二十七話 忍ばない忍びは忍びじゃない
「探せ! 同胞の仇を討つのだ!」
カイルズは戦士達があっけなく殺されたことに憤りを隠せなかった。
シェルの静止も聞かず、闇に蠢くソイツを討ち取らんと躍起になっている。
「共和国の魔人王が廃れたなどと言わせんぞ……!」
コツコツと足音を響かせ探す。
「何をしている! 見つかったの……か?」
怒りのままに振り向いたカイルズ。後ろからついてきたはずのエルフがいないことに気づく。
「なん…………だと?」
その油断が、隙が、ギアにとってはチャンスとなる。
「ぐうっ!!」
一閃。右腕を浅く斬られた。
気配を感じなかった……! どうなっている!?
カイルズの動揺はそれだけではない。研ぎ澄まされた感覚が一切通用しなかったこと。カイルズは人生で初めての苦難に当たっている。
遠くで首を折られる音が聞こえた。
静寂。この場に残る者は二人きり。
援軍の見込みもない。カイルズは広場を目指して走る。
(広い場所に出さえすれば、きっと奴も……ッ!)
カイルズは認識を甘く見ていた。
ギアはただ影に隠れる者ではないということに。
気づくのが、遅すぎた。
「…………」
広場には、ギアの姿が既にあった。
ギアは背中につけた二振りの忍者刀を鞘から抜いて逆手に持つ。
カイルズも剣を引き抜き相対する。
「…………」
「…………」
静寂が続く。
一際強い風が吹き、カイルズの視界を遮った一瞬――
決着がついた。
「お……ああ…………っ」
倒れたのはカイルズ。共和国の魔人王が敗れた瞬間だった。
「…………」
剣を戻したギアはカイルズを治療する。
壁に寝かせると、殺したエルフを広場に並べた。
駆動音を鳴らして各部の調整を行い、蒸気を外に出してオーバーヒートを防ぐ。
人の気配。
ギアは風の音に合わせるように姿を消した。
「カイルズ? カイルズ?」
シェルは不安になってカイルズを探していた。
広場に出る。並べられた戦士の死体と壁に寄りかかるカイルズの姿が映った。
「シェルか……」
カイルズの弱々しい声が聞こえ、シェルは駆け寄る。
「カイルズ! よかった……心配したんだぞ」
「敵の実力を、見誤っていた」
「お前が生きているだけでいい」
「…………そうだな」
カイルズはシェルの肩を借りて広場から家に戻る。
翌日、翌々日も警戒は続いた。だが、ギアによる戦士の襲撃は二日で幕を閉じた。




