は宿題終わってないでしょ。それに、ここ最近ずっと戦って疲れてるんだから休んでて」


 その言葉に、アレクは言い返せず口をつぐんだ。

 カズマも「まぁ薬草くらいなら平気だろ」と肩をすくめ、ユウタも「早く戻れ」と短く告げる。


 レンは微笑んで頷いた。

 (みんなに心配かけたくない。せめて私くらいは、ちゃんと役に立たなきゃ)


 そう思って、彼女は一人で夜道に出たのだった。


 夜の帳が落ちた商店街は、人影もなくひっそりとしていた。

 シャッターの降りた店々の間を、冷たい風が吹き抜ける。


 その道を、一人の少女が歩いていた。

 ミカガミ・レン。彼女は買い物袋を両手に抱え、早足で水鏡屋へ戻ろうとしていた。


 ――その瞬間。

 空気が変わった。


 「……っ」

 背筋を冷たいものが這い上がる。

 袋の中の瓶がカタカタと揺れ、次の瞬間、赤黒い霧が路地から滲み出してきた。


 「排除対象――確認」


 無機質な声と共に、漆黒の鎧が闇から歩み出る。

 黒刃のヴァイス。

 冷たい銀髪が月明かりを反射し、無慈悲な刃がレンを映し出した。


「……わたしを……狙ってるの?」

 震える声。

 だが足は退かない。


「御意。お前は創造主。英雄の器に干渉できる唯一の要。――排除する」


 ヴァイスの刃が振り下ろされる。


「やらせるかぁぁっ!!」


 烈しい声と共に、横合いから赤い閃光が飛び込んだ。

 小さな体――アレクがレンを抱きかかえて飛び退き、刃が石畳を深々と割った。


「ったく……予想通りすぎんだよ!」

 アレクがレンの前に立ちふさがる。

「レン、下がってろ! こいつは俺が――」


「俺たちが、だ!」

 声を重ねるのはカズマだ。木剣を肩に担ぎ、笑みを浮かべて駆けつけてきた。

「英雄様一人じゃ心許ねぇだろ」


 ユウタも眼鏡を押し上げ、冷静な声で続く。

「観察は任せろ。あいつの動き、記録して解析する」


「ミユちゃんも来ちゃダメだって言ったのに!」

 レンが振り返ると、そこには駆けつけてきたミユの姿があった。

「ごめんなさい……でも、一人で家に残るなんてできなかったから!」


 アレクは短く舌打ちしながらも、力強く言った。

「もういい! 全員で守るぞ! こいつに誰一人渡さねぇ!」


 ヴァイスの瞳が赤く光る。

「……ならば全員、排除対象に追加する」


 刃が振り下ろされ、火花が散った。

 アレクの杖が受け止め、カズマの木剣が横から叩きつけ、ユウタの魔法陣が足元に展開する。


「っ……重い!」

 アレクの腕が軋む。

「だが押し返すっ!」


「アレク君、左上!」

 ミユの声が飛ぶ。

「助かる!」


 赤い瞳が閃き、渾身の蹴りがヴァイスの肩を捉えた。

 だがヴァイスは無表情のまま、煙のように後退する。


「……なるほど。これが“チーム”か」

 冷酷な声に、皮肉めいた響きが混じった。


「だが――脆い」


 ヴァイスの刃が光を放ち、無数の影の分身が路地に現れる。

 子どもたちを取り囲むように、黒い手が無数に伸びる。


「くっ……!」

 レンが思わず叫んだ。

「やっぱり私のせいで……!」


 アレクは即座に振り返り、怒鳴った。

「違ぇだろ!! お前がいるから俺は戦えるんだ! お前が俺の創造主だからな!」


 その叫びに、レンの胸が熱くなる。


「だったら……私もやる! この子は私が創ったんだから!」


 レンが錬金術の陣を展開し、光を帯びた結界を広げる。

 迫る影をはじき返し、アレクたちの背を守った。


「おぉ! いいじゃねぇか、レン!」

「ふん、やっと本気を出したな!」

 カズマが笑い、

 ユウタが淡々と告げる。

「……勝機が見えた。アレク、正面を頼む」


 赤い瞳がギラリと光る。

 アレクは小さな体で前へ踏み込み、ヴァイスの刃と激突した。


 路地裏に轟音が響く。

 火花と霧が交錯し、勇者と黒刃の死闘が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ