表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生のホムンクルス-最強勇者は魔法が存在する現代日本に転生しました-  作者: エア


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/89

第15話『広がる不安』

 数日後。

 小学校の教室は、普段より落ち着かないざわめきに包まれていた。


「なぁ聞いたか? この前のカードの件……」

「うん、またどこかで見つかったって……」

「持ってたやつが、行方不明になったらしいぞ!」


 噂は瞬く間に広がり、子供たちの顔から笑顔が消えていた。

 机の間を飛び交うのは、恐怖と好奇心が入り混じった声。まるで怪談話を囁き合うように、クラスの空気は不穏な重さを帯びていく。


 アレクは机に座りながら、眉をひそめた。

(チッ……やっぱり呪具は広がってやがる。あの商人、ただの気まぐれじゃねぇな。計画的にばらまいてやがる)


「アレク君……」

 隣の席で、ミユが心配そうに声をかけてきた。

「また事件になったら……どうするの?」


「決まってんだろ」

 アレクは小声で返す。

「俺が止める」


 ミユは俯き、ノートの端を指でなぞった。

「……危ないよ。前も、すごく無理してた」


「へっ、俺は英雄だぞ? これくらい――」

 強がって笑った瞬間、机の下でミユの手が彼の袖をぎゅっと掴んだ。


「英雄だからって、一人で抱え込まなくてもいいよ」


 アレクは一瞬言葉を失った。

 顔を赤くして、そっぽを向く。

「……ありがとな。でも、俺はやっぱり前に立たなきゃ気がすまねぇんだ」


 休み時間。

 クラスの男子たちが集まって騒いでいた。


「おいアレク! お前、あのカード事件の時、何か知ってるだろ?」

「そうそう、なんであんな化け物すぐ倒せたんだ?」


 アレクは肩をすくめて誤魔化した。

「たまたまだ。俺、運がいいんだよ」


 だが男子の一人が、不安げに呟いた。

「……でもさ、もしかしてアレクが呼んでるんじゃないのか? あの怪物」


 教室の空気が凍る。


「なっ……!」

 アレクが睨むと、男子は慌てて目を逸らした。

「べ、別に責めてるわけじゃ……でも、なんか怖くて」


 ざわめきが広がる。

「そういえば、アレク君の周りでばっかり……」

「関係あるんじゃ……?」


 不安は伝染する。子どもたちの目が、無意識にアレクへと向いた。


「やめろよ!」

 机を蹴って立ち上がったのはカズマだった。


「アレクがいなきゃ、俺らはとっくにやられてたんだぞ!」

 彼の声は怒りで震え、拳は固く握られている。


「そ、そうだよ!」

 ユウタも勇気を振り絞るように叫んだ。

「アレク君が戦ってくれたから、僕たち助かったんだ……あの時だって、一緒に……!」


 二人の声は拙くも真剣で、教室の空気に割り込むように響いた。


 だが、なおも誰かが呟く。

「……でも、やっぱり普通じゃないよ」

「英雄とか言ってるし……」


 その時。


 「やめて!」

 ミユが立ち上がり、机を叩いた。

「アレク君は私たちを守ってくれたんだよ! 疑うなんて間違ってる!」


 教室は静まり返った。

 誰もそれ以上言えなくなり、アレクは無言で窓の外を見つめた。


(……結局こうなるのか。俺は異物。世界に馴染むなんて、無理なのかもしれねぇ)


 その横顔を見て、カズマが歯ぎしりをした。

「チッ……バカどもめ。俺は信じるからな、アレク」

 そしてユウタは震えながらも、小さな声で囁いた。

「僕も……友達だから」


 放課後。


 帰り道を歩くアレクの背に、ミユの声が届いた。

「……ごめん。私、何もできなかった」


「何言ってんだ。お前が庇ってくれただろ?」

 アレクは振り返り、笑ってみせる。

「正直……ちょっと救われた」


 ミユの頬が赤く染まる。

「じゃあ……よかった」


 その横で、カズマが拳を突き出した。

「お前は一人じゃねぇ。俺もユウタもいる。次に何か出ても、今度は一緒にぶっ飛ばしてやろうぜ!」


 ユウタもこくりと頷く。

「うん……僕、逃げないって決めたから」


 アレクは目を細め、拳を突き出してカズマの拳にぶつけた。

「へっ、頼もしい仲間が増えたもんだな」


 三人の拳が重なり、ミユが思わず笑みをこぼす。

 レンが見たら呆れるかもしれない。でも、確かにここには新しい絆があった。


 だが、その絆を遠くから見下ろす者がいた。


 通りの影。

 黒いローブの商人が人混みに紛れ、冷たい笑みを浮かべている。


「……よい。恐怖と疑念は、やがて芽吹く。英雄気取りの小僧も、周囲の視線に耐えられるかな?」


 不気味な低声が風に紛れ、誰にも届かない。

 呪具商人は、確かに次の一手を準備していた。


 そしてその夜。

 学校に置き去りにされた机の影で、ひとりの子供がこっそり取り出したカードが、赤黒く光を帯び始めるのだった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
一話ごとに引き込まれて続きが気になります。アレクくんかっこいいですね。 呪具商人の次の一手が気になります。 カード?どうなっちゃうの?って思いながら続きをお待ちしています。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ