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いつも立っている人

作者: 案乃 うん

 これは私の友人から聞いた話です。


 私たちの住む地域にはほとんど誰も使わない公園があるのですが、そこにはいつも立っている人がいるそうなんです。


 その公園は、長い間手入れがされていないため、雑草が腰の高さまで生えていたり、植えられている木々も葉をつける力を失って、いつ通る時も枯れていたりと、あまり立ち入りたくない雰囲気を漂わせているのですが、噂の人は、敷地内にある男子トイレの中にいるそうなんです。


 その人は、洗面台の鏡の前に、鏡に対して背を向けて立っていて、キャッチコピー通り、いつ見てもそこに立っているようです。


 私の友人もはじめは、彼の友達からその話を聞いたようで、私に面白がりながら教えてくれたのですが、異変は、その日から約一ヶ月後に起き始めました。


 その友達と連絡が取れなくなったようなのです。


 それからしばらくして私の友人は、その子から最後に送られてきたメッセージが例の場所に行くという内容だったため、そこに確認しに行くと言い出しました。


 次の日彼から、例の場所に友達がいて、「噂の人を見に何度か来ていたら、ある日からいなくなったので、戻って来るのを待っている」と言われたことを教えてくれました。


 その友達は何かに取り憑かれているような雰囲気もなく、普通に会話ができたので、特に問題はないだろうと、その時はそれで話題が終わりました。


 そして元の噂話も忘れそうになった頃、友人がまたあの場所に行ったと話し出しました。


 相変わらず彼の友達はそこにいたようで、楽しく話して帰ってきたそうです。


 しかしその後、異変は彼の身にも起こり始めました。


 あの場所に行く頻度が縮まり始めたのです。


 最初は三ヶ月ぐらい間が空いていたのに、二ヶ月、一ヶ月、半月と、どんどん短くなっていきました。


 そんなある日、彼がそこに行くのも慣れ始めた頃になって、彼の友達がいなくなったと、彼から告げられました。


 私は、「単純に飽きただけなのでは」と言ったのですが、彼はそれも聞かず、それからより頻繁にそこに通うようになり、最終的には毎日訪れるようになりました。


 毎日毎日、「あの場所に友達がいない」と聞かされて、嫌な予感が高まっていった頃、とうとう彼までも連絡がつかなくなってしまいました。


 おそらく彼は、いつもあの場所に立っているのだと思います。なぜなら、最後に話した内容も、そこに行くという話だったのですから。


 私は後悔しました。何度も止めるチャンスはあったのではないかと。


 そして、それからいつまで経ってもこの後悔が消えることはなく、今もどんどん大きくなっています。


 私は、あの場所へ行った方がいいのでしょうか?


 


 


 

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