三十二話 ゲームスタート
「こんにちはー! 僕はアドン。みんなよろしくねー!」
子供の声が聞こえる。
人々を襲うのは強烈な頭痛。頭の中に直接声が響いている。
「僕ね、遊んでもらいたいんだ。みんなすぐに壊れるから、いいなーって人がいないんだよ」
うずくまり、倒れていく。
「だから、壊れないでね?」
アドンの言葉が引き金となり、復興していないハイネストを燃え盛る炎が襲う。
一人の子供、否――
人を超えた超常存在によって、人々は再び地獄を見ることになる。
「またか……」
ハイネストに戻った俺は、前回と同じ光景にそんな言葉が出てしまった。
「ヨイヤミ! 忘れ物……どうなってるんだこれ」
俺を追いかけてきた柊人。驚きが隠せないみたいだ。
「ハイネストが滅茶苦茶になってる」
「…………振り出しだよ」
俺の言葉に柊人が顔をしかめる。
「どういう意味だ」
「悪魔に襲われた。冒険者がたくさん死んだ。少し立ち直ったと思ったらこれだ」
すると、俺達の目の前に男の子が現れた。
「お兄さん達、あーそぼっ」
男の子に話しかけようとしたその時、柊人が俺の体を引っ張る。
大木に大穴が開いて腐り落ちた。
「っ、嘘だろ」
「わあっ、すごいすごい」
手を叩いて喜ぶ男の子。
俺は名前を尋ねる。
「名前は? ただの子供じゃないよね」
「アドン」
柊人が俺の目の前に立つ。
「魔力だろ、それ。遊びで使うなら今すぐやめろ」
柊人の怒りの声にも耳を貸さず、アドンは逃げる人々を標的にする。
「あの人よく燃えそう。でも、あっちの人もいいかなー」
品定めをするように人を選ぶアドン。
俺はアドンに向かって水をかける。
「いい加減にしろよ」
「…………ようやく壊れそうにない人が出てきたかも」
柊人を暴風で吹き飛ばし、アドンは俺と対峙する。
立ち上がって剣を持つ。
アドンは地面を漁って木の棒を拾うと、両手に持って構える。
「…………」
「ゲームスタート」




