ねこねこ子猫
ぼくはまだまだ、こねこ。
おかあさんにすぐあまえちゃう。おにいちゃんやおねえちゃんはもうひとりだちしたってきいたけど。ぼくはちっこいまんまだ。いつまでたっても、ひとりだちできないでいる。
きょうもおかあさんにあまえた。けど、おかあさんはおこる。
「いいかげんにしなさい、スノウ。おまえはもうなんにもできないこねこではないでしょう」
「……ごめんなさい、おかあさん」
「わかったならいいわ、スノウ。これから、みずのみばのばしょやかりのしかたをおしえてあげる。ついてきなさい」
ぼくもとい、スノウはおかあさんについていく。みずのみばにむかったのだった。
おかあさんはみずのみばにいくと、じぶんでみずをのむようにいった。みようみまねでのむ。ぴちゃぴちゃとベロでのんだが。おもうようにいかない。みかねて、おかあさんがコツをおしえてくれる。
「スノウ、したでみずをすくうようにしてのむの。わかるかしら?」
「うーむ、わかんない」
「もういっかい、おかあさんがやるわ。みていなさい」
おかあさんがいったようにやってくれた。ぼくはまた、まねをする。けど、ちょっとしかのめなかった。みずがベロからぼとぼとおちるからだ。しかたないから、なんどもれんしゅうする。やっと、まずまずはできるようになった。
「……やれやれ、さきがおもいやられるわ」
「あしたはかりのしかただね」
「そうね、きょうはこれくらいにして。かえりましょう」
スノウはおかあさんといっしょにおうちであるこやにかえった。いっしょにごはんをわけあってたべる。そうしてからねむりについた。
よくじつから、かりのしかたをおそわる。おかあさんはためいきをつきながらもしんぼうづよく、スノウにおしえた。いちにちめはちいさなコネズミで。ふつかめはスズメをつかまえた。ちょっとずつ、スノウはかりがじょうたつしていく。
「あれから、はんとしがすぎたし。スノウ、おまえもいちにんまえのねこよ」
「おかあさん、ぼくもひとりだちしないとだめかな?」
「もう、そのときはきているの。あしたにはおまえもこのこやをでなさい」
スノウはいきなりいわれてたちつくした。おかあさんはかなしそうにわらう。
「スノウ、ひとりだちするのはむかしからのきまりなの。おまえもそれはまもるべきよ」
「……わかった、おかあさん。ぼく、あしたにはこやをでるよ」
「げんきでね、スノウ。おわかれはあしたはいわないから。いまのうちにいっておくわ。さようなら」
「うん、さようなら。おかあさん。いままでありがとう」
スノウはなきそうになるのをがまんしながら、いった。もう、あまったれのこねこはいない。そこにはいちにんまえのりっぱなねこがいた。おかあさんはさみしそうにわらいながら、こやのおくにいく。スノウははなれたところでねむりについた。
よくじつのあけがた、スノウはこやのどあをあける。おかあさんはあえてみおくらない。おわかれはさくやにすませてある。スノウはまだ、しらみはじめたそらをみあげながらそとにでた。
「いこう」
ひとりでつぶやきながら、スノウはどあをしめる。こやにせなかをむけてあるきだす。さくさくとつちをふみしめながら、もりのおくをめざした。スノウはまっすぐにまえをむいたのだった。
――おわり――