エッセイ・短編 命・言葉・愛・感謝・希望等をテーマにした作品です
感謝という名の、静かな光
気づかぬうちに受け取っていたものがある。
誰かのまなざし、風のぬくもり、
名前も知らない人の優しさ。
それらは決して、声高に与えられるものではない。
ただそこに在り、
私がそれを「受け取れる」心を持っていた、
その奇跡がすでに、感謝という名の光を生んでいる。
感謝は、見返りを求めない。
差し出された手を握り返さなくても、
その手にふと温もりを感じたなら、
もうそれで、十分なのだ。
感謝は取引ではない。
それは、心が震えたという事実、
たしかに誰かとつながったという記憶のこと。
花が咲くのを見て、美しいと思えた日。
ひとりの夜に差し出された、あたたかな飲み物の湯気。
言葉では届かない部分で、
私たちは日々、小さな愛を受け取っている。
そのすべてに名前はなく、
誰のためのものでもないけれど、
私の中に「ありがとう」が芽生えたなら、
そのとき、それは“わたしだけの贈り物”になる。
感謝とは、誰かのやさしさを受け取れる「心のやわらかさ」。
そしてまた、自分にもそんな心が残っていたと知ること。
どんなに疲れていても、すさんでいても、
まだ、世界を美しいと思える目が、自分にあったこと。
感謝は祈りに似ている。
対象がなくてもいい。
見返りも、正しさもいらない。
ただ、手を合わせたくなる。
ありがとう、と言いたくなる。
それだけで、じゅうぶんだ。
感謝とは、自分ひとりで生きてきたわけじゃないと、
思い出させてくれる、
心の中の、静かでやさしい証明だと思う。
拙文、読んで下さりありがとうございます。