Ep.0 異世界で二人暮し??
カタカタカタ……
ブルーライトの光で照らされた集合住宅の一室。
そんな薄暗い部屋から微かに聞こえるキーボードを叩く音。
「凛刳さん明日って何するんだっけ?」
「莉緒、自分の予定も覚えてないの…?」
「いいじゃん、そのくらい教えてくれたって。」
「教えてもいいけど…それじゃ莉緒の為にならないでしょ?」
「自分の記憶が間違えてないかと思って聞いたのに。」
「それなら先に自分で覚えてる予定を言ってから言ってね。」
「むぅ…凛刳さんのいじわる…。」
お嬢こと僕、椎名莉緒は執事である紅凛刳と共にこの部屋で一緒に暮らしている。
「この調子だとまだ本家に戻れなそうだね笑」
「うるさいなぁ、余計なお世話だよ。」
さて、事の始まりは…
『莉緒、お前は余りにも世間知らず過ぎる、少し人間界に行って勉強してきなさい。』
ある日、部屋でゴロゴロしているとお父様が突然やって来て突拍子もないことを言い出した。
『………え?』
あまりにも突飛な話に僕は一瞬呆けてしまった。
『住むとこと最低限の資金はこちらで用意しておいたから、いってきなさい』
そんな僕を横目にお父様は更なる言葉の鉄槌を浴びせた。
『え。いや、え?突然何いっ―』
『先程も言ったがお前は世間を知らなさ過ぎる。今後椎名財閥を一人娘のお前に継がせるには些か不安が多い。』
『そーゆーんは凛刳さんに任せたらいいじゃん…』
『そういう考えが甘いって言ってるんだ。莉緒、お前は人の上に立つってことが分かっているのか?私がまだ若い頃は―。』
ま〜た始まったよ、お父さんの昔話。長いし難しい言い方するし面倒臭いんだよな。
早く終わんないかなぁ…
『失礼します。社長、先程お申し付け頂いた準備が整いました。』
あ、凛刳さんが来た。これで話終わるかなぁ。
『―だとして…おぉ、べにくんか。分かった、すぐに向かわせよう。』
『え?ホントに行くの?』
『はぁ、莉緒。お前は何を聞いていたんだ?』
『いや、だってホントに行くなんて思わないし…』
『社長、話が見えないのですが…』
『凛刳さん聞いてよ。お父様が家を出ろって言ってきたんだよ!』
『えっ……?と、申し訳ございません。社長、詳しくお話を伺ってもよろしいでしょうか?』
『あぁ、莉緒が世間知らず過ぎるから人間界で勉強させようと思ってな。』
『社長、申し上げにくいのですがお嬢には少し無理があるかと思われるのですが。』
『べにくん、時に獅子は子供を谷に落とすんだよ。』
『…確かにそのような話はありますが――。』
『ちょっと勝手に話を進めないで!僕は納得してない!!』
『決定事項だ。さっさと人間界に行って色々経験を積んできなさい。』
お父様がそう告げると、足元が眩く光出した。
『強制送還しないで!お父様のバカーー!』
そう僕は叫んだが答えはかえってこなかった。